外傷性浮腫に対するハイボルテージ、微弱電流、超音波、ラジオ波、鍼刺激効果的な理由を深掘りする

こんにちは!陣内です。

捻挫や肉離れなどの急性外傷に対して、物理療法を使うことは多いと思います。「腫れを引かせるためにハイボルテージを使う」「微弱電流を流しておく」「超音波を当てる」「ラジオ波で温めて循環を良くする」。私自身、浮腫のある症例に物理療法を使います。

ただ、こうした治療を続けていると一つ疑問が出てきます。

そもそも「腫れが引く」とは、生理学的には何が起きているのでしょうか?

血管から外へ出てくる液体が減ったのか。すでに間質に存在していた液体が移動したのか。リンパ管への取り込みが増えたのか。それとも炎症反応そのものが変化したのか。あるいは、測定した場所から液体が移動して、周径だけが小さくなった可能性もあります。

臨床ではこれらを全部まとめて「腫れが引いた」と表現しますが、生理学的には同じ現象ではありません。

そこで今回は、「どの物理療法が一番浮腫に効くのか?」ではなく、浮腫が形成されてから減少していくまでのどこに、物理療法が作用している可能性があるのかを考えてみます。

目次

まず、浮腫はどうやってできるのか?

浮腫を考えるためには血管内の水分がどのように間質へ移動するのかを整理しておく必要があります。

毛細血管を流れている液体は完全に血管内へ閉じ込められているわけではありません。

微小血管壁を介して血管内と間質の間で水分移動が起こっておりここには毛細血管内の静水圧、間質の静水圧、血漿タンパク質による膠質浸透圧、間質側の膠質浸透圧などが関係しています。

ただし、現在のStarling原理ではこれだけでは十分ではありません。重要になるのがendothelial glycocalyxです。

血管内皮細胞の内腔側にはglycocalyxと呼ばれる層が存在します。現在の考え方では、単純に血管内と間質液との膠質浸透圧差を見るのではなく、glycocalyx直下のsubglycocalyx spaceとの関係が水分移動を考えるうえで重要とされています。

ここが従来のStarlingモデルと大きく違うところです。

以前は「毛細血管の動脈側で濾過された水分が、静脈側で再吸収される」という説明が一般的でした。しかし現在は、正常な定常状態では、多くの組織で毛細血管を介した持続的な再吸収が主要な回収経路になっているとは考えません。毛細血管から間質へ移動した液体やタンパク質を循環へ戻すうえではリンパ系が非常に重要になります。

この考え方に立つと、臨床でよく使う「血流を良くすれば浮腫が血管へ戻る」という説明も、少し慎重に考える必要が出てきます。


改訂Starling原理とは?

「毛細血管の動脈側で水分が出て、静脈側で水分が戻る」という説明が見直されています。
ポイントは、血管内皮の表面にあるglycocalyx(グリコカリックス)です。
血管内の水分移動は単純に「血管内 vs 間質」の静水圧・膠質浸透圧だけで決まるのではなく、内皮グリコカリックス層を挟んだ圧較差が重要だと考えられています。
その結果、正常な毛細血管では、毛細血管 → 間質へ少量の濾過→ リンパ管が回収→ 静脈系へ戻す
という流れが基本になります。
つまり、静脈側の毛細血管が常に水分を再吸収しているわけではありません。一時的に再吸収が起こる状況はありますが、定常状態ではリンパ系が間質液を循環へ戻す重要な経路になります。
浮腫を考えるときは、「血管から出た水を、静脈側で吸い戻す」ではなく、「濾過された水分をリンパ系が回収する」

浮腫は「水が血管から出た」だけでは起こらない

血管から間質へ液体が移動すること自体は異常な現象ではありません。問題になるのは、間質へ入ってくる量とそこから回収される量のバランスが崩れることです。

血管から間質への濾過が増える。リンパ系の輸送能力を超える。あるいはリンパ系そのものの輸送能力が低下する。こうした状態が続けば、間質に液体が蓄積していきます。

急性外傷ではさらに複雑です。組織が損傷すると炎症反応が始まり、ヒスタミン、ブラジキニン、プロスタグランジン、サイトカインなど多くのメディエーターが関与します。局所の血管径や血流が変化し、内皮バリアの性質が変われば、水分だけでなくタンパク質を含む成分も間質側へ移動しやすくなります。

