こんにちは!陣内です。
超音波治療を勉強すると「急性期はパルス、慢性期は連続波」という説明を聞くことがあります。
もう少し具体的に「急性期ならDuty を下げる例えば20%」「100%は温熱作用が強いから急性期には使わない」と覚えている方もいるかもしれません。
私自身、筋損傷や捻挫などの急性期に超音波を使うときはDutyを下げることが多いです。
当院では日本メディックスのULTRASON RE-3000、伊藤超短波のEU-910、オルタツインと複数の超音波治療器を使っています。
その中で一つの疑問が出てきます。
そもそも「Duty 20%だから非温熱、100%だから温熱」と考えていいのだろうか?
今回は「急性期にDuty 100%は本当にダメなのか?」という疑問から、Duty、PPS、強度、SATA、そして実際の筋温測定研究まで順番に考えてみます。
そもそもDuty 20%とは何なのか

まず整理しておきたいのがDuty cycleです。
バースト超音波では超音波がずっと出ているわけではなくONとOFFを繰り返しています。
例えば2 ms超音波が出てその後8 ms休止するとします。ONから次のONまでが10 msそのうち実際に超音波が出ている時間は2 msです。
Duty cycleの計算式は、
Duty cycle(%)=Pulse duration(パルス持続時間) ÷ Pulse repetition period (パルス繰り返し周期)×100
なのでこの場合は20%になります。
つまりDuty 20%とは、簡単に言えば「1周期のうち20%の時間が超音波が出ている」ということです。
ここで大事なのはDuty 20%だからといって「2 ms ON・8 ms OFF」と決まっているわけではないことです。
4 ms ON・16 ms OFFでも20%。
10 ms ON・40 ms OFFでも20%です。
ということは、「Duty 20%」という数字だけでは超音波がどんな時間構造で出ているのかまだ全部は分かりません。
同じDuty 20%でもPPSが違えば時間構造は変わる

ここでもう一つ見ておきたいのがPPSです。
ウルトラソンを使っていると、Dutyとは別に20・50・100 ppsという設定があります。ちなみに私が知っている機器でppsを設定出来る機器はウルトラソンしかしりません。
普段はDutyの方に目が行きやすいのですが、今回あらためて説明書を見ていて、私はむしろこちらが気になりました。
一般的なパルス超音波では、1秒間に何回パルスを繰り返すかをPRF(Pulse Repetition Frequency)で表します。
ここからはRE-3000そのものの出力波形ではなく、一般的なPRFとDutyの関係を理解するための模式例として考えてみます。
仮に20、50、100 ppsをそれぞれ20、50、100 HzのPRFとして扱った場合、Duty 20%でもパルスの時間構造は次のように変わります。
| PRF | 1周期 | Duty 20%でのON時間 | OFF時間 |
|---|---|---|---|
| 20 Hz | 50 ms | 10 ms | 40 ms |
| 50 Hz | 20 ms | 4 ms | 16 ms |
| 100 Hz | 10 ms | 2 ms | 8 ms |
全部Duty 20%です。
1秒間全体で見ればONになっている時間の割合も同じ20%です。それでも、10 ms出して40 ms休むのと、2 ms出して8 ms休むのでは、超音波の出方は同じではありません。
ただし、ここは一般論とRE-3000の仕様を分けておく必要があります。
今回確認したウルトラソンの取扱説明書には20・50・100 ppsという設定がありますが、このppsを上の表のPRFとしてそのまま扱い、Pulse durationを逆算してよいところまでは確認できませんでした。
なので、この表はウルトラソンの実際の出力波形を示したものではありません。あくまで一般的なPRFとDutyの関係を理解するための例です。
では、Dutyが同じで時間平均強度も同じ、でもPPSが違う場合、温度上昇や生物学的作用まで同じなのでしょうか。
ここはまだ簡単には答えられません。
ただ少なくとも、Dutyはパルス超音波の時間構造を表す情報の一つであって、それだけですべてが決まるわけではないことは押さえておきたいところです。
Dutyを下げると何が変わる?

ではなぜ急性期にはDutyを下げるのでしょうか。
ここで強度を一緒に考えると分かりやすくなります。
ウルトラソンには、超音波強度について「PEAK」と「SATA」という表記があります。
SATAはSpatial Average Temporal Average Intensity、空間平均・時間平均強度です。
ウルトラソンの説明書では、パルス周期におけるPEAKを平均化した値としてSATAが説明されています。また、ハンディタイプのアプリケータでは強度はPEAK表示となっています。
例えばPEAK 1.0 W/cm²・Duty 20%だったとします。
ここでは話を分かりやすくするため、同じアプリケータ、同じ音場という前提で、まず時間方向だけを単純化して考えてみます。
1.0 W/cm² × 0.2=0.2 W/cm²
となります。
つまり、同じPEAK強度であればDutyを下げるほど、時間平均として組織に与えられる超音波エネルギーは小さくなります。
ただしここで少し注意が必要です。
SATAはSpatial Average Temporal Average Intensityつまり空間平均・時間平均強度です。
そのため、厳密には「PEAK表示値×Duty=そのまま機器のSATA」と考えているわけではありません。上の計算は、空間的な音場の違いをいったん置いて、Dutyによって時間平均がどう変化するかを見るために単純化したものです。
ここを見ると「急性期にDutyを下げる」という考え方には、ちゃんと意味があります。
ただ、ここからが今回気になったところです。
パルス超音波でも筋温は上がる

この疑問を考えるうえで面白いのがGalloらの研究です。
健康成人16名を対象に、
3 MHz・1.0 W/cm²・Duty 50%・10分のパルス超音波
と、
3 MHz・0.5 W/cm²・10分の連続超音波
を比較しています。
時間平均強度はどちらも0.5 W/cm²です。
左腓腹筋内側頭の深さ2 cmに温度プローブを入れて筋温を実際に測定したところ、パルス超音波では2.8±0.7℃、連続超音波では2.8±0.8℃上昇しました。温度上昇量だけでなく、温度上昇速度にも有意差はありませんでした。
これはかなり面白い結果です。
「パルス=非温熱」と単純に考えるなら、Duty 50%のパルス超音波では連続波より温度が上がりにくそうに見えます。
ところが時間平均強度をそろえると、この条件では両方とも約2.8℃上昇しました。
もちろん、ここから「Dutyは温度に関係ない」と考えるのは違います。
この研究ではパルス側のPEAK強度を1.0 W/cm²、連続側を0.5 W/cm²にして時間平均強度をそろえています。また、3 MHz、Duty 50%、10分、筋深2 cmという特定の条件です。
Duty 20%でも同じ結果になるとは言えません。
それでも、少なくとも「パルス超音波だから温まらない」とは言えないことは分かります。
Galloらも非温熱作用を意図してパルス超音波の条件を選択するときには、SATAを考慮することが重要だとしています。
Duty 100%でも「nonthermal(非熱的・非加熱)」とした研究がある

もう一つ面白い研究があります。
Markertらはラットの腓腹筋に挫傷を作り、その後の筋再生に対する超音波と運動の影響を調べています。
使用した超音波は、
3 MHz・0.1 W/cm²・5分・Duty 100%
です。
つまりcontinuousです。
ところが、この研究ではこの条件を「continuous nonthermal therapeutic ultrasound」として扱っています。
100%なのにnonthermalです。
これだけを見ると「じゃあ100%でも温まらないんだ」と考えたくなりますが、そこまでは言えません。
この研究は筋温を測定して「温度が上昇しなかった」と確認した実験ではありません。著者らが3 MHz・0.1 W/cm²という低強度continuousをnonthermal therapeutic ultrasoundとして設定した研究です。
さらにこの研究から「急性筋損傷にはDuty 100%が有効」とも言えません。
ここで重要なのはもっと手前です。
少なくとも研究上の用語として、continuous=必ずthermalという分類が一貫して使われているわけではありません。
Dutyだけではなく、強度を含めた照射条件全体を見る必要があります。
では「nonthermal effect」とは何なのか?

