鍼通電は「感覚レベル」と「運動レベル」で何が違う?―同じHzでも刺激している神経は同じなのか

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こんにちは!

陣内です。

今回の記事も基礎研究を踏まえて考察していますが研究結果をそのまま臨床に当てはめるのではなく私自身の臨床経験や解釈、仮説も含めて書いています。

そのため、内容をそのまま鵜呑みにするのではなくぜひご自身でも文献を確認し実際の臨床で検証しながら活用してください。

鍼通電療法について勉強すると2Hzや100Hzといった周波数に目が向くことが多いと思います。私自身もこれまで周波数とオピオイド受容体、下行性疼痛調節系との関係を中心に考えていましたし大事だと思っていました。

ただ実際に臨床で鍼通電をしていると周波数だけでは説明しにくいことがあります。

同じ2Hzでも患者さんが「少し感じる」と話す程度で通電する場合もあれば出力を上げて筋がはっきり収縮するところまで刺激する場合もあります。この二つは、単に「弱い刺激」と「強い刺激」の違いなのでしょうか。

この違いが気になり始めたのはピコリナを使い出力をmAの数値で確認するようになってからです。患者さんの感じ方や筋収縮と表示される数値を見比べるうちに「同じ周波数でも、身体に入っている刺激はどれくらい違うのだろう」と考えるようになりました。

筋収縮が出た瞬間にそれまで刺激されていた感覚神経から運動神経へ切り替わるわけではありません。反対に、筋収縮が見えないからといって、筋由来の求心性線維が電気的に刺激されていないとも言い切れません。

さらにどの軸索が興奮するかには刺激強度だけでなく、パルス幅、鍼と神経との距離、軸索径、電極配置なども関係します。

今回は「感覚レベル」と「運動レベル」を入り口にして、鍼通電によってどのような神経入力が生じる可能性があるのかを末梢神経刺激の基礎研究から整理してみます。

目次

「感覚レベル」「運動レベル」は何を見て決めているのか

感覚閾値は患者さんが刺激を感じ始める強度です。

運動閾値は筋収縮や筋応答が確認され始める強度を指します。

ただし運動閾値も測り方によって変わります。

筋収縮を目で確認するのか触診するのか筋電図で確認するのかによって検出できる反応は同じではありません。

またここで扱う運動閾値は末梢への電気刺激によるものです。経頭蓋磁気刺激などで用いられるmotor thresholdとは分けて考えます。

「感覚レベル」という言葉にも幅があります。

刺激を感じ始めたばかりの強度も筋収縮は起こらないもののかなり強く感じている刺激もどちらも感覚レベルと表現されることがあります。さらに痛みを感じ始める強度や本人が許容できる上限も別の指標です。

そのため研究や臨床で刺激条件を比較するなら感覚閾値付近なのか運動閾値未満の強い感覚刺激なのか運動閾値なのか運動閾値を十分に超えているのかは分けて考えた方が実態を捉えやすくなります。

「感じている」「筋が動いている」というのはあくまで外から確認できる反応です。それだけでどの神経線維が活動しているのかまで決まるわけではありません。

感覚神経は皮膚だけではない

鍼通電の説明では感覚レベルをAβ線維、運動レベルを運動神経に対応させたくなります。

しかし筋や腱にも中枢へ情報を送る求心性神経があります。ある出力を境に感覚神経から運動神経へ入れ替わるわけではありません。

神経線維主に扱う情報・役割
皮膚のAβ線維触圧覚や振動覚などの低閾値機械感覚
皮膚のAδ・C線維痛覚、温度覚など。ただしすべてが侵害受容線維ではない
筋のIa群筋紡錘一次終末からの入力。筋長とその変化に関係
筋のII群筋紡錘二次終末などからの入力
筋のIb群ゴルジ腱器官からの入力。筋張力に関係
筋のIII・IV群筋内の機械的・化学的環境などの情報
α運動神経錘外筋線維を収縮させる遠心性神経

Aα・Aβ・Aδ・Cという分類と、I〜IV群という分類には対応関係があります。一般にI群はAα、II群はAβ、III群はAδ、IV群はCに対応します。

ただし、分類の対象まで同じという意味ではありません。α運動神経も太い有髄軸索ですが、Ia・Ib群などの筋求心性線維とは別の神経です。

自然に起こる感覚入力と電気刺激では神経が興奮するまでの過程も違います。

例えば筋が伸ばされると筋紡錘が変形して求心性活動が生じます。一方、電気刺激では受容器を介さず心性軸索そのものが直接興奮することがあります。

つまり「筋が動いていない=筋からの神経入力がない」とは言えません。

筋収縮がなくても筋内を走る求心性軸索が電気的に刺激されている可能性があります。

出力を上げると太い神経から順番に興奮するのか

一般的な短い矩形パルスによる細胞外刺激では条件が同程度なら太い有髄軸索は細い軸索や無髄軸索より低い刺激強度で興奮しやすい傾向があります。
※こうやって刺激の強さやパルス幅と反応を結びつけて考えられるところが私が矩形波を好きな理由の一つなんですけどねw

ただし、ここからAβ、α運動軸索、Aδ、Cを一本の固定した順番に並べることはできません。

特にAβ線維とα運動軸索はいずれも太い有髄軸索です。どちらが先に閾値へ達するかは線維の種類だけでは決まらず、刺激電極との位置関係などにも左右されます。

例えば、鍼のすぐ近くを走る軸索と、そこから離れた軸索では条件が違います。さらに、軸索が鍼に対してどの方向へ走っているのか、もう一方の鍼がどこにあるのか、どのようなパルスを加えるのかによっても刺激条件は変わります。

鍼通電では、軸索径、鍼と軸索との距離、軸索の走行、電極配置、パルス幅をまとめて考える必要があります。

GrillとMortimerは末梢神経刺激のモデルと実験から、刺激パルスの長さによって神経刺激の選択性が変化することを示しています。短いパルスでは、電極から異なる距離にある線維同士の刺激閾値の差が大きくなる条件が示されました。

これは「短いパルスなら特定の太さの神経だけを刺激できる」という意味ではありません。電極から近い線維と遠い線維をどの程度刺激し分けられるかという、空間的な選択性にもパルス幅が関係するということです。

これは鍼通電そのものを調べた研究ではありませんが、「同じmAだから同じ神経を刺激している」と考えられない理由を理解するうえでは参考になります。

鍼通電で記録する「出力」は、あくまで装置側の条件です。その数字だけでは、鍼の周囲に存在するそれぞれの軸索がどの程度刺激されたのかまでは分かりません。

Noguchiらの研究では刺激強度によって求心性活動が変わっている

鍼通電に近い研究として興味深いのがNoguchiらの実験です。

麻酔ラットの後肢末端へ鍼通電を行い大腿二頭筋血流や血圧とともに伏在神経の求心性活動を調べています。

1mA未満の刺激ではII群線維が最大に興奮しIII群線維は部分的に興奮していました。さらに刺激強度を上げることで、III群・IV群を含む活動へ広がっていきました。

少なくともこの実験条件では刺激強度を変えることで中枢へ入る求心性情報の構成も変化しています。

ただし、ここから「○mAならAβ、○mAならAδ、○mAならC」とヒトの臨床へ換算することはできません。

この研究で測定された伏在神経は主として皮膚を支配する感覚神経です。筋のIa・Ib・II群やα運動神経まで含めた、鍼通電全般の動員順序を示した研究ではありません。また、ラットとヒトでは組織構造や神経までの距離、鍼配置なども異なります。

この結果は刺激強度の変化によって求心性入力の構成も変わり得ることを示す一つの材料として捉えるのがよいと思います。

パルス幅を見ずに「何mAだったか」だけを比較できない

神経を興奮させるために必要な電流の強さはパルスがどれくらい続くかによって変わります。

一般に非常に短いパルスで神経を興奮させるにはより大きな電流が必要です。反対にパルスを広くすると、より小さな電流でも神経を興奮させられるようになりますこれがstrength–duration関係です。

この関係を表す指標としてrheobaseとchronaxieがあります。

rheobaseは、刺激時間を十分に長くしたときに、神経を興奮させるために必要となる最小の電流強度です。

chronaxieは、そのrheobaseの2倍の電流強度で神経を興奮させるために必要な刺激時間です。

rheobaseが必要な電流強度を表すのに対して、chronaxieは刺激時間に対する神経の興奮特性を考える指標の一つです。ただし、chronaxieを見れば「この値なら感覚神経」「この値なら運動神経」と神経線維を簡単に判別できるわけではありません。