そこに組織損傷による出血、細胞損傷、細胞外マトリックスの変化なども加わります。

つまり捻挫や肉離れ後に私たちが見ている「腫れ」は単純に水が溜まっているだけではありません。血管反応、炎症、出血、間質液、タンパク質、細胞外マトリックス、リンパ輸送などが重なった結果として見えている現象です。

間質は単なる「水を入れるスペース」ではない

ここも、浮腫を考えるうえでは重要です。

間質は、単純に水が自由に溜まる空洞ではありません。コラーゲンやプロテオグリカン、ヒアルロン酸などから構成される細胞外マトリックスの中に間質液が存在しており、組織そのものが液体を保持する構造をもっています。

そのため、間質液が増えたときに「液体量」と「間質圧」が一定の割合で変化するわけではありません。

組織のコンプライアンスは液体量によって変化し浮腫が形成されていく過程では間質液量と間質圧の関係も変わっていきます。

この間質圧の変化も浮腫を考えるうえでは無視できません。間質圧が上昇すれば、毛細血管から間質へ向かう濾過を抑える方向に働く可能性があります。一方で、間質液量や間質圧の上昇はリンパ管への液体流入やリンパ輸送にも影響します。

つまり浮腫は「血管から水が漏れて、その水が溜まる」という一方向の現象ではありません。

血管からの濾過、細胞外マトリックスによる液体保持、間質圧の変化、そしてリンパ系による回収が相互に影響し、その結果として、ある時点で観察される組織の水分量が決まっていると考えた方が実態に近いでしょう。

間質へ出た液体はリンパ系から回収される

では、間質へ移動した液体はどうやって循環へ戻るのでしょうか。

ここで重要になるのがリンパ系です。

末梢のinitial lymphatics(毛細リンパ管)には血管とは異なる特徴があり、リンパ管内皮細胞は周囲の細胞外マトリックスとanchoring filaments(繋留フィラメント)によって連結されています。そのため、間質圧など周囲の力学的環境が変化するとinitial lymphaticsへの液体流入にも影響します。

取り込まれたリンパ液は、その後collecting lymphatics(集合リンパ管)へ送られます。collecting lymphaticsには平滑筋があり自発的な収縮によってリンパ液を送り出すintrinsic pumping(内因性ポンプ作用)があります。一方、筋収縮、関節運動、呼吸、周囲組織からの圧迫などの外力もリンパ輸送に影響します。こちらはいわゆるextrinsic pumping(外因性ポンプ作用)です。

ここまで考えると「循環を良くする」という一言がかなり曖昧であることが分かります。動脈血流を増やすこと、静脈還流を増やすこと、リンパ管への流入を増やすこと、collecting lymphaticsによる輸送を増やすこと。これらは同じではありません。

では「浮腫が減った」とは何なのか?

ここまで整理すると、物理療法後に浮腫が減った場合にもいくつかの可能性があります。

まず考えられるのは新たに形成される浮腫が少なくなった可能性です。

血管透過性や微小循環、炎症反応などが変化し、その後に間質へ移動する液体量が少なくなったのかもしれません。

一方、すでに存在していた間質液が移動した可能性もあります。

筋収縮や圧変化によって測定部位から別の場所へ液体が移動したのかもしれませんしリンパ系による取り込みや輸送が増えた可能性もあります。さらに、炎症反応そのものの時間経過が変化した可能性も考えられます。

そして忘れてはいけないのが、測定上、浮腫が減ったように見えただけという可能性です。

ここまで分けてみると、「浮腫が減った」という結果だけではその治療が何をしたのかはほとんど分からないことが見えてきます。

では、ここから各物理療法を考えて仮説を立ててみます。

仮説①ハイボルテージは「浮腫を流す」のではなく形成を抑えている?

浮腫に対する電気刺激の中で比較的古くから研究されているのがHigh Voltage Pulsed Current(HVPC)です。

ここでは臨床で使う呼び方に合わせてハイボルテージとします。

ハイボルテージと浮腫について調べると「陰極が浮腫に有効」「高電圧刺激で腫れを抑えられる」といった説明を見かけます。

ただ、研究を細かく見ていくと少し意味が違います。

動物を対象とした研究では外傷を加えた後にハイボルテージを行いその後の肢体積の増加を測定しているものがあります。

つまり研究で見ているのは「治療前に存在していた浮腫がどれだけ排出されたかではなく、外傷後にどれだけ浮腫が形成されたか」です。

例えば外傷後に肢体積が増えていくとして無刺激では大きく増加したのに刺激群では増加量が小さかったとします。

この結果から考えられるのは「浮腫形成が抑制された可能性」であってすでに間質に存在していた液体を電気刺激によって排出したことを直接示しているわけではありません。

なぜ陰極刺激なのか?