ここまで見てくると、少しややこしくなってきます。
パルス超音波でも筋温は上がる。
一方で、Duty 100%のcontinuous ultrasoundを「nonthermal」として扱っている研究もある。
そうなると、
「thermalとnonthermalはDutyで分けていいの?」
という疑問が出てきます。
ここで参考になるのが、Johnsが2002年に発表した治療用超音波のnonthermal effectに関するレビューです。
Johnsは、超音波による生体反応を「温度が上がったか、上がらなかったか」だけではなく、超音波が細胞に与える機械的な刺激という視点から整理しています。
超音波は「熱」だけを与えているわけではない
超音波が生体内を伝わると、そのエネルギーの一部は組織に吸収され、熱へ変換されます。
これは治療用超音波のthermal effectとしてよく知られています。
しかし、それとは別に、
- acoustic streaming(音響流)
- stable cavitation(安定型キャビテーション)
- 細胞膜への機械的刺激
などが生じる可能性があります。
つまり超音波を当てたとき「熱作用」か「非温熱作用」かのどちらか一方だけが起こると考えるより熱的作用と機械的作用を完全な二者択一として考えるのではなく、照射条件によって両者の現れ方が変わると考えた方が実態に近そうです。
面白いのはCa²⁺の変化
Johnsのレビューでは、線維芽細胞に超音波を照射すると、細胞内Ca²⁺濃度が変化した研究も紹介されています。
Ca²⁺は単なる電解質ではありません。
細胞内ではsecond messengerとして働き、その後のシグナル伝達に関わります。
ここから考えると、
超音波による機械刺激
→ 細胞膜の反応
→ Ca²⁺動態の変化
→ 細胞内シグナル伝達
という流れが存在する可能性があります。
ただし、この研究結果から、
「超音波でCa²⁺が増えるから組織修復が促進する」
とそのまま臨床効果までつなげることはできません。
細胞レベルで起きた反応と、ヒトの損傷組織が早く治ることは別の話です。
さらに面白い「frequency resonance hypothesis」
Johnsはここからさらに踏み込みます。
超音波の機械的エネルギーがタンパク質に作用し、
タンパク質の立体構造(conformation)やタンパク質複合体の状態を変化させるのではないか
という仮説です。
これをJohnsはFrequency Resonance Hypothesisとして提示しています。
もしこの考え方が正しければ、超音波の周波数は単に、
「1 MHzだから深部」
「3 MHzだから浅部」
という吸収・深達度だけの話ではなくなります。
周波数そのものが、細胞やタンパク質の反応に関係する可能性まで出てきます。
ただ、ここはかなり慎重に読まなければいけません。
Johnsが示したのは仮説モデルです。
「1 MHzではこのタンパク質が反応する」
「3 MHzではこのシグナル伝達が起こる」
というところまで臨床的に証明されているわけではありません。
この部分は非常に面白いですが、研究で直接確認された事実と仮説は分けて考える必要があります。
thermal / nonthermalをDutyだけで分けない

ここまでの研究を並べてみると、
continuous=thermal
pulsed=nonthermal
という覚え方では説明できない現象が出てきます。
パルス超音波でも条件によっては筋温が上昇します。
逆にcontinuousでも、非常に低い強度を使って「nonthermal ultrasound」として研究されることがあります。
そう考えると、thermal / nonthermalを決めるのはDutyだけではなく、
周波数・強度・Duty・照射時間・照射面積・組織の吸収特性・血流などを含めた照射条件全体
と考えた方がよさそうです。
そしてもう一つ大事なのは、
温度が上がったら機械的作用が消えるわけではない
ということです。
超音波を「温熱療法」と「非温熱療法」の2種類に分けるより、
治療用超音波にはthermal effectとmechanical effectの両方があり、照射条件によってその現れ方が変わる
と考えた方が、これまで紹介してきた研究結果を理解しやすくなります。
この視点で見ると、「Dutyを何%にすればnonthermalになるのか?」という問いそのものを、少し考え直す必要があるのかもしれません。
では急性期にDuty 100%は本当にダメなのか?

