今回の記事はスポーツ業界では定番の『アイシング』についてです!
アイシングについては有用だという発表も多いのですが、今回は近年アイシングに対して否定的な意見も増えてきているため、あえてアイシングの否定的な意見をご紹介したいと思います。
否定的な意見をあえてご紹介してアイシングの正しい使い方をご紹介していきたいと思いますので宜しくお願い致します!
もともと言われているアイシングの効果!
打撲、捻挫、肉離れなどの怪我をしたとき、体の中では内出血が起こります。アイシングを行うことによって、血管を収縮させ血液の流入量を低下させて内出血の量を減らします。その内出血のせいで怪我をしていない無事だった組織なども、出血などのせいで酸素量の低下などで損傷が広がってしまいます。(二次損傷といいます)
わかりやすくいうと二次損傷は水の中でおぼれてしまい窒息死をすることだと思ってください。
その他には、
・冷やすことで細胞の代謝を落として二次損傷をおさえる
・冷やすことによって痛みを麻痺させる。
などがあげられます。
これだけをみると非常に効果的だと思います。
それでは反対の意見といきましょう。
新常識!?アイシングの新事実
近年のアイシングの意見として効果を否定的な発表が相次いでおります。
その中でもっとも衝撃的だったのが1981年にRICE療法を提唱したMirkin医師が「RICE処置は回復を助けるのではなく、遅らせるのかもしれない。」とご自身のホームページで発表されたのです。
RICE療法は安静、アイシング、圧迫、挙上の英語の頭文字をとってRICEといいます。スポーツ医療の応急手当の一番最初にならう内容です。その内容を提唱されたご本人が否定的な意見を述べているのは非常に驚きでした。
それではアイシングはなぜよくないのかという具体的な説明をしていきたいと思います。
怪我をして回復には炎症が必要
怪我をして組織を壊れた状態になると炎症反応がおきて、損傷組織にマクロファージがその組織に駆けつけIGF-1というホルモンを送ります。
このIGF-1ホルモンが筋肉、靭帯の回復には必要ということです。(IGF-1ホルモンとはいわゆる成長ホルモンといわれるものです)
簡単に言うと、怪我をしたことにより炎症が起き、そこにパトロールをしている細胞が駆けつけ治すための命令を出していくということです。
アイシングにより炎症が押さえられるとこの反応がなくなってしまうということです。
アイシングは血流を悪くする
この項目はアイシングのメリットでもあげましたが、先ほど出てきたマクロファージというパトロールをしている細胞は血流にのってパトロールをしています。つまり、アイシングをすることによって血流を悪くすることによってマクロファージの発見を遅くして、回復を遅らせてしまうということです。
また長期間アイシングをすることによって回復を促すための物質も流れにくくなるため回復が遅くなってしまうということです。
回復のためには必ずいい血流が必用になるということです。
神経へのダメージ
アイシングは回復を阻害するだけではなく、悪化させてしまうかもしれないという発表もありました。
(J Athl Train.1992)
この発表では30分以上のアイシングによって神経へのダメージを残したケースを発表しております。
全てのケースではないにしろアイシングによって状態が悪化してしまうケースも存在するということです。
靭帯、筋肉へのダメージ
アイシングは神経だけではなく筋肉や、靭帯などの組織にもダメージにもつながることも示唆されています。
靭帯は筋細胞より血流がもともと筋細胞などより少ないとされています。
怪我をすると靭帯は水分とグリコサミノグリカンという靭帯を失うとされ、コラーゲンが少なくなり靭帯の強度が低下します。捻挫により靭帯の組織損傷が起こり、もともと血流量の少ない靭帯に長期的アイシングを行うと、血液供給が悪くなり靭帯回復に重大な遅延を発生させてしまいます。
筋肉や筋膜の回復にもマクロファージが必要で血流を悪くすることによって回復を遅らせてしまいます。
まとめ
アイシングの近年の否定的な発表をご紹介いたしましたが、基本的に否定的な意見のポイントは『長期間のアイシング』や『長時間のアイシング』です。この二つをすることにより回復がおくれてしまうことは確実なようです。しかしアイシングの確実な効果としては痛みの抑制があります。
私が実際診させて頂いたアスリートの靭帯損傷や肉離れで長期間アイシングをしたケースでは確かに回復まで時間のかかるケースは多かったような気がします。
例えば肉離れを受傷後10日以上たってもアイシングを続けていくと筋肉自体が非常に硬くなり、機能の回復までに非常にかかるケースがあります。痛みはなくなるけど機能が回復が遅れるため、無理に復帰すると肉離れを繰り返してしまう事があります。
またアイシングを続けると筋肉の柔軟性が低下するだけではなく皮膚の柔軟性も低下します。関節運動には皮膚の運動も必ず起こります。皮膚運動が低下した状態で運動をすると関節の可動域が低下して運動能力が下がります。
また靭帯損傷の場合に多いのですが、治りが遅くなる原因の一つにむくみがあります。アイシングを長期間おこなった場合はむくみが残り回復が遅れる事が多いような気がします。アイシングをおこなうよりも温めたほうがかなりむくみはなくなります。
しかし、受傷直後は短時間でも冷やしてあげた方がいいと思います。
それと練習やトレーニング直後に疲労回復のためにアイシングをしている方も多いとおもいます。
あれはアイシングではなく最近では「クーリング」ともいわれます。クーリングは効果がありますので混同されない様にしてくださいね!
今回の記事はアスリート向けの記事という事よりトレーナー向けの記事になってしまいましたが読んでいただけるとありがたいです。
コメント