ハイボルテージの基礎研究では陰極を損傷部位へ配置した条件で浮腫形成が抑制された報告があります。ここから極性依存的な作用が議論されてきましたがその機序は完全には確立されていません。

微小血管の透過性、電場による荷電分子や細胞への影響など複数の仮説がありますが「陰極を置けば血管壁が閉じる」といった単純な現象として説明できるわけではありません。

むしろ興味深いのは同じハイボルテージでも刺激条件によって結果が変わっていることです。

Taylorらはカエルの外傷モデルに対して、120 pps(Hz)、陰極、motor thresholdより10%低い強度で30分間刺激し、単回刺激後も一定時間、浮腫形成が抑制されたと報告しています。一方、Mendelらが表面電極を用いて同じく急性外傷後の浮腫形成を調べた研究では、単回30分のハイボルテージで有意な浮腫形成抑制は認められませんでした。著者らは、電極の種類や位置が結果に関係した可能性を指摘しています。

ここでいうmotor threshold(運動閾値)は、電気刺激によって目視可能な筋収縮が生じる刺激強度の閾値を指します。Taylorらの研究では、その閾値より10%低い強度が使用されています。

これは臨床を考えるうえでも重要だと思います。

「ハイボルテージ」という機器カテゴリーそのものに抗浮腫作用が備わっているわけではないということです。

周波数・強度・時間も含めて一つの刺激

浮腫形成抑制を報告した研究では極性だけでなく、パルス周波数、刺激強度、電極配置、刺激時間、外傷から刺激開始までの時間などが設定されています。

つまり臨床で「HVモードを選択した」だけでは、研究と同じ刺激を再現したことにはなりません。

特に表面電極と浸漬電極で結果が異なった研究まで考えると電極条件も無視できません。

現在の研究から考えるなら、ハイボルテージは間質に溜まった液体を押し出すというより、特定の刺激条件によって外傷後の浮腫形成量に影響する可能性があると考える方がよさそうです。

ただし、この根拠の中心は動物実験です。ヒトの急性足関節捻挫や肉離れで同じ現象がどの程度起こるのかは、別に考える必要があります。

仮説②NMESは筋ポンプという別のルートから考える

同じ電気刺激でもNMESでは考え方が少し変わります。

NMESでは明確な筋収縮を起こします。筋肉が収縮すると筋内圧が上昇し、周囲の静脈やリンパ系にも機械的な圧変化が加わります。

弛緩すれば圧は低下するためこの収縮と弛緩の繰り返しによって静脈還流を補助する筋ポンプが働きます。リンパ輸送についても、周囲組織から加わる周期的な圧変化はextrinsic pumpingとして考えることができます。

つまりNMESでは電気そのものが間質液へ作用するというより、電気によって筋収縮を作り、その機械的作用を利用しているという側面が大きくなります。

筋収縮によって局所血流が変化することもありますが、浮腫について考えるのであれば、「血流が増えた」という説明だけでは足りません。

筋収縮によって組織圧が周期的に変化しその機械的変化が静脈還流やリンパ輸送を補助すると考えた方が分かりやすいと思います。

NMESによる浮腫軽減を検討した臨床研究をまとめたsystematic reviewでは採用された7研究のうち6研究で浮腫軽減を支持する結果が報告されています。

ただし、対象となった患者群や刺激条件はかなり異なります。そのため「NMESなら浮腫に効く」と一括りにするのは難しいところです。

もう一つ臨床で考えておきたいのが損傷組織への機械的負荷です。

例えば肉離れ直後の筋肉へ強い筋収縮を起こすことと、数日後に疼痛のない範囲で筋ポンプを利用することは同じではありません。

NMESでは浮腫に作用するかどうかだけではなくその時期にその筋収縮を許容できるかまで考える必要があります。

仮説③ 微弱電流は「浮腫を流す治療」と考えない方がよい

微弱電流は浮腫について説明するのが難しい物理療法の一つです。

臨床では微弱電流を使用したあとに浮腫が減ったように感じる場面もあります。では、その変化をどのように考えればよいのでしょうか。

微弱電流については「炎症を抑える」「治癒を促進する」「ATPを増やす」といった説明がされることがあります。

ただ、これらをそのまま「だから浮腫が減る」と結びつけるのではなく、一つずつ分けて考えた方がよいと思います。

まず微弱電流では一般的に明確な筋収縮を起こすことを目的としません。そのため、NMESのような筋ポンプ作用をそのまま主な浮腫軽減機序として説明することは難しくなります。

