鍼通電の2Hzはなぜ効く?研究論文を読んで思う2Hzの謎

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こんにちは!

陣内です。

今回の記事は「鍼通電療法でよく使われる2 Hzはなぜ痛みに対して効果があるのか?」について調べ考えていきたいと思います。

鍼通電療法(Electroacupuncture:EA)では、1 Hz、2 Hz、10 Hz、100 Hzなど、さまざまな周波数が使われます。

鍼通電について勉強すると、

「2 Hzではβ-エンドルフィンが放出される」

という説明を一度は見たことがあるのではないでしょうか。

私自身もセミナーで「低頻度=β-エンドルフィン」という感じで話をさせてもらっています。

もちろん大きく間違っているわけではないと思いますがちょっと立ち止まってみました。

そもそもなぜ2Hzなの?

ただ調べていくとこれだけでは少し単純化しすぎていることが分かります。

そもそもなぜ2 Hzなのでしょうか。(大事なので2回いいました。2Hzなので)

1 Hzではダメなのか。

10 Hzでは何が変わるのか。

そしてβ-エンドルフィンなどの内因性オピオイドが関係するとしてそれがどうやって痛みを抑えているのでしょうか。

今回は「2 Hzだから効く」というところで終わらず末梢神経から脊髄、脳、内因性オピオイド、さらに細胞レベルまで少し掘り下げて考えてみたいと思います。

もちろん私が調べての事なので持論も入っていると思います。すべてを鵜呑みにせず自分で調べていきましょう♪

それでは内容に入っていきます。

目次

そもそも2 Hzとは?

まず基本的なところからです。

Hz(ヘルツ)は、1秒間に何回刺激するかを表す単位です。

2 Hzであれば、

1秒間に2回刺激する

ということになります。

刺激と刺激の間隔は約500ミリ秒です。

一方、100 Hzなら1秒間に100回なので、刺激間隔は約10ミリ秒になります。

数字だけを見ると、

「2 Hzはゆっくり」

「100 Hzは速い」

という違いですが、神経生理学的に考えるともう少し意味があります。

末梢神経から脊髄や脳へ送られる電気的な入力の「時間パターン」が違うからです。

つまり、2 Hzと100 Hzは単純に刺激回数が違うだけではなく、

神経系に入っていく情報の時間構造そのものが違う

と考えることができます。

ここが鍼通電の周波数を考えるうえで面白いところだと思います。

2 Hzの鍼通電で何が起こるのか?

まずは大きな流れから考えてみます。

鍼を刺して電気刺激を加えると刺激条件にもよりますが鍼周囲の末梢神経が刺激されます。

そこで生じた求心性入力は、

末梢神経

脊髄後角

脳幹・中脳・視床下部など

へ伝わっていきます。

つまり鍼を刺している場所だけで反応が完結しているわけではありません。

末梢から入った刺激をきっかけにして、脊髄や脳を含めた疼痛調節のネットワークが動く可能性があります。

その中で低頻度鍼通電について昔から研究されてきたのが、

内因性オピオイド系

です。

身体の中にも「痛みを抑える物質」がある

私たちの身体には、もともと痛みを調節する仕組みがあります。

その代表的なものが、

  • β-エンドルフィン
  • エンケファリン
  • エンドモルフィン
  • ダイノルフィン

などの内因性オピオイドペプチドです。

「身体の中で作られるモルヒネのような働きをする物質」と考えると分かりやすいかもしれません。

この内因性オピオイドと鍼通電の関係を長年研究してきたことで有名なのがHanらです。
(伊藤超短波のエスプリのハンモードのハン先生です)

Hanらの一連の基礎研究では電気刺激の周波数によって動員される内因性オピオイド系が異なる可能性が示されています。

古典的なモデルを大まかに整理すると、

2 Hz前後の低頻度刺激

→ エンケファリン
→ β-エンドルフィン
→ エンドモルフィン

などの関与。

一方、

100 Hz前後の高頻度刺激

→ ダイノルフィン

の関与が強くなると考えられています。

ただし、ここは注意が必要です。

この周波数依存性を支える研究には動物実験が多く含まれています。

また、ヒトでよく引用されるHanらの1991年の研究は鍼通電ではなくTENS(経皮的電気神経刺激)です。

この研究では2 Hzと100 HzのTENSを行い腰部脳脊髄液中のオピオイドペプチド関連の変化を調べています。

2 HzではMet-enkephalin-Arg-Phe免疫反応性が増加し、100 Hzではdynorphin A免疫反応性が増加しました。

非常に興味深い結果ですが、

「ヒトに2 Hzの鍼通電をすると必ずβ-エンドルフィンが増える」

ことを直接証明した研究ではありません。

ここは分けて考えた方がよさそうです。

「2 Hz=μ・δ受容体」も少し単純化しすぎる

内因性オピオイドには、それぞれ作用するオピオイド受容体があります。

代表的なのが、

μ(ミュー)オピオイド受容体

δ(デルタ)オピオイド受容体

κ(カッパ)オピオイド受容体

です。

古典的な鍼通電の説明では、

低頻度
→ β-エンドルフィン・エンケファリンなど
→ μ・δ系

高頻度
→ ダイノルフィン
→ κ系

と説明されることがあります。

これは大まかな理解としては便利なのですが実際にはもう少し複雑だといわれています。

疼痛モデルや刺激条件によって関与する受容体が変わる可能性があります。

例えば、ChenとHanが1992年に報告した研究では、2/15 Hzの鍼通電による鎮痛にμ・δ・κの3種類のオピオイド受容体が関与することが示されています。

ここで大切なのはこの研究は2 Hz単独ではなく2/15 Hzだということです。

ですので、

「2 Hzならμとδ」

「100 Hzならκ」

と完全に分けて覚えてしまうよりも、

周波数によって動員されやすいオピオイドペプチドや受容体系に違いがある可能性がある

くらいに理解しておく方がよいと思います。

オピオイドが働くとなぜ痛みが抑えられるのか?

ここから少し細胞レベルの話になります。

β-エンドルフィンやエンケファリンなどによってオピオイド受容体が活性化すると、神経細胞内でいくつかの変化が起こります。

μ・δ・κオピオイド受容体はいずれも主として

Gi/oタンパク質

と共役しています。

Gi/oタンパク質は細胞外のシグナルを細胞内に伝えるヘテロ3量体Gタンパク質ファミリーの一つでアデニル酸シクラーゼ(cAMP産生酵素)を抑制し細胞内のcAMP濃度を低下させる働きを持ちます
簡単に言うとGi/oタンパク質は、オピオイド受容体が受け取った「痛みを抑える指令」を細胞内へ伝える仲介役

オピオイド受容体が活性化すると、

Gi/oタンパク質が働く

アデニル酸シクラーゼという酵素の働きを抑える

細胞内の情報伝達役であるcAMPが減る

cAMPによって活性化されるPKAの働きも弱くなる

神経細胞の活動や神経伝達物質の放出を抑える方向に働く

という方向へシグナルが変化します。

ただ疼痛伝達を考える場合にはそれだけではありません。

個人的には、

Ca²⁺とK⁺

を一緒に考えると分かりやすいと思います。

この辺ってなかなか難しいですよね

ですのでもう一度かみ砕きます。

ものすごく簡単に言うと、

オピオイド受容体が働くと、痛みを伝える神経に「ブレーキ」がかかる

と考えてください。

β-エンドルフィンやエンケファリンなどがオピオイド受容体にくっつくとその情報を細胞の中へ伝えてくれるのが、

Gi/oタンパク質

です。

Gi/oタンパク質は、いわば

「ブレーキの指令を細胞の中へ伝える係」

です。

このGi/oタンパク質が働くと、

Gi/oタンパク質が働く

細胞内の活動を促す仕組みを抑える

cAMPが減る

PKAの働きも弱くなる

神経が興奮しにくい方向へ向かう

という変化が起こります。

専門的には、

アデニル酸シクラーゼ抑制 → cAMP低下 → PKA活性低下

という流れですが、最初は

「オピオイド受容体が働くと、神経にブレーキをかける方向へ細胞内の状態が変わる

くらいの理解で十分だと思います。

ただしこれだけでは「どうして痛みが伝わりにくくなるの?」というところが、まだ少し分かりにくいですよね。

そこで登場するのが、

Ca²⁺(カルシウムイオン)とK⁺(カリウムイオン)

です。

ここも難しそうに見えますが、

Ca²⁺は「痛みの情報を次の神経へ渡す」ことに関係する

K⁺は「神経を興奮しにくくする」ことに関係する

とまずは考えてみてください。

オピオイド受容体が働くと、

Ca²⁺が神経細胞内へ入りにくくなる
→ 痛みの情報を次へ渡しにくくなる

さらに、

K⁺が神経細胞の外へ出やすくなる
→ 神経そのものが興奮しにくくなる

という変化が起こります。

つまり、ものすごく簡単にまとめると、

オピオイド受容体ON

Gi/oタンパク質がブレーキの指令を伝える

Ca²⁺を抑えて「痛みを次へ渡しにくくする」

K⁺を動かして「神経そのものを興奮しにくくする」

痛みの情報が伝わりにくくなる

というイメージです。

細かい分子機序はいろいろありますが鍼通電による鎮痛を理解するうえでは、

「オピオイドが神経の情報伝達にブレーキをかける」

という大きなイメージを持っておくとこの後の話がかなり分かりやすくなると思います。

Ca²⁺を入りにくくして神経伝達物質を出しにくくする

痛みの情報が神経から次の神経へ伝わるためにはシナプスで神経伝達物質を放出する必要があります。

そのとき重要になるのがCa²⁺(カルシウムイオン)です。

昔生理学で習ったはずですねw

活動電位が神経終末まで到達すると、

電位依存性Ca²⁺チャネルが開く

Ca²⁺が神経終末内へ流入する

シナプス小胞が細胞膜と融合する

神経伝達物質が放出される

という流れが起こります。

ところが、オピオイド受容体が活性化すると、電位依存性Ca²⁺チャネルが抑制されます。

すると神経終末へ入ってくるCa²⁺が減ります。

その結果、一次求心性終末などからのグルタミン酸サブスタンスPなど、侵害受容に関係する神経伝達物質の放出が抑制されます。

CGRPなどを含む侵害受容性求心性線維とオピオイド系の関係も報告されています。

要するに、

痛みの情報を次のニューロンへ渡しにくくする

方向へ働くわけです。

K⁺を外へ出して神経を興奮しにくくする

もう一つがK⁺チャネルです。

オピオイド受容体の活性化によってK⁺コンダクタンスが増加すると、K⁺が細胞外へ流れやすくなります。

すると膜電位はよりマイナス方向へ傾きます。

いわゆる過分極です。

過分極したニューロンは活動電位を起こしにくくなります。

つまりオピオイド系では、

シナプス前では

Ca²⁺流入を抑える

神経伝達物質を放出しにくくする

シナプス後では

K⁺コンダクタンスを増加させる

過分極させる

ニューロンを興奮しにくくする

という両方向から疼痛伝達を抑制できることになります。

ただし、ここにも一つ注意があります。

この一連の細胞内機序はオピオイド受容体について広く確立されている神経生理学的な作用です。

2 Hzの鍼通電を行った結果「β-エンドルフィンが増えμ受容体を介してCa²⁺チャネルが抑制されサブスタンスPが減少する」という全過程を一つの実験で証明したわけではありません。

ここは分けて考える必要があります。

2 Hz鍼通電で内因性オピオイド系が動員される可能性がありそのオピオイドが受容体へ作用した場合にはこのような神経生理学的機序によって疼痛伝達が抑制される。

現状ではこのようにつなげて考えるのが妥当だとうかなと思います。

K⁺(カリウム)コンダクタンスとは細胞膜においてカリウムイオン(K⁺)がどれだけ通りやすいかを示す尺度(電気伝導度)のことです。

鍼通電は患部だけに作用しているわけではない

鍼通電というと「痛い筋肉に鍼を刺して、そこに電気を流す」という局所治療のイメージが強いと思います。

もちろん局所で起こる反応もあります。

ただ鎮痛を考える場合には局所だけでは説明できません。

末梢から入った求心性入力は脊髄後角へ入りさらに上位中枢へ伝わります。

そこで関係してくる領域の一つが中脳水道周囲灰白質(PAG)です。

PAGは疼痛調節に関係する非常に重要な領域でさらに延髄吻側腹内側部(RVM)などを含むネットワークを介して脊髄後角の疼痛処理に影響します。

いわゆる下行性疼痛調節系です。

鍼通電による鎮痛も、

鍼刺激

末梢からの求心性入力

脊髄

PAG・RVMなどを含む中枢の疼痛調節ネットワーク

脊髄後角の疼痛処理を調節

という形で中枢を含めた反応として考える必要があります。

ただし、「2 Hzだから必ずPAG→RVMという経路が働く」と単純な一本道として考えるのは少し違います。

実際の疼痛調節には複数の領域と神経伝達物質が関わっていると考えられています。

セロトニンやノルアドレナリンも関係する

下行性疼痛調節ではオピオイドだけが働いているわけではありません。

代表的なのが、

セロトニン(5-HT)

ノルアドレナリン(NA)

です。

これらのモノアミン系も脊髄後角での疼痛情報処理を調節しています。

鍼通電による鎮痛についてもオピオイドだけではなく、セロトニン系やノルアドレナリン系など複数の神経伝達系の関与が研究されています。

ですので、

2 Hz
→ β-エンドルフィン
→ 鎮痛

という一本道で考えるより、

末梢から一定の時間パターンで求心性入力を入れることで、オピオイド系を含む複数の疼痛調節ネットワークが動員される

と考えた方が実際の生体反応には近いのではないかと思います。

では、結局なぜ「2 Hz」なのか?

ここまで調べるとやっぱりこの疑問に戻ってきます。

なぜ2 Hzなのでしょうか?

2 Hzでは約500ミリ秒ごとに刺激が入ります。

100 Hzでは約10ミリ秒ごとです。

当然神経系からすると全く違う時間パターンの入力になります。

神経系では刺激頻度によって細胞内Ca²⁺動態や神経伝達物質、神経ペプチドの放出パターンが変化することが知られています。

β-エンドルフィンやエンケファリンなどの神経ペプチドは一般的な小分子神経伝達物質とは異なり有芯小胞(dense-core vesicle)に蓄えられています。

その放出にはCa²⁺動態や刺激パターンが重要です。

このことを考えると、

2 Hzと100 Hzという異なる刺激パターンによって異なる神経化学反応が起こる

という考え方自体には生理学的な妥当性があります。

現時点で、

「500ミリ秒間隔だからβ-エンドルフィンが選択的に放出される」

とまで説明できるものはみつかりませんでした。(あるのであればごめんなさい)

周波数によって内因性オピオイドの反応が異なるという現象はHanらの研究をはじめ多くの基礎研究で示されています。

しかし、

神経系がどのように2 Hzと100 Hzを識別しそれを異なるオピオイドペプチドの放出へ変換しているのか

という細胞・神経回路レベルの詳細な仕組みにはまだ分かっていないのではないでしょうか?