ここで最初の疑問に戻ります。
急性炎症を起こしている組織に、組織温度を上げる目的の超音波を行うことについては注意が必要です。
Houghtonらの物理療法の禁忌・注意事項では、組織温度を上昇させる可能性のあるcontinuous-mode ultrasoundは、すでに炎症を起こしている組織には使用すべきではないとされています。
理由として、局所加温による代謝や血管反応が炎症や腫脹を増悪させる可能性が挙げられています。
ここは結構大事です。
問題にされているのは単純に、「Duty 100%だからダメ」ではありません。
「組織温度を上昇させる可能性のあるcontinuous-mode ultrasound」
です。
一方、この急性損傷・炎症に対する研究エビデンスは同レビューで「LOW」と評価されています。
また、著者ら自身、このガイドの主要文献は厳密なシステマティックレビューの手順で収集されたものではないとしています。
だからといって、「根拠がLOWなら急性期にcontinuousを使っても問題ない」という話ではありません。
今回確認した範囲では急性炎症組織にDuty 100%を積極的に使うべきだとする根拠もありません。
ここは慎重に考えた方がよさそうです。
「急性期だからDuty 20%」は間違いなのか?

私はそうは思いません。
急性炎症があり、積極的な加温を避けたい。同じPEAK強度なら時間平均強度を下げたい。
その目的でDutyを下げることには合理性があります。
ただ、
「Duty 20%だから非温熱」
「Duty 100%だから温熱」
とDutyだけで分類してしまうと、少し安易かなと思います。
Galloらの研究ではDuty 50%でも、条件によって筋温が約2.8℃上昇しました。
逆にMarkertらは、0.1 W/cm²という低強度continuousをnonthermal ultrasoundとして扱っています。ただし、こちらは温度を直接測定した研究ではありません。
そしてさらに前半で見たように、同じDuty 20%でもPPSが違えば、パルスの時間構造は同じとは限りません。
こう考えると、Dutyという一つの数字だけで温熱・非温熱を分けるのは難しそうです。
実際の温度上昇にはDutyだけではなく、強度、超音波周波数、照射時間、照射面積、組織の深さや吸収特性、アプリケータの移動など複数の条件が関係します。
Duty cycleは温度ではありません。
今回調べていて、私が一番引っかかったのはここでした。
急性期の超音波をどう考えるか
最初は「急性期にDuty 100%は本当にダメなのか?」を調べるつもりでした。
でも調べていくと、100%か20%かという二択で考えること自体が少し違うように感じてきました。
急性炎症で加温を避けたいのであれば、Dutyを下げることはそのための一つの方法です。ただ、Dutyだけを見れば十分というわけではありません。
1 MHzなのか3 MHzなのか。強度はいくつなのか。PEAKなのかSATAなのか。Dutyはいくつなのか。PPSはどうなっているのか。そして、どのくらいの時間照射するのか。
そこまで見て初めて「どのような超音波を当てているのか」が少し見えてきます。
なので、今回のタイトルである、
「急性期に超音波Duty 100%は本当にダメ?」
について、現時点ではこう考えています。
急性炎症組織に積極的な加温を起こすcontinuous ultrasoundを使用することには慎重であるべきです。
一方で、
Duty 100%=温熱
Duty 20%=非温熱
とDutyだけで決めるのも正確ではありません。
この記事は「急性期でもDuty 100%で大丈夫」という話ではありません。
むしろ「急性期だからDuty 20%」と設定するときに、なぜ20%なのか。そこをもう一段掘ってみよう、という話です。
Duty、PPS、強度、時間平均強度、照射時間。
普段何気なく触っている設定を一つずつ見ていくと、超音波治療器の画面に並んでいる数字が少し違って見えてきます。
参考文献
Gallo JA, Draper DO, Brody LT, Fellingham GW. A Comparison of Human Muscle Temperature Increases During 3-MHz Continuous and Pulsed Ultrasound With Equivalent Temporal Average Intensities. J Orthop Sports Phys Ther. 2004;34(7):395-401.
Markert CD, Merrick MA, Kirby TE, Devor ST. Nonthermal Ultrasound and Exercise in Skeletal Muscle Regeneration. Arch Phys Med Rehabil. 2005;86(7):1304-1310.
Houghton PE, Nussbaum EL, Hoens AM. Electrophysical Agents—Contraindications and Precautions: An Evidence-Based Approach to Clinical Decision Making in Physical Therapy. Physiother Can. 2010;62(5):1-80.
Johns LD. Nonthermal Effects of Therapeutic Ultrasound: The Frequency Resonance Hypothesis. J Athl Train. 2002;37(3):293-299.
日本メディックス. ULTRASON RE-3000 取扱説明書.


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