微弱電流と組織修復

微弱電流については創傷治癒を中心にさまざまな研究があります。

創傷部では正常な上皮電位が破綻し内因性の電場が形成されます。この電気的環境は細胞遊走などに関与すると考えられており、外部からの電気刺激によって組織修復へ影響できる可能性が研究されています。

実際、微弱電流を含む電気刺激を用いた創傷治癒研究では創傷面積や治癒期間などを評価した臨床研究やメタ解析があります。

ただしここで注意したいのは創傷治癒が促進されたことと急性外傷後の浮腫が減少したことは同じではないということです。

創傷治癒に対する研究結果をそのまま捻挫や肉離れ後の浮腫へ当てはめることはできません。

ATPの話を浮腫まで一気につなげない

さらに微弱電流ではATP産生の話がよく出てきます。

電気刺激とATP産生との関係を示した古典的な基礎研究はありますが、

微弱電流 → ATP産生増加 → 組織修復促進 → 炎症低下 → 血管透過性低下 → 浮腫減少

と一気につなぐとかなり長い推論になります。

途中の一つ一つを同じ研究が証明しているわけではありません。

さらに注意したいのが「微弱電流」という名称だけで刺激条件を一括りにできないことです。

微弱電流と呼ばれる刺激でも、波形、極性、周波数、パルス幅、Duty、電流・電圧制御、電極配置、刺激時間などは研究や機器によって異なります。

ある実験条件でATP産生や細胞反応に変化が認められたとしても、それを現在臨床で使用されているすべての微弱電流へそのまま外挿することはできません。単に「μAだから同じ刺激」と考えないことも重要です。

したがってATPは直接的な抗浮腫作用の根拠というより微弱電流による細胞・組織反応を考える材料の一つとして扱う方がよいと思います。

単相微弱電流では「電荷移動」も考える必要がある

もう一つ、微弱電流と浮腫の関係を考えるうえで興味深いのが、電流の「極性」と「電荷移動」です。

特に単相性の電流では、対称性二相性の電流とは異なり一方向への正味の電荷移動が生じる条件があります。

生体組織にはNa⁺、K⁺、Cl⁻などのイオンだけでなく、さまざまな荷電分子が存在しています。そのため、組織内に電場が形成されれば、荷電粒子の分布や移動に影響する可能性があります。

ここで関連する物理現象の一つがelectro-osmosis(電気浸透)です。

電気浸透とは荷電した多孔質構造の中に電場が加わったとき電気二重層などに存在するイオンの移動に伴って液体が移動する現象です。

生体組織も水分、イオン、タンパク質、細胞外マトリックスなどから構成されるため、電場による組織内のイオンや水分の挙動を考える際には、こうした物理現象を検討する余地があります。

ただし、ここは臨床効果と明確に分けて考える必要があります。

臨床で用いる微弱電流によって浮腫を減少させるほどの電気浸透が生体内で実際に生じていることが直接確認されているわけではありません。

μAレベルの直流刺激によって浮腫形成への影響を検討した動物研究があったとしても、それだけで

単相微弱電流を流す → イオンが移動する → 水が移動する → 浮腫が排出される

と結論づけることはできません。

臨床で使用する刺激条件によって組織内にどの程度の電場が形成されるのか。どのイオンや荷電分子がどの程度移動するのか。

そして、それに伴って臨床的に意味のある量の間質液が移動するのか。

ここまでを直接示した臨床的な根拠は十分ではありません。

また単相性であっても、パルス幅やDuty、周波数、電流値、電極面積、電極間距離、刺激時間などが変われば、単位時間あたりに組織へ与えられる電荷量や形成される電場も変わります。

そのため「単相だから浮腫に効く」と単純化することもできません。

それでも単相微弱電流を考える場合にはATPや組織修復だけではなく、極性、正味の電荷移動、電場、イオン移動、さらに理論上は電気浸透といった物理的側面も検討する必要があると思います。

では微弱電流は浮腫に何をしているのか?

