前回の記事に続いて椎間板ヘルニアについて書いてきたいと思います。前回は椎間板ヘルニアの種類の解説を行いましたが、今回は腰椎の椎間板ヘルニアの腹筋運動についてです。腰痛には腹筋運動とよく言われていますが、実際どうなのでしょう。
私は学生時代陸上競技を続ける中で、高校生の時に腰椎椎間板ヘルニアと診断されました。当時、自分なりに調べたりして腰痛には腹筋運動がイイとわかり、一生懸命やった結果終わるとよく腰が痛くなったものです。
それでもこれで治ると思い、一生懸命やったものです。しかし、今は結果から述べると腹筋運動は「基本的に」勧めません。
その説明をはじめていきます。
そもそも腹筋とは!?
腹筋といえば下の写真のようなシットアップやクランチといった寝ている状態から上半身を起こすような、いわゆる腹筋運動を思い浮かべると思います。このような運動は腰のもともと悪い人は腰椎の関節が動きが悪くなっているため逆に負担をかけてしまいます。このもともと動きが悪く、負担がかかってしまうのが短期的デメリットです。そもそも腰の悪い人がこのような腹筋をおこなうと股関節をつかって身体を動かしたり、腰椎の椎間関節が動かずに一番可動性のある下部腰椎だけで動きかえって痛くなります。
私の現役時代はきっとこのような腹筋をしていたと思います。
私は先ほど基本的には勧めませんといったのはこの腹筋運動です。この運動では主に腹部の筋肉の中で腹直筋を鍛えることになります。腹直筋とはどういった筋肉なのでしょうか?下の図を見てください。①が腹直筋です。
ネッターコンパクト解剖学アトラス
腹直筋は、下部の骨盤の恥骨部から始まり肋骨部に終わる筋肉です。筋肉は縮む作用しかありません。つまり腹直筋が腹筋運動により強くなると、立っている姿勢でも腹筋優位になります。そうなると立っている姿勢でも腹直筋が縮むということは、恥骨と肋骨の距離が短くなるということです。つまり猫背姿勢になります。
腹筋を鍛えると猫背になるから椎間板ヘルニアは悪くなる!?
がむしゃらに腹筋運動ばかり繰り返すと、腹筋ばかり硬くなり腹直筋が短縮位になりやすく猫背になりやすいです。そんな方に多いのですが、「腰痛があるから頑張って腹筋をしたら悪くなりました。」と言われます。
なぜそのようなことが起こるかというともともと腰椎は生理的前弯といってお腹側に緩やかにカーブをしています。このカーブが猫背など背中が丸くなると逆に後弯と言って背中側に丸くなります。
ネッターコンパクト解剖学アトラス
ヘルニアにオススメ!マッケンジー体操の記事で書いた腰椎ヘルニアが悪くなるのは腰椎の後弯です。後弯することにより椎間板にかかる圧力が強くなります。そのことにより椎間板より髄核が出てくる構図になります。
このサイトではよく椎間板をおまんじゅうに例えて書いております。
おまんじゅうの皮が椎間板、あんこが髄核です。前方がつぶされることによりあんこが後方に移動し皮を破らずに形が変わってしまったのが膨隆型のヘルニアで皮を破ってしまったのが突出型のヘルニアです。
つまり背中が丸くなるとヘルニアの可能性は高くなります。ヘルニアをうったえているアスリートのほとんどが腰椎の前弯がなくなりフラットバックの姿勢をしている人がおおいです。
腰椎ヘルニアの時のオススメの体操
かといって腹筋やエクササイズが悪いわけではありません。冒頭で書いたように、あくまで「基本的」に勧めていないだけでやってもらいたい腹筋もあります。
ドローイン
ドローインといってお腹の中の深い部分にある筋肉で、コルセットマッスルといわれる腹横筋を鍛える方法です。
やり方は簡単で仰向けで寝て膝を立てた状態でお腹をへこませます。
その状態で呼吸を数回繰り返します。
マッケンジーエクササイズ(マッケンジー体操)
腰椎の伸展(腰を反る)の運動性の低下は腰椎ヘルニアの症状を悪くします。そのためマッケンジー体操などを行い、伸展の可動域を拡げるのは非常に大切といえます。腰椎の伸展を出すことによって腹直筋の伸展(ストレッチ)にもなります。腰椎ヘルニアの場合は痛みのない範囲で行ってください。無理をして動かすとかえって悪くなることもありますので必ず無理をしないで行ってください。
詳しい記事はこちらをどうぞ

まとめ
今回は腰椎ヘルニア時の腹筋運動をご紹介いたしました。正しく行えば痛みを出さずにうまくトレーニングを行うと痛みも早くよくなりますし、可動性も上がります。治そうとして無理に腹筋をするとかえって残念な結果となってしまいます。正しく行いましょう。
ポイントをまとめます
- クランチやシットアップなどの身体を起こす腹筋はしない
- 腰椎の可動性、とくに伸展を拡げる
- 椎体全体を動かすイメージを持つ
- 痛みが強い場合は無理をしない
椎間板ヘルニアだと勝手に自分で判断してしまうと、違う疾患かもしれません。痛みが強い場合などは必ず専門機関に受診してください。
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