Mogyorosらは健常者20人を対象に感覚軸索と運動軸索のstrength–duration特性を調べています。

この研究で報告されているのはchronaxieそのものではなくWeissの式から求めたstrength–duration time constant(τSD)です。平均τSDは感覚軸索で約0.67ms、運動軸索で約0.46msでした。

この研究でいう「sensory」と「motor」は患者さんが刺激を感じ始めた強度と目で筋収縮を確認できた強度を比べたものではありません。複合感覚神経活動電位と複合筋活動電位を記録しそれぞれ最大反応の30%となる反応を得るために必要な刺激を追跡して軸索のstrength–duration特性を調べています。

この研究から示されるのはヒトの感覚軸索と運動軸索では刺激時間に対する興奮特性が同一ではないということです。臨床でいう「感覚レベル」と「運動レベル」の境界を直接測定した研究ではありません。

そのため「パルス幅0.5msだから感覚神経を選択的に刺激している」というようにパルス幅だけから刺激されている神経を逆算することもできません。実際の閾値には、鍼と神経との距離や電極配置なども関係します。

同じ1mAでも、パルス幅が違えば同じ刺激ではない

strength–duration関係を考えると、同じ1mAでもパルス幅が違えば同じ刺激条件とは言えないことが分かります。

矩形の定電流刺激で考えると、一相あたりの電荷量は、

電流 × 相持続時間

で計算できます。

例えば、

1mA × 0.1ms = 0.1μC

1mA × 0.5ms = 0.5μC

です。

どちらも装置上は1mAですが、一相あたりに電極を通過する電荷量は5倍違います。

もちろん、電荷量が5倍だから神経活動や治療効果も5倍になるという意味ではありません。神経の興奮は総電荷量だけで決まるものではないからです。

それでも「1mA」という数字だけを取り出して二つの刺激条件が同じと考えることはできません。

二相性波形ではさらに注意が必要です。「パルス幅100μs」と書かれていても、一相が100μsなのか、正相と負相を合わせて100μsなのかで意味が変わります。

正相と負相の電荷量が等しい電荷平衡型の二相性波形では理論上、1パルスあたりの正味の移動電荷量をゼロにできます。ただし、これは身体に電気刺激が加わっていないという意味ではありません。各相では電流が流れており、神経や筋の興奮に関係する電場が形成されます。

また、正相と負相の刺激作用が単純に打ち消し合うわけでもありません。神経の興奮は電荷量だけでなく、電流強度、相持続時間、波形、電極配置などにも左右されます。

研究や機器を比較するときには、周波数だけでなく、波形・相持続時間・振幅・極性まで確認した方がよいと思います。

筋収縮が出ると、電気刺激以外の入力が加わる

ここまでは主に、電気刺激によって軸索そのものが興奮する場合を考えてきました。

運動レベルまで刺激するとそこに筋収縮による影響が加わります。

神経支配が保たれた筋に臨床的な鍼通電で一般に用いられる短いパルス幅の刺激を加えた場合観察される筋収縮には運動軸索の興奮が大きく関与すると考えられます。

しかし、運動軸索が興奮したからといってそれまで起きていた感覚神経への電気刺激がなくなるわけではありません。

運動レベルでは、

①電気刺激によって求心性軸索そのものが興奮する入力

に加えて、

②筋収縮によって筋・腱・周囲組織が変化することで生じる求心性入力

が重なる可能性があります。

この二つは同じ神経入力としてまとめず分けて考える必要があります。

筋収縮が起きてもIa入力が必ず増えるわけではない

筋収縮が起こると「筋紡錘からIa入力が増える」と説明したくなりますがこれも単純ではありません。

筋紡錘は筋の長さやその長さがどのように変化しているかを検出する受容器です。筋が収縮したときに筋紡錘がどのような状態になるかによってその活動は変化します。筋収縮によって筋紡錘が緩めば、発射が低下する場合もあります。

McKeonとBurkeはヒトの単一求心性線維を記録し、少数の運動単位による単収縮でも、筋紡錘や腱器官の発射が変化することを示しています。

ただし、その反応は一様ではありませんでした。収縮する運動単位と受容器との位置関係などによって、反応の仕方が異なっています。

つまり、筋が収縮したという事実だけから「Ia・II群からの入力が増えた」と決めることはできません。

Ib入力についても同じです。

ゴルジ腱器官は筋張力と強く関係しますが、皮膚の上から見える筋のピクつきと、腱に実際に発生している張力は同じものではありません。同じように見える単収縮でも、刺激される運動単位、関節角度、筋長、外部負荷などによって張力は変わります。

そのため、「筋収縮あり=Ia・Ib入力が十分に増えた」と考えるのは少し飛躍があります。

III・IV群はさらに時間軸を考える必要がある

Kaufmanらはネコの筋で静的筋収縮を起こし、III・IV群筋求心性線維の活動を記録しています。

この実験では切断したventral rootの末梢側を電気刺激することで筋収縮を起こし、dorsal rootからIII・IV群求心性線維の活動を記録しています。

III・IV群を電気で直接刺激してその活動を調べた実験ではありません。

運動神経を刺激して筋収縮を起こし、それに伴ってIII・IV群がどのように反応するかを調べた実験です。

収縮に反応したのはIII群19本中12本、IV群19本中13本でした。その反応から、III群では筋収縮に伴う機械的作用、IV群の少なくとも一部では筋収縮に伴う代謝的変化の関与が示唆されています。

ただし、III群を機械受容、IV群を代謝受容と完全に分けられるわけではありません。III・IV群には、機械刺激や化学刺激などに対して異なる応答特性を持つ線維が含まれています。

さらに、静的筋収縮と臨床の低頻度鍼通電でみられる軽い単収縮では、収縮時間、発生張力、筋血流、代謝需要、疲労などが異なります。鍼通電で筋が少しピクついたというだけで、「III・IV群が十分に活動した」とは言えません。

III・IV群についても電気刺激によって軸索そのものが直接興奮する場合と、筋収縮後の機械的・化学的変化を受容して活動する場合は分けて考える必要があります。同じIII・IV群の活動でもそこへ至る経路は同じではありません。

運動レベルを「神経のセット」として考えない

ここまでの内容を踏まえると運動レベルを、

運動神経+Ia+Ib+II+III+IV

という一定の組み合わせで表すのは難しいことが分かります。

実際には電気刺激による直接的な軸索興奮に、筋収縮によって生じる二次的な求心性入力の変化が重なっていると考える方が自然です。

しかも、その二次入力は収縮の大きさだけでなく、収縮した運動単位の位置、筋長、張力、収縮時間、血流、代謝状態などによって変化します。

運動閾値は、「ここを超えた瞬間に刺激される神経の種類が変わる境界」というより、筋収縮という新しい反応を観察できるようになった境界と考えた方が実態に近いと思います。

表面電極刺激と比べると鍼通電の特徴が見えやすい

比較材料としてTENSも考えてみます。

TENSでも「感覚が分かる程度」「筋収縮が起こらない強度」といった設定が使われます。そのため、同じ100Hzで、どちらも感覚レベルなら、TENSと鍼通電でも同じような神経を刺激しているように感じるかもしれません。

しかし、両者には電極配置の違いがあります。

TENSでは電極を皮膚表面に配置します。一方、鍼通電では電極となる鍼を皮下組織や筋などの組織内に配置できます。

これを「TENSは浅い、鍼通電は深い」と単純に分けるのも適切ではありません。TENSでも末梢神経を刺激できますし鍼通電でも皮膚や皮下組織に分布する感覚神経が刺激されます。

両者の違いを考えるうえでは、刺激電極を神経に対してどこに配置できるかという視点が必要です。

鍼通電では、鍼が筋内神経枝や末梢神経に近い位置へ入ることがあります。その場合、皮膚表面から刺激する場合とは、電極と軸索との距離関係が変わります。

Ishimaruらは表面電極によるTENSと絶縁鍼・非絶縁鍼による電気刺激を比較し、皮膚、筋、骨膜などの実験的痛覚閾値を調べています。筋と骨膜で有意な痛覚閾値上昇が認められたのは、絶縁鍼による刺激でした。

この研究では100Hz、0.1msの対称性正負矩形波が用いられ、刺激強度はpain toleranceの直下に設定されています。本稿で扱っている感覚閾値と運動閾値を比較した研究ではありません。

また、実際の疼痛患者を対象にTENSと鍼通電の臨床効果を比較した研究でもないため、「鍼通電の方が深部に効く」と結論することもできません。電極をどこに配置し、どの組織を刺激対象とするかによって反応が変わる可能性を考える材料として捉える方がよいと思います。

同じことは運動閾値にも当てはまります。

表面電極から末梢神経を刺激して筋収縮が起こった場合と、筋内の運動軸索や神経枝に近い位置へ鍼が配置されて筋収縮が起こった場合では、どちらも「motor thresholdを超えた」と表現できても、そこに至る電気的条件は同じではありません。

例えば前回は3mAで筋収縮が始まり、今回は1.5mAで始まったとしても、それだけを見て「今回は運動神経が興奮しやすくなっている」とは判断できません。今回は鍼が運動軸索や筋内神経枝の近くに位置していたため、より小さな出力で筋収縮が起きた可能性もあります。

つまり、鍼通電で観察される運動閾値には神経そのものの興奮性だけでなく鍼と神経との位置関係や刺激波形も反映されています。

同じHz、同じ「感覚レベル」「運動レベル」という言葉を使っていても、同じ神経が同じように刺激されているとは限りません。TENSの研究結果を鍼通電へ当てはめる場合にも、電極と神経との位置関係や刺激条件の違いを考慮する必要があります。

運動レベルまで上げる方が効果は大きいのか

筋収縮が起きるほど強く刺激した方が治療効果も大きいと単純には言えません。

少なくとも、

神経が活動したこと

神経生理学的な指標が変化したこと

患者さんの痛みや機能が改善したこと

は別の段階です。

de Britoらは健常者の合谷への鍼通電で、10Hzと100Hz、感覚閾値と運動閾値を組み合わせて20分間刺激し、経頭蓋磁気刺激を用いて皮質脊髄路興奮性を評価しました。

対照群と比較して興奮性の増加が認められたのは、100Hz・感覚閾値の条件でした。少なくともこの研究では、筋収縮を伴わない感覚閾値での鍼通電でも、中枢神経系の指標に変化が認められています。

ただし、この研究は健常者を対象とした皮質興奮性の研究です。痛みのある患者で、感覚レベルと運動レベルの鎮痛効果を直接比較したものではありません。

したがって、「100Hzの感覚刺激が最も治療効果が高い」とも、「鎮痛に筋収縮は必要ない」とも、この研究だけから結論することはできません。

どの神経を刺激した可能性があるのかだけでなく、その研究が何を結果として測定したのかまで確認する必要があります。

定電流なら刺激条件をそろえられるのか

機器側の条件についても考えてみます。

定電流刺激では機器が対応できる範囲内で負荷が変化しても設定した電流を維持するように電圧を調整します。一方、定電圧刺激では設定した電圧を維持するため、負荷が変化すれば実際に流れる電流も変化します。

そのため「何mA流したか」を刺激条件として記録・比較するなら、定電流方式は整理しやすい面があります。

ピコリナは定電流出力方式を採用しています。一方、オームパルサーLFP-4000Aでは、メーカーの仕様に出力電圧がVp-pで示されています。機器によって出力の示し方が異なるため、数値を比較する際には、その値が何を表しているかを確認する必要があります。

ただし、定電流=同じ神経刺激ではありません。

同じ2mAでも鍼が神経の近くにある場合と離れている場合ではその軸索が受ける刺激条件は変わります。定電流装置が一定にしているのは、電極間を流れる電流です。特定のAβ線維や運動軸索に加わる刺激を一定にしているわけではありません。

また、鍼と組織の界面も単純な固定抵抗だけで表現できるものではありません。そのため定電圧機器についても、表示されているVだけを見て「神経にこれだけの刺激が加わった」と判断することはできません。

機器を比較するときには、出力単位だけでなく、制御方式・波形・相持続時間・周波数・出力値の定義・測定時の負荷条件なども確認した方がよいと思います。

臨床では設定と反応を一緒に記録する

臨床で「どの神経線維を刺激できたか」を完全に特定することはできません。だからこそ、実際に設定した刺激条件と患者さんに起きた反応を一緒に残しておくことが重要になります。

記録する項目残しておきたい内容
機器と出力機種、モード、制御方式、出力値・単位
時間的条件周波数、波形、相持続時間、通電時間
電極条件刺鍼部位、深度、鍼の組み合わせ、体位
感覚感覚閾値、実施中の感覚、痛み・不快感
筋応答運動閾値、収縮部位、程度、関節運動
治療反応痛み、動作、機能、直後反応、その後の経過

例えば同じ2Hzでも、「2Hz・10分」だけを記録するのと、「2Hz・10分、○mA、○μs、運動閾値をわずかに超える強度で対象筋に単収縮を確認」まで残すのでは、後から読み取れる情報が大きく違います。

患者さんが刺激に「慣れてきた」と話した場合もそれだけを理由に出力を上げる必要はありません。

感覚がどう変化したのか、筋収縮はどうなっているのか、痛みや不快感はないか。そして、何を目的としてその刺激強度にしているのか。そこを確認しながら調整する必要があります。

まとめ

感覚レベルと運動レベルは鍼通電に対して患者さんや筋がどのように反応したかを表す便利な言葉です。ただし、それ自体が活動している神経線維の種類を示しているわけではありません。

神経の興奮には刺激強度だけでなく、軸索径、鍼と神経との距離、軸索の走行、電極配置、波形、パルス幅などが関係します。

さらに運動閾値を超えて筋収縮が起これば電気刺激による直接的な神経活動に、筋・腱・周囲組織の変化による二次的な求心性入力が重なります。その内容も一定ではなく、筋収縮が見えたからIa入力が必ず増えるわけでも、III・IV群が十分に活動するわけでもありません。

TENSと比較してみても、同じ100Hz、同じ感覚レベルという条件だけで、同じ神経集団を同じように刺激しているとは言えません。電極の位置や神経との距離によって刺激条件が変わるからです。

そう考えると、鍼通電を「2Hzだから○○」「100Hzだから○○」だけで説明するのは少し足りないのだと思います。

周波数に加えて、どの強度で、どのパルス幅を使い、どこに鍼を置き、どのような感覚や筋収縮が起きたのか。

そこまで含めて初めてその鍼通電によってどのような神経入力が生じた可能性があるのかを考えることができます。

もちろん、臨床で活動している神経線維を一本ずつ確認することはできません。だからこそ設定値だけではなく、患者さんに起きた反応も一緒に記録していく。

周波数だけを見るのではなく、刺激条件と生体反応をセットで見ることが、鍼通電の設定を考えるうえで重要だと思います。

参考文献

Mogyoros I, Kiernan MC, Burke D. Strength-duration properties of human peripheral nerve. Brain. 1996;119(Pt 2):439–447. doi:10.1093/brain/119.2.439.

Grill WM Jr, Mortimer JT. The effect of stimulus pulse duration on selectivity of neural stimulation. IEEE Trans Biomed Eng. 1996;43(2):161–166. doi:10.1109/10.481985.

Noguchi E, Ohsawa H, Kobayashi S, Shimura M, Uchida S, Sato Y. The effect of electro-acupuncture stimulation on the muscle blood flow of the hindlimb in anesthetized rats. J Auton Nerv Syst. 1999;75(2–3):78–86. doi:10.1016/S0165-1838(98)00144-1.

McKeon B, Burke D. Muscle spindle discharge in response to contraction of single motor units. J Neurophysiol. 1983;49(2):291–302. doi:10.1152/jn.1983.49.2.291.

Kaufman MP, Longhurst JC, Rybicki KJ, Wallach JH, Mitchell JH. Effects of static muscular contraction on impulse activity of groups III and IV afferents in cats. J Appl Physiol Respir Environ Exerc Physiol. 1983;55(1 Pt 1):105–112. doi:10.1152/jappl.1983.55.1.105.

de Brito FX, Luz-Santos C, Camatti JR, de Souza da Fonseca RJ, Suzarth G, Moraes LMC, da Silva ML, da Silva JRT, Vercelino R, Sá KN, Zana Y, Baptista AF. Electroacupuncture modulates cortical excitability in a manner dependent on the parameters used. Acupunct Med. 2022;40(2):178–185. doi:10.1177/09645284211057560.

Ishimaru K, Kawakita K, Sakita M. Analgesic effects induced by TENS and electroacupuncture with different types of stimulating electrodes on deep tissues in human subjects. Pain. 1995;63(2):181–187. doi:10.1016/0304-3959(95)00030-V.

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