ここまで考えると微弱電流による浮腫の変化を一つの機序だけで説明するのは難しそうです。

炎症反応と浮腫形成は密接に関係しているため微弱電流によって炎症反応や組織修復の時間経過が変化するのであれば二次的に浮腫形成へ影響する可能性があります。

一方、単相性の微弱電流であれば、電場や電荷移動、それに伴うイオンや水分の挙動についても考える余地があります。ただし、これらは同じレベルのエビデンスで確認されているわけではありません。

したがって現時点では、「微弱電流が間質液を直接排出する治療」と説明するよりも、炎症・組織修復への影響に加えて、刺激条件によっては電場や電荷移動などの物理的作用も関与する可能性がある、と考える方がよいと思います。

臨床で浮腫が減少して見えたとしてもその変化が「液体を直接移動させた結果」なのか「新たな浮腫形成を抑えた結果」なのかそれとも両者が関係しているのかは分けて考える必要があります。

微弱電流についても「腫れが減った」という結果だけを見るのではなくどの程度の浮腫が、どのような機序によって生じていて、それがどの時間経過の中で変化したのかを分けて考えることが重要だと思います。

現時点では「炎症・修復過程への作用を介して、浮腫の時間経過にも影響する可能性がある」と考えるくらいがよさそうです。

仮説④超音波は「振動で浮腫を流している」のか?

超音波ではさらに違った作用を考える必要があります。

治療用超音波は組織へ機械的エネルギーを伝えます。

その結果として温度が上昇する場合もありますし、stable cavitation(キャビテーション)やacoustic streaming(ストリーミング)など、温度上昇だけでは説明できない作用も研究されています。

浮腫について興味深いのが炎症モデルを用いた動物研究です。

Kimらはラットのカラゲニン誘発paw edemaモデルに対して、1 MHz、50・100・200 mW/cm²の低強度超音波をcontinuous wave(連続波)で10分間、カラゲニン投与直後に照射しています。その結果、2時間後と6時間後の足の浮腫の形成が抑制され、Evans Blue extravasation(エバンスブルー血管外漏出)を用いた評価では血管透過性にも変化が認められました。さらにiNOSやCOX-2といった炎症関連タンパク質についても検討されています。

ここで面白いのは刺激直後に一時的に足の体積が小さくなったという話ではなくその後の時間経過で形成される浮腫量に差が生じていることです。

そのため「超音波の振動によって水を押し流した」と考えるだけでは不十分です。超音波刺激によって細胞や微小血管、炎症反応に何らかの変化が起こり、その結果として血管透過性やその後の浮腫形成量が変化した可能性を考える必要があります。

もちろんこれはラットのカラゲニン炎症モデルです。そのままヒトの足関節捻挫や肉離れに置き換えることはできません。

stable cavitation(キャビテーション)とacoustic streaming(ストリーミング)

治療用超音波の非温熱作用を考える際によく出てくるのがstable cavitationとacoustic streamingです。

stable cavitationでは音圧によって微小な気泡が周期的に膨張・収縮し、acoustic streamingでは音場によって局所的な流体移動が生じます。こうした物理現象が細胞膜近傍の機械環境や膜輸送、細胞内シグナルなどへ影響する可能性が考えられています。

ただ、「stable cavitationが起こる→炎症が抑えられる→浮腫が減る」という経路がヒトの急性外傷でそのまま確立されているわけではありません。臨床用超音波を人体へ照射したときに組織内でstable cavitationがどの程度生じ、それが実際の臨床効果へどの程度寄与しているのかについても、単純に決めつけることはできません。

ここでも、基礎研究から想定される物理現象と実際の臨床効果は分けて考える必要があります。

「パルスだから非温熱」では足りない

浮腫に対して超音波を使うとき、「急性期だからDutyを下げる」「パルスだから非温熱」と考えることがあります。

しかし、組織へ与えられる刺激はDutyだけでは決まりません。周波数、強度、Duty、照射時間、SATA、PEAK、ERA、照射面積、組織の吸収特性などが関係します。同じDutyでも強度や照射時間が変われば、組織へ与えられるエネルギーは変わります。

先ほど紹介したKimらの研究で浮腫形成抑制が報告された条件もcontinuous waveです。もちろん低強度の動物実験なので、これを根拠に「急性期でも連続波を使えばよい」という話にはなりません。

ただ少なくとも、「パルス超音波だから浮腫に適している」という説明だけでは足りないことは分かります。

さらに臨床研究まで見ると急性足関節捻挫に対する治療用超音波では明確な臨床的利益は確認されていません。基礎研究で血管透過性や炎症反応への作用が認められることと、ヒトで臨床的に意味のある浮腫減少が起こることは分けて考える必要があります。

仮説⑤ラジオ波は「血流を増やして浮腫を流す」のか?

ラジオ波、いわゆるRFやTECARについても考えてみます。

RFでは数百kHz帯を中心とした高周波電流が利用され、組織内でエネルギーが熱へ変換されます。研究では500 kHz前後を含むさまざまな条件が使われており、capacitiveやresistiveといった方法の違いだけでなく、出力、治療時間、電極構成、電極サイズなども異なります。

そのため「RF」「TECAR」という名称だけで、すべて同じ刺激と考えることはできません。

比較的確認しやすいのは温度と灌流

RF/TECARで比較的研究されているのが、皮膚温、皮膚微小循環、筋内血流などです。

Clijsenらは健常者10名を対象としてcapacitive(CET)、resistive(RET)、placeboを比較し、皮膚微小循環、筋内血流、皮膚温を評価しています。その結果、capacitiveとresistiveの両方で皮膚微小循環に変化が認められ、resistiveでは筋内血流や皮膚温にも変化が認められました。

ただし、これは健常者10名を対象としたpilot feasibility studyです。そのため少なくとも健常者を対象とした小規模研究では、RF/TECARによって皮膚温や皮膚微小循環、筋内血流が変化することが報告されているというところまでが、比較的説明しやすいと思います。

問題はその次です。

血流が増えたことと浮腫が減ったことは同じではない

「RFで温度が上がる→血流が増える→循環が良くなる→浮腫が改善する」という説明を見かけることがあります。

しかしこの最後の部分にはかなり大きな飛躍があります。

血流は血管内を流れる血液の話です。一方、浮腫は主として血管外に存在する間質液の問題です。さらに改訂Starling原理を考えれば、間質液が単純に毛細血管静脈側へ吸い込まれて戻るわけではなくリンパ系による回収が重要になります。

したがって、皮膚血流や筋血流が増えたことから、「浮腫が排出された」と結論することはできません。

急性炎症で血流を増やすことは有利なのか?

ここがさらに難しいところです。

炎症初期では、すでに血管拡張や血管透過性の変化が起こっています。

その状態へ温熱刺激を加えて局所灌流を変化させたとき、最終的な浮腫形成量がどう変わるのかは血流だけでは決まりません。毛細血管圧、血管透過性、間質圧、リンパ輸送などが同時に関係するからです。

そのため「急性期は血流を増やすと腫れる」と単純に言い切ることもできませんし反対に「血流を増やせば浮腫が流れる」とも言えません。

もしRFが本当に浮腫の回収を促進していることを示すのであれば、血流だけでなく、組織水分量、間質液量、周径や体積、リンパ輸送なども確認したいところです。

RF/TECARではlipedemaなどを対象として周径や臨床症状を評価した研究もありますが、これは急性外傷性浮腫とは病態が異なります。その結果を捻挫や肉離れ後の浮腫へそのまま当てはめることはできません。

現時点では、RF/TECARによって組織温度や局所灌流が変化することを示した研究はある。しかし、その変化が急性外傷後の間質液回収やリンパ輸送を増加させ、結果として浮腫を減少させるところまで一続きに証明されているわけではない、という整理が妥当だと思います。

ただこれも実際に浮腫が減少することも多くみられます。

仮説⑥鍼通電では「鎮痛」と「炎症性浮腫」を分けて考える

鍼通電については鎮痛作用の研究が多いため、浮腫についても同じ機序で説明したくなります。しかし、鎮痛作用と炎症性浮腫への作用は分けて考えた方がよさそうです。

カラゲニンなどによって炎症を誘発した動物モデルでは、低周波鍼通電によって足の浮腫が抑制された研究があります。2 Hzの鍼通電を用いた研究では、カラゲニンによる炎症性浮腫やhyperalgesiaが抑制され、炎症関連反応についても検討されています。

ここから考えられるのは、鍼通電が局所の間質液を物理的に押し出しているというより、炎症反応に影響した結果として浮腫形成量が変化した可能性です。

局所だけではなく全身性の反応も考えられる

鍼通電による抗炎症作用については末梢組織だけでなく中枢神経系や内分泌系を介した反応も研究されています。

例えば炎症を誘発したラットを用いた研究では10 Hzの鍼通電による足の浮腫への作用と視床下部―下垂体―副腎系との関連が検討されています。さらに、視床下部室傍核のCRHニューロンやACTHとの関連を調べた研究もあります。

ここで注意したいのは「鍼通電による抗炎症作用」を一つの周波数、一つの経路だけで説明しないことです。2 Hzのカラゲニン炎症モデルで検討された反応と、10 Hzの炎症モデルで検討されたHPA axisの反応は分けて考える必要があります。

そして、これらの研究の多くは動物の炎症モデルです。捻挫や肉離れ後のヒトで同じ経路によって臨床的に意味のある浮腫減少が起こることまで確立されているわけではありません。

そのため鍼通電についても、「鍼通電で浮腫を流す」のではなく、「炎症性浮腫の形成過程へ影響する可能性を示す基礎研究がある」という位置づけが適切だと思います。

ただ臨床ではこれも効果的なことが多いです。

こうして並べると、それぞれ狙っている場所が違う

ここまで各物理療法を見てくると全部を「浮腫を減らす治療」と一括りにすることに無理があることが分かります。

ハイボルテージでは特定の刺激条件で外傷後の浮腫形成を抑制した動物研究があります。NMESは筋収縮による静脈・リンパ系への機械的ポンプ作用として考えることができます。微弱電流では炎症や組織修復を含む細胞・組織レベルの反応が研究され、超音波では機械的刺激による炎症反応や血管透過性への作用が検討されています。RF/TECARで比較的確認しやすいのは組織温度や局所灌流の変化で、鍼通電では末梢だけでなく神経―内分泌系を含めた炎症反応への作用が研究されています。

似ているようで、それぞれ見ている現象は違います。

さらに重要なのは、「その生理学的作用が存在する」ことと「ヒトの急性外傷後浮腫を臨床的に減少させる」ことの間にも距離があるということです。

「浮腫が減った」を何で測ったのか?

物理療法の研究を読むとき、作用機序と同じくらい重要なのが評価方法です。

例えば足関節周囲径が治療後に小さくなったとします。これは臨床的には意味のある変化かもしれませんが、周径が減っただけでは液体がどこへ移動したのかは分かりません。測定部位から近位へ移動しただけなのかもしれませんし、リンパ系によって回収されたのかもしれません。

water displacementによる体積測定であれば肢全体の体積変化を評価できますが、その変化が水分なのか、血液量なのか、その他の組織変化なのかまでは分かりません。

※実際臨床現場では判定は難しいと思います。

超音波による組織厚、bioimpedanceによる組織水分の推定、Laser Dopplerによる皮膚微小循環なども、それぞれ見ている現象が違います。リンパ輸送そのものを評価したければ、さらに別の評価法が必要になります。

つまり「浮腫が改善した」という研究でも、何を測って改善と判断したのかによって意味が変わります。

「いつ測ったのか」でも意味が変わる

時間軸も非常に重要です。

治療直後に周径が減った。数時間後の腫脹が小さかった。翌日の腫脹が少なかった。数日後の腫脹が少なかった。すべて「浮腫が減った」と表現できますが、起きている現象は違う可能性があります。

治療直後であれば、局所的な液体の再分布や血行動態の変化が関係しているかもしれません。数時間後の差であれば、新しく形成される浮腫の量が変わった可能性があります。

翌日以降まで差が残っている場合には、一時的な液体移動だけでなく、炎症反応や組織修復の時間経過を含めた、より持続的な変化が関与している可能性も考える必要があります。ただし、時間が経過すれば活動量、荷重、圧迫、挙上、筋活動など治療以外の要因も増えてきます。

そのため「翌日も腫れが少なかった」という結果だけから、炎症反応や組織修復が変化したと断定することもできません。

物理療法研究を見るときには、「何が変わったか」だけでなく、「いつ変わったか」まで見る必要があります。

浮腫への物理療法を四つに分けて考えてみる

ここまで調べてみると、浮腫に対する物理療法は大きく四つの方向から考えると整理しやすいと思います。

一つ目は浮腫形成を抑えることです。血管透過性や炎症反応などに作用して、新たに間質へ移動する液体量を変える考え方で、ハイボルテージや一部の超音波、鍼通電の基礎研究はこちらに近いと思います。

二つ目はすでに存在する液体の輸送を補助することです。筋収縮によるポンプ作用を利用するNMESなどが、この考え方に近くなります。

三つ目は炎症や組織修復の経過そのものへ作用することです。微弱電流、超音波、鍼通電などでは、この部分に関する研究があります。

四つ目は組織温度や局所灌流を変化させることです。RF/TECARはここが比較的分かりやすいと思います。

ただし、この四つは完全に独立しているわけではありません。炎症反応が変われば血管透過性も変わりますし、筋ポンプが働けば組織内圧や静脈還流にも影響します。組織温度が変われば血管反応や代謝も変わります。

生体内ではすべてがつながっています。

だからこそ、「この機械は浮腫に効く」ではなく、「この刺激は浮腫形成のどこに作用している可能性があるのか」と考えた方が整理しやすいと思います。

では臨床ではどう考える?

私自身、浮腫に対して物理療法を使います。

ただ、今回いろいろ調べてみると、「腫れているからハイボルテージ」「腫れているから微弱電流」「腫れているから超音波」「循環を良くしたいからラジオ波」というように機器から入る考え方には少し無理があるように感じます。

例えば外傷直後で、これから浮腫が増えていく段階なのか。すでにかなり浮腫が形成されているのか。痛みによって関節運動や筋収縮が低下しているのか。炎症反応がまだ強いのか。数日経過して組織修復へ移行しているのか。

同じ「腫れている足」でも状況は違います。

さらに臨床では、物理療法だけを行っているわけではありません。圧迫、挙上、適切な運動、荷重管理なども同時に行います。特にリンパ輸送を考えるなら、筋収縮や関節運動、外部からの圧迫といった機械的要因を無視することはできません。

そう考えると、物理療法だけを切り取って「浮腫を取る治療」と考えるより、現在の病態に対して、物理療法をどこに組み込むのかという考え方の方が臨床には合っているように思います。

まとめ

今回改めて調べてみると、「浮腫に物理療法は効くのか?」という問い自体が主語が少し大きすぎるのかもしれません。

そもそも浮腫は、単純に「水が溜まった状態」ではありません。血管から間質への液体移動、血管透過性、間質圧、細胞外マトリックス、リンパ管への取り込み、リンパ輸送、筋ポンプ、炎症反応など、複数の要素によって決まります。

そのうえで物理療法を見ると、それぞれ狙っている可能性のある場所が違います。

ハイボルテージでは、特定の刺激条件で外傷後の浮腫形成を抑制した動物研究があります。NMESでは、筋収縮によるポンプ作用を介して液体輸送を補助できる可能性があります。微弱電流では、炎症や組織修復に関係する細胞反応が研究されていますが、「微弱電流」という名称だけで異なる刺激条件を一括りにすることはできません。

超音波では、炎症モデルにおける血管透過性や浮腫形成への作用が報告されています。ラジオ波では、健常者を対象とした小規模研究などで組織温度や局所灌流の変化が報告されています。鍼通電では、炎症性浮腫と炎症関連経路への作用が動物研究で報告されています。

しかし、これらは全部「浮腫が流れた」という同じ現象ではありません。

浮腫形成が抑えられたのか。すでに存在する液体が移動したのか。リンパ系による回収が増えたのか。炎症反応が変化したのか。温度や血流が変化したのか。そして、その変化を何で測定し、いつ測定したのか。ここまで分けて考える必要があります。

臨床ではどうしても「腫れが引いた」という一言でまとめてしまいます。でも、その一言の中ではかなり複雑なことが起きています。

だから私は、浮腫に物理療法を使うとき、

「この機器は浮腫に効くのか?」ではなく、「今、この刺激によって浮腫形成のどこを変えようとしているのか?」

と考えた方が面白いと思っています。

物理療法は機器の名前から考えるより生理学から逆算した方が見えてくるものが多いのかもしれません。

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