個人的には逆にここが鍼通電の周波数を考えるうえで一番面白いところだと思います。

「2 Hzにはβ-エンドルフィンを出す特殊な力がある」

というより、

2 Hzという時間パターンを神経系に入力した結果その入力に応じた神経化学的反応が起こる

と考える方が自然なのかなと思います。

2 Hzと100 Hzは「弱い・強い」の違いではない

臨床で電気治療を使っていると、

「低周波(低頻度)だから弱い」

「高周波(高頻度)だから強い」

というイメージになりがちです。

でも2 Hzと100 Hzの違いは単純な刺激の強弱ではありません。刺激の強弱は出力や時間など様々な要因を含みます。

周波数が違うということは神経系へ送っている情報の時間構造が違うということです。

低頻度刺激ではエンケファリンやβ-エンドルフィンなどの関与が示され高頻度刺激ではダイノルフィン系の関与が示されています。

つまり、

2 Hzは100 Hzの弱いバージョンではありません。

それぞれ異なる神経生理学的反応を引き起こす可能性のある別の刺激条件として考えた方がよいと思います。

慢性疼痛を考えるうえでも興味深い

慢性疼痛では、患部の組織損傷だけでは痛みの強さを説明できないケースがあります。

侵害入力が長期間続くことで、

末梢からの侵害入力

脊髄後角ニューロンの興奮性変化

NMDA受容体などを含む可塑的変化

疼痛処理が過敏になる

といった中枢性感作が関係することがあります。

もちろん慢性疼痛=中枢性感作ではありません。

ただ、慢性疼痛の一部では組織だけではなく疼痛を処理している神経系そのものを見る必要があります。

低頻度鍼通電についても動物の炎症痛・神経障害性疼痛モデルなどで脊髄オピオイド受容体や上位中枢、下行性疼痛調節などに影響することが研究されているそうです。

ですので、

鍼通電=患部を治療する

だけではなく、

鍼通電=疼痛を処理している神経ネットワークへ入力を与える

という見方を持っておくと鍼通電の使い方も少し変わってくるのではないかと思います。

ただし「中枢性感作を有する患者に2 Hzを行えば改善する」と臨床的に断定できるわけではありません。

基礎研究から考えられる機序と実際の臨床効果は分けて考える必要がありそうです。

2 Hz鍼通電の鎮痛を一本の流れで考える

ここまでの話を一度整理します。

2 Hz前後の鍼通電

末梢求心性神経への周期的な入力

脊髄後角・上位中枢への入力

内因性オピオイド系を含む疼痛調節機構の動員

β-エンドルフィン・エンケファリン・エンドモルフィンなどの関与

μ・δなどのオピオイド受容体への作用

Gi/oタンパク質を介したシグナル伝達

アデニル酸シクラーゼ抑制・cAMP/PKA系の低下

さらに、

電位依存性Ca²⁺チャネルの抑制

神経伝達物質の放出抑制

そして、

K⁺コンダクタンス増加

過分極

ニューロンの興奮性低下

さらに中枢では、

PAG・RVMなどを含む下行性疼痛調節

セロトニン・ノルアドレナリンなどの神経伝達系

も関与し、

最終的に、

脊髄後角を含む疼痛情報処理が調節される

という流れで考えることができます。

ただしこれは複数の研究で得られた知見をつないだ「現在考えられている全体像」です。

この一連の流れがヒトの2 Hz鍼通電で最初から最後まで一つの実験によって確認されているわけではありません。

「2 Hz=β-エンドルフィン」で終わらせない

今回調べていて一番感じたのはここです。

鍼通電を勉強すると、

2 Hz=β-エンドルフィン

100 Hz=ダイノルフィン

と覚えたくなります。実際私もそう話していました。

確かにこれは分かりやすいですし古典的な周波数依存モデルを理解する入り口としては便利です。

ただ実際の身体はもう少し複雑です。

周波数だけでなく、

  • 刺激強度
  • パルス幅
  • 通電時間
  • 刺鍼部位
  • どの神経が刺激されるのか
  • 筋収縮を起こすのか
  • 疼痛の種類
  • 急性痛なのか慢性痛なのか

などでも反応は変わるはずです。

そして何より、

「なぜ2 Hzだと低頻度型のオピオイド反応が起こるのか?」

という根本的な部分はまだ完全には説明できるものはなさそうです。
(実際はあるのかもしれません。私の勉強不足はあると思います)

だからこそ、

「2 Hzには鎮痛効果がある」

だけで覚えるより、

「2 Hzという低頻度の時間パターンを末梢神経へ入力することで、内因性オピオイド系や下行性疼痛調節系を含む複数の疼痛調節機構が動員される可能性がある」

と理解しておく方が臨床では使いやすいのではないかと思います。

まとめ

今回は鍼通電でよく使用される2 Hzについて少し深掘りしてみました。

2 Hzは単純に、

「筋肉をゆっくり動かすための周波数」

というだけではありません。

低頻度の周期的な求心性入力によって脊髄や脳を含む疼痛調節系が動員されβ-エンドルフィン、エンケファリン、エンドモルフィンなどの内因性オピオイドが関与する可能性が基礎研究を中心に示されています。

さらに、オピオイド受容体の神経生理学まで見ていくと、

オピオイド受容体

Gi/oタンパク質

Ca²⁺チャネル抑制・K⁺チャネル活性化

神経伝達物質の放出抑制・ニューロンの過分極

疼痛伝達の抑制

というところまでつながってきます。

ただし、

「2 Hzを流せばβ-エンドルフィンが出るから痛みが取れる」

と一本の線で説明してしまうのは少し乱暴かもしれません。

特に周波数依存的なオピオイド放出については動物実験を中心とした基礎研究が多く、ヒト臨床へそのまま当てはめることはできません。

また、

なぜ神経系が2 Hzと100 Hzという刺激パターンの違いを識別し、それぞれ異なる神経化学反応へ変換しているのか

というところにもまだ分かっていない部分があります。

個人的にはここがすごく面白いです。

鍼通電をするときに、

「何Hzが効くのか?」

だけを見るのではなく、

「この周波数で、末梢神経から中枢へどのような時間パターンの情報を入れているのか?」

と考えてみる。

そうすると普段何気なく設定している「2 Hz」という数字の見え方が少し変わってくると思います。

次は100 Hzについて同じように掘り下げてみると2 Hzとの違いがさらに分かりやすくなると思います。

ですので次回(今回ちょい大変だったのでいつかは)100Hzもまとめていきたいと思います。

参考文献

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Chen XH, Han JS. All three types of opioid receptors in the spinal cord are important for 2/15 Hz electroacupuncture analgesia. European Journal of Pharmacology. 1992;211(2):203-210.

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Zhang R, Lao L, Ren K, Berman BM. Mechanisms of acupuncture-electroacupuncture on persistent pain. Anesthesiology. 2014;120(2):482-503.

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