前鋸筋は肩甲骨の外転に関与している筋肉です。また肩甲骨を胸郭に引きつけるので肩甲骨の安定、ならびに肩関節の安定のために非常に重要な筋肉です。
オーバーヘッドスローイング動作のスポーツ(投球、ラケットスポーツのスマッシュ、やり投げなどのスローイング動作)などのアスリートや陸上競技などの腕ふりや水泳のストローク、サーフィンのパドリングなどにも重要になります。
肩甲骨の安定化は非常に重要ですのでしっかり学習しましょう。
前鋸筋(ぜんきょきん)の解剖学的特徴
起始 | 第1~第9肋骨の側面 |
停止 | 肩甲骨肋骨面内側縁の全長 肩甲骨の上角、下角 |
神経支配 | 長胸神経(C5~C7) |
作用 | 肩甲骨の外転、上方回旋、下方回旋 |
栄養血管 | (上部)外側胸動脈、(下部)胸背動脈 |
第1肋骨と第2肋骨に起始する繊維の一部は肩甲骨上角に停止し、第2肋骨に起始する繊維の一部と第3肋骨に起始する繊維群は下角までの内側縁に停止する。
第4肋骨から第9肋骨に起始する繊維は肩甲骨下角に集中して停止します。
前鋸筋(ぜんきょきん)の筋機能の特徴
前鋸筋は肩甲骨の外転に作用する唯一の筋肉です。上角に付着する繊維群は外転とともに下方回旋に作用し、上角に付着しない繊維群は外転とともに上方回旋に作用します。
前鋸筋の機能を水平面上でみると、僧帽筋と協同して肩甲骨内縁を胸郭に引きつけ安定させます。この機能により肩関節の安定に大きく関与します。
前鋸筋は僧帽筋と協同して、肩甲骨の上方回旋に作用する重要な筋肉です。
前鋸筋の臨床
前鋸筋の臨床的一番の問題は長胸神経麻痺に伴う翼状肩甲骨である。すべての肩関節の運動の土台となる肩甲骨の安定性の破綻は肩関節の障害に重篤な障害を生じさせます。
肩関節を下垂位で後方から確認した際、肩甲骨の内側縁が胸郭から浮き上がった所見がある時は、前鋸筋の筋機能の不全を疑います。
前鋸筋の機能不全になると肩甲骨の内側縁の浮き上がりや、下角の浮き上がりが顕著に診られるようになります。アスリートの肩関節障害において肩甲骨の後傾の問題を解決できるだけで肩関節の障害が好転することは少なくありません。
四十肩や五十肩においても前鋸筋の機能不全を考えるのは非常に重要になります。
肩甲骨の後傾は前鋸筋と僧帽筋下部の機能不全を疑います。
前鋸筋は肩こりにも影響
前鋸筋が硬くなると、胸郭の動きが硬くなり肩甲骨が外転位になり円背様(猫背)の背中になってしまいます。
現代人の生活様式において前鋸筋をしっかり動かす機会は少なく非常に硬くなりやすいといえます。前鋸筋が硬くなり肩甲骨が外転位になると肩関節の動きが硬くなります。
多くの肩関節の周囲の筋肉は肩甲骨に付着するので動きの悪くなった肩甲骨とともに筋肉も固くなり肩こりの原因にもなります。
肩こりの臨床においても前鋸筋は非常に重要と考えられます。
前鋸筋のストレッチ
前鋸筋はデスクワークなどの方なども硬くなりやすく、肩こりの人にも非常に重要です。
普段あまり意識する筋肉ではないのでしっかり動かしましょう。
胸椎伸展位でしっかり体を捻るのがポイントです。
前鋸筋のトレーニング
ショルダーフロート
前鋸筋を鍛えるためのトレーニングでショルダーフロートいうトレーニングです。前鋸筋を鍛える事でオーバーヘッドスローイング動作のスポーツ(投球、ラケットスポーツのスマッシュ、やり投げなどのスローイング動作)などのアスリートや陸上競技などの腕ふりや水泳のストロークなどに大きく影響を与える事が出来ます。
前鋸筋のまとめ
前鋸筋はなかなか普段から意識の出来る筋肉ではありません。しかし、アスリートだけではなく一般の方もよく動かしたりストレッチをする事で身体には素晴らしい効果を与えてくれます。
アスリートにとってもパフォーマンスの向上にもつながる筋肉です。
よければ参考にしてください。
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