物理療法ってそもそも何?―電気・超音波・温熱は何を目的に使うのか

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こんにちは!陣内です。今回の記事は以前Instagramでアンケートをとった際物理療法初級者向けの記事もほしいとのことでしたので第1回目となります。

初級者向けの記事は、およそ30記事程度になると予想していますが、どこまで増えるかは分かりません(笑)。よろしくお願いします。

今回の記事も基礎研究を踏まえて考察していますが、研究結果をそのまま臨床に当てはめるのではなく、私自身の臨床経験や解釈、仮説も含めて整理しています。内容を鵜呑みにせず、ご自身でも調べ、検証しながら臨床に活かしていただければと思います。

「とりあえず電気治療をしておこう」

臨床で、こう考えたことはないでしょうか。痛いところに電気治療をする、こわばったところを温める、ケガをしたところに超音波を当てる。身近な治療ですが、患者さんから「これは何のためですか?」と聞かれたとき、どのように説明しているでしょうか。

「痛みを和らげるためです」「血流を良くするためです」「治りを早くするためです」。

物理療法について説明するとき、こうした言葉をよく耳にします。

私自身も鍼通電や微弱電流、超音波、ラジオ波などを臨床で使用しています。これらは身体に加える物理エネルギーも、その作用機序も異なります。

しかし、セミナーなどで先生方とお話ししていると、それぞれの治療について似たような目的で説明されることがあります。

もちろん、異なる物理療法でも治療目的が共通することはあります。ただ、同じ目的で使用するからといって、身体に起こる反応まで同じとは限りません。

電気、音波、熱では、身体に加えるものが違います。同じ電気でも、少し刺激を感じる程度と、筋肉が収縮する程度では、起きている反応が違います。物理療法を理解するには、エネルギーの種類を知ったうえで、そのエネルギーