鍼に微弱電流を流す意味とは?パッド通電との違いを電気・生理学から考える

※本ブログはGoogleアドセンス広告を利用しています

こんにちは!

陣内です。

今回は私がおこなっている鍼+微弱電流について考えていきます。

昔鍼+微弱電流についてnoteでまとめていますが基本はこちらnoteが大前提です。

今回は少し違う切り口で考えていきます。

note(ノート)
微弱電流+鍼治療|陣内由彦 こんにちは!陣内(@jin_anzu)です。 twitterで公開してご好評をいただいているマイクロカレント+鍼治療の現在私がおこなっているものすべてをご紹介していきたいと思い...

ちなみにこちらは200部以上売れてめちゃくちゃ反響のいい記事です。

自画自賛ではないですが鍼+微弱電流についてはいい記事だと思います。

記事については実技的なことも多いので是非参考にされてください。

今回はまた違った切り口から攻めていきたいと思います。

ブログの更新情報などはInstagramXの私のアカウントでしていますのでフォローしてもらえるとめちゃくちゃ喜びます(笑)

ではよろしくお願いいたします。

一般的ないわゆる鍼通電では末梢神経への刺激や筋収縮、鎮痛などを目的として感覚閾値あるいは運動閾値を超える電気刺激を使用することがあります。

一方、今回考えてみたいのが、

「鍼にマイクロカレント(微弱電流)を流すことに、どのような意味があるのか?」

という問題です。

マイクロカレントは一般的なTENSやNMESとは異なり、μA(マイクロアンペア)レベルの非常に小さな電流を使用します。

うちも含め整骨院やスポーツ現場ではパッド電極を使用して通電することが多いと思います。

では、そのパッドを鍼に置き換えると何が変わるのでしょうか。

単純に、

「鍼だから深いところまで電気が届く」

という説明だけでは不十分です。

重要なのは、

電極をどこに置くのか
電極の大きさがどのくらいなのか
どのような電場・電流密度が形成されるのか

という「電気治療としての違い」だと私は考えています。

今回は、

マイクロカレントの基礎 → 現在の考えれるエビデンス → 鍼電極とパッド電極の違い → 電流密度 → 鍼+パッド → 安全性 → スポーツ障害への臨床的な考え方

という流れで、少し深掘りしてみたいと思います。

目次

1.そもそもマイクロカレントとは?

マイクロカレント(Microcurrent Electrical Stimulation:MENS)はその名前の通りμA単位の非常に弱い電流を利用する電気刺激療法です。

一般的なTENSやNMESでは末梢神経を脱分極させることで感覚刺激を起こしたり、運動神経を刺激して筋収縮を起こしたりします。

それに対してマイクロカレントでは一般的には感覚閾値より低い非常に弱い電流が使用されます。

患者さんからすると、

「何も感じないくらい弱い電気を流して意味があるの?」

と思うかもしれません。

2.基礎研究からわかる作用

ここでよく引用されるのが1982年にChengらが発表した研究です。

Chengらはラット皮膚を用いて微弱な直流電気刺激が細胞活動へ与える影響を調べました。

その結果、10〜1000μAの範囲でATP濃度の増加やタンパク質へのアミノ酸取り込みの増加が報告され、100〜750μAでは細胞膜を介したアミノ酸輸送も促進されました。

この研究から、

微弱な電流でもATP代謝、アミノ酸輸送、タンパク質合成に関連する細胞活動へ影響する可能性がある

と考えられるようになりました。

ただし注意しなければならないことがあります。

これは、

ATP産生

アミノ酸輸送

タンパク質合成

組織修復

という一本道の反応が証明された研究ではありません。

さらに対象はヒトの肉離れや腱障害ではなくラット皮膚を用いた基礎実験です。

したがって、

「500μAを流せばヒトの筋肉でもATPが増えて肉離れが早く治る」

というところまで話を広げることはできません。

それでも「感覚を起こさないほど小さな電流でも、生体組織へ何らかの影響を与える可能性がある

ことを示した研究として現在でも非常によく引用されています。

3.現在のマイクロカレントのエビデンスは?

では、実際の人間ではどうなのでしょうか。

ここは少し臨床に置き換えるのには慎重に考える必要があります。

微弱電流について比較的臨床研究が行われているのは皮膚の創傷治癒領域です。

2022年にJournal of Tissue Viabilityに掲載されたメタ解析では8件のランダム化比較試験(RCT)がレビューされ、そのうち7研究・337人が定量解析に含まれました。

標準的な創傷管理にマイクロカレントを追加すると標準管理単独と比較して、

・創傷面積の減少
・治癒期間の短縮
・疼痛の軽減

などが報告されています。

一方で完全治癒した創傷数については明確な差が確認されずアウトカムによってエビデンスの確実性にも差があります。

さらに2026年に発表されたシステマティックレビューでは、2012〜2024年に発表された11研究が検討されました。

こちらでも、

微弱電流は創傷治癒や瘢痕形成を改善する可能性がある

とされています。

しかし同時に、

・対象疾患が統一されていない
・電流量が異なる
・周波数が異なる
・刺激時間が異なる
・評価方法が異なる
・研究規模が小さい

といった問題も指摘されています。

つまり現在の位置づけとしては、

「微弱電流には組織修復へ影響する可能性を示す研究がある。しかし、何μA・何Hz・何分が最適なのかまでは確立していない」

というところでしょう。

そしてもう一つ重要なことがあります。

これらの臨床エビデンスの中心は皮膚創傷です。

したがって、

皮膚創傷で効果がある=肉離れ・腱障害・靱帯損傷も早く治る

とは言えません。

スポーツ障害への応用を考える場合この部分はきちんと分けて考える必要があります。

4.ではマイクロカレントを「鍼」に流す意味はあるのか?

ここからが今回の本題です。

通常のマイクロカレントでは皮膚表面へパッドを貼って電気を流します。

これを鍼電極へ変更すると、何が変わるのでしょうか。

私はここを、

「鍼だから特殊な電気になる」

のではなく、

「電極の位置・大きさ・形状が変わる」

と考えた方が理解しやすいと思っています。

流している電流が同じでも電極条件が変われば組織内に形成される電場や電流密度も変化します。

ここが鍼+微弱電流を考えるうえで非常に重要です。

5.違い① 深部に「電極そのもの」を配置できる

パッド電極の場合、

パッド

皮膚

皮下組織

筋膜

筋肉

という形になります。

皮膚、特に角質層は電気的インピーダンスに大きく関係します。

さらに、

・皮膚の乾燥状態
・発汗
・電極ゲル
・パッドの密着状態
・電極面積

などによっても条件は変化します。

一方、鍼を筋肉まで刺入して電極として使用した場合、



筋・筋膜などの組織

という形で、電極-組織界面そのものを体内へ移動させることができます。

ここで大切なのは、

「鍼を使うと電気が深部まで届く」

という表現ではありません。

より正確には、

「電流を注入・回収する電極そのものを深部へ配置できる」

ということです。

これは似ているようで意味がかなり違います。

6.違い② 電流密度が大きく変わる可能性

個人的に、鍼+微弱電流を考えるうえで最も面白いと思っているのが「電流密度」です。

基本的な電気学では、

電流密度 J = 電流 I ÷ 面積 A

と考えることができます。

例えば同じ200μAでも、

大きなパッドから200μAを流す場合と、

非常に細い鍼から200μAを流す場合では、

電極近傍の電流密度は同じではありません。

鍼はパッドと比較して組織との接触面積が非常に小さいからです。

つまり、

200μAのパッド通電と200μAの鍼通電は機器に表示されている数字が同じでも、同じ刺激条件とは言えません。

ただしここにも注意が必要です。

人体内部の電流密度を単純に、

「200μA÷鍼の面積」

だけで計算することはできません。

実際の電流分布は、

・電極形状
・鍼の刺入深度
・鍼間距離
・組織の導電率
・脂肪の厚さ
・筋線維の方向
・血液
・骨
・周波数
・波形

などによって変化します。

さらに鍼電極では、鍼全体で電流密度が均一になるわけではなく電流密度は鍼表面で均一とは限らず、電極形状や周囲組織の電気的特性によって、鍼先端付近などで局所的に高くなる可能性があります。

これは針のような細長い導体では、電極表面の電流密度 JJ は均一になりません。まっすぐな鍼体の途中では、周囲組織へ主に横方向へ電流が出入りしますが、先端では横方向だけでなく前方を含む三次元方向へ電流が広がれます。さらに先端は曲率が大きく、電場が集中しやすいため、局所的な電場 EE が強くなります。組織内では概念的にJ=σEJ=\sigma E

JJ:電流密度、σ\sigma:組織の導電率、EE:電場)

なので、同じ組織なら電場が強い場所ほど電流密度も高くなりやすいわけです。

イメージとしては、平らな大きいパッドでは電流が広い面から分散して出ていくのに対して、細い鍼では電場が鍼周囲に集中し、特に先端や形状が急激に変わる部分で集中しやすいと考えると分かりやすいです。

ただし、ここで重要なのが、「鍼先だけから電流が流れる」わけではないことです。絶縁されていない一般的な鍼なら、組織と接触している鍼体(シャフト)からも電流は出入りします。そのうえで、形状の影響によって先端付近の局所電流密度が相対的に高くなる可能性があります。

つまり、

「鍼は小さなパッド」ではありません。

組織内に置かれる特殊な形状の電極として考える必要があります。

7.だからといって「電流密度が高い=効果が高い」ではない

ここは非常に重要です。

鍼は電極面積が小さい。

だから局所電流密度が高くなる可能性がある。

ここまでは電気学的に理解できます。

しかし、

電流密度が高い=組織修復効果が高い

ということにはなりません。

そもそも組織修復に最適な局所電流密度がどの程度なのか十分には分かっていません。

さらに局所的な電流密度が過度に高くなれば、私が期待している「微弱電流刺激」とは異なる電気化学的作用が生じる可能性もあります。

したがって、

鍼だから少ない電流でも強く効く

という表現も現時点では避けた方がいいと思います。

8.違い③ 深部の損傷領域近傍に電極を配置できる

例えばハムストリングの肉離れを考えてみます。

超音波画像などによって損傷部位がある程度確認できている場合、

近位側の鍼

損傷領域

遠位側の鍼

という配置を考えることができます。

例えば、

・大腿二頭筋
・半腱様筋
・半膜様筋
・筋腱移行部

などの損傷です。

ここでのポイントは、

「損傷部へ一直線に電流を流す」ことではありません。

人体は三次元的な導体です。

筋肉、脂肪、筋膜、血液、骨などによって導電率が異なるため、電流は二本の鍼の間だけを一本の線のように流れるわけではありません。

周囲組織へ三次元的に分布します。

したがって、

「損傷部を電流経路に置く」

というより、

「損傷領域近傍の電場・電流密度分布を電極配置によって変化させる」

と考えた方が正確だと思います。

9.鍼刺激そのものによる作用も忘れてはいけない

鍼マイクロカレントを考える場合、もう一つ避けて通れない問題があります。

それは、

鍼を刺すこと自体が刺激になる

ということです。

鍼刺激では機械的刺激によって、

・感覚神経
・局所循環
・結合組織
・局所の化学的環境

などへ変化が生じる可能性があります。

一般的な鍼通電についても、特に鎮痛作用については長い研究の歴史があります。

したがって鍼マイクロカレントでは、

鍼による機械刺激

微弱電流による電気刺激

という二つの刺激が同時に存在します。

これはパッド式マイクロカレントにはない特徴です。

ただし、エビテンス的に

「鍼+マイクロカレントには相乗効果がある」

とまでは現時点では言えません。

10.パッド式と鍼式を比較するとどうなる?

大まかに整理すると次のようになります。

項目パッド電極鍼電極
電極位置皮膚表面皮下・筋などへ配置可能
電極面積比較的大きい非常に小さい
電極-組織界面皮膚表面深部組織
電流分布表面から広い領域へ分布電極近傍の電流密度が高くなり得る
深部病変表面から刺激病変近傍へ電極配置可能
広範囲刺激得意比較的不向き
局所ターゲット電極配置の自由度が高い
侵襲性低いあり
出血・感染低リスク刺鍼に伴うリスクあり
再現性比較的高い刺鍼位置・深度などに左右される
鍼による機械刺激なしあり

こうして見ると、

「鍼の方がパッドより優れている」

という話ではありません。

それぞれ得意な使い方が違うと考えた方がよいでしょう。

11.例えば肉離れならどう考える?

ハムストリングの肉離れを例にしてみます。

損傷部位が比較的限局していて、超音波画像などによって位置を確認できる場合、鍼電極は非常に興味深い選択肢になります。

例えば損傷部の、

近位・遠位

あるいは、

内側・外側

などに電極を配置して、損傷領域近傍の電場を変化させるという考え方です。

ただし私は、

「損傷部そのものへ刺せば効果が高い」

とは考えていません。

特に急性期の損傷組織に対して、直接的な機械刺激を追加する必要性については別の問題として考える必要があります。

つまり、

病変そのものへ刺鍼すること

と、

病変周囲へ電極を配置すること

は分けて考えた方がよいでしょう。

12.逆にパッドの方が合理的な場合もある

例えば、

・大腿四頭筋全体の疲労
・下腿全体
・広範囲の筋疲労
・運動後のリカバリー
・広い範囲を対象とした刺激

などでは、パッドの方が扱いやすいでしょう。

鍼電極は局所ターゲットへの配置自由度が高い反面、広い範囲を均一にカバーする目的には向いていません。

そのため臨床的には、

限局したターゲット
→ 鍼電極を検討

広範囲
→ パッド電極を検討

という使い分けは一つの考え方になります。

もちろん、これも治療効果の優劣が証明されているという意味ではありません。

13.実は「鍼+大型パッド」という方法も面白い

ここでもう一つ面白い方法があります。

「鍼 vs パッド」

という二択にする必要はありません。

例えば、

鍼(小電極)

ターゲット領域

大型パッド(分散電極)

という配置です。(ちなみにメーカー的にはこのような使い方は推奨されていません

これは電気学的にも興味深い方法です。

小さな電極と大きな電極を組み合わせると、小電極側では電流密度が比較的高くなり、大きな電極側では電流を広く分散させることができます。

いわゆる、

active electrode(作用電極)

indifferent / dispersive electrode(不関・分散電極)

という考え方に近いものです。

つまり、

鍼側でターゲットを設定し、大型パッド側で電流を分散させる

という電極配置です。

個人的には、

「鍼2本で挟む」

だけではなく、

「鍼1本+大型パッド」

という方法も、鍼マイクロカレントを考えるうえで非常に興味深いと思っています。

ただし、ここでも、

電気学的に合理性があること

と、

臨床効果が証明されていること

は別です。

14.「マイクロカレントだから安全」とは限らない

これはかなり重要なところです。

μAという数字を見ると、

「ものすごく弱い電流だから安全だろう」

と思ってしまいがちです。

しかし鍼は非常に小さな金属電極です。

そのため考えなければならないのは単なる電流値だけではありません。

重要なのは、

・電流強度
・波形
・周波数
・パルス幅
・刺激時間
・極性
・電極面積
・鍼の材質
・電荷量
・電荷平衡(charge balance)

などです。

特に直流成分を含む波形では、電極-組織界面で電気化学反応が起こる可能性があります。

単相性波形や、正負の電荷が十分に相殺されない非対称波形では電気分解や電極界面での化学的変化についても考える必要があります。

一方、対称性の高い二相性・電荷平衡波形では正味の直流成分を小さくすることができます。

つまり、

「何μAか」だけを見て安全性を判断することはできません。

鍼通電では、

電流値 × 波形 × 電荷量 × 電極面積 × 時間

をセットで考える必要があります。

そして何より、使用している機器が鍼電極への通電を想定しているのか、メーカーの使用条件を確認する必要があります。

15.似た治療として「経皮的マイクロエレクトロリシス」がある

実は、

「針を介してμAレベルの電流を組織へ流す」

という考え方自体が完全に新しいわけではありません。

海外では、

Percutaneous Microelectrolysis(経皮的マイクロエレクトロリシス:MEP)

と呼ばれる治療法について研究されています。

これは鍼様の針を組織へ刺入しμAレベルの電流を流す方法です。

ただし、ここは非常に重要です。

MEPでは主にガルバニック直流(galvanic direct current)による電気化学作用を利用する考え方があります。

したがって、

一般的なマイクロカレント機器を鍼へ接続する方法

と、

MEP

は同じものとして扱うべきではありません。

μAという電流値だけを見れば似ていますが、

直流なのか
二相性なのか
電荷平衡されているのか
どの程度の電荷量なのか

によって、生体へ与える作用は変わる可能性があります。

ここは「微弱電流」という言葉だけで一括りにしない方がよいでしょう。

16.ここまで書いて、あえて批判的に考えてみる

ここまで読むと、

「だったらパッドより鍼にマイクロカレントを流した方がいいのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、私はそこまで単純ではないと思っています。

最大の問題は、

「鍼マイクロカレントがパッド式マイクロカレントより優れている」

という直接的な臨床エビデンスが十分にないことです。

Chengらの研究はラット皮膚を使った基礎研究です。

マイクロカレントの比較的まとまった臨床研究も皮膚創傷が中心です。

それを、

肉離れ

腱障害

筋腱移行部損傷

靱帯損傷

へそのまま当てはめることはできません。

さらに、

「鍼だから深部へ効く」

という説明も科学的には不十分です。

重要なのは鍼という名称ではなく、

電極位置・電極形状・電極間距離・組織導電率・波形・周波数・電流値

などによって形成される電場です。

17.もう一つの問題は「鍼そのものが効いている可能性」

仮に、

「鍼+マイクロカレント」

を行った肉離れ患者の疼痛や機能が改善したとします。

しかし、それだけでは、

鍼が効いたのか?

マイクロカレントが効いたのか?

自然経過なのか?

両者の組み合わせに意味があったのか?

分かりません。

本当に鍼電極にする意味を調べるのであれば、

①鍼のみ
②パッド式マイクロカレント
③鍼+マイクロカレント
④偽刺激または標準治療

などを比較する必要があります。

さらに可能であれば、

電流
周波数
波形
刺激時間

などを統一する必要があります。

こうした研究が行われて初めて、

「鍼を電極にすること自体に臨床的な意味がある」

と言えるようになります。

18.それでも鍼マイクロカレントは面白い

ここまでかなり批判的に書いてきました。

それでも私は、鍼マイクロカレントは研究する価値のある方法だと思っています。

理由は、

「表面から電気を流す」という従来の電気治療とは異なり、治療者が電極位置を三次元的に設定できる

からです。

これはかなり大きな違いです。

特に、

・肉離れ
・筋腱移行部損傷
・深部筋損傷
・一部の腱障害

など、ターゲットとなる組織が比較的明確なスポーツ障害では興味深い考え方です。

ただし現時点では、

「効果が確立された治療方法」

というより、

「電気学的に興味深い特徴を持ち、今後臨床的に検証する価値のある方法」

という位置づけが適切ではないでしょうか。

19.現在分かっていること・分かっていないこと

最後に整理してみます。

比較的分かっていること

マイクロカレントは、基礎研究でATP代謝やアミノ酸輸送などへの影響が報告されています。

また皮膚創傷については、RCTやメタ解析など一定の臨床研究があります。

電気学的に考えて妥当なこと

鍼電極とパッド電極では、

・電極位置
・電極面積
・電極形状
・電極-組織界面
・局所電流密度

が異なります。

したがって同じ200μAでも、同じ電気刺激とは言えません。

理論的には考えられるがまだ十分検証されていないこと

深部損傷近傍へ鍼電極を配置することで、表面パッドとは異なる電場・電流密度分布を形成できる可能性があります。

現時点では言えないこと

「鍼マイクロカレントの方がパッド式より肉離れ・腱障害・靱帯損傷を早く治せる」

という結論です。

ここは今後の研究を待つ必要があります。

まとめ

今回はかなり好き勝手書いていきましたw

マイクロカレントはμAレベルの非常に弱い電流を利用する電気刺激療法です。

基礎研究ではATP代謝、アミノ酸輸送、タンパク質合成に関連する細胞活動への影響が報告され、皮膚創傷領域では一定の臨床研究も存在します。

これを鍼電極へ応用すると、

①深部に電極そのものを配置できる

②パッドとは電極面積・形状が大きく異なる

③電極近傍の電流密度が高くなる可能性がある

④病変近傍へ三次元的に電極を配置できる

⑤鍼による機械刺激も同時に加わる

という特徴が考えられます。

さらに、

「鍼+大型パッド」

という電極配置も電気学的には興味深い方法です。

一方で、

電流密度が高い=治療効果が高い

ではありません。

また、

鍼マイクロカレントの方がパッド式マイクロカレントより優れている

という直接的な臨床エビデンスも、現時点では十分ではありません。

個人的には、鍼マイクロカレントの一番面白いところは、

「鍼だから効く」ことではなく、「電極を体内へ配置することで、表面電極とは異なる電場・電流密度分布を作れる可能性がある」

ことだと思っています。

これは鍼灸師だからこそできる電気刺激療法の考え方でもあります。

今後、

鍼のみ vs パッド式マイクロカレント vs 鍼マイクロカレント

さらに、

鍼-鍼 vs 鍼-大型パッド

といった比較研究が出てくれば、かなり面白い分野になってくるのではないでしょうか。

参考文献

  1. Cheng N, Van Hoof H, Bockx E, et al. The effects of electric currents on ATP generation, protein synthesis, and membrane transport in rat skin. Clin Orthop Relat Res. 1982;(171):264-272. PMID: 7140077.
  2. Avendaño-Coy J, López-Muñoz P, Serrano-Muñoz D, et al. Electrical microcurrent stimulation therapy for wound healing: A meta-analysis of randomized clinical trials. J Tissue Viability. 2022;31(2):268-277. doi:10.1016/j.jtv.2021.12.002. PMID: 34903470.
  3. Wadhwa K, Singh AK, Bhatnagar RB, Kapoor K. Role of Microcurrent Electrical Stimulation in Tissue Healing and Scar Modulation: A Systematic Review. Int J Low Extrem Wounds. Published online July 14, 2026. doi:10.1177/15347346261469606.
  4. Hobbs B. The application of electricity to acupuncture needles: a review of the current literature and research with a brief outline of the principles involved. Complement Ther Med. 1994;2(1):36-40. doi:10.1016/0965-2299(94)90157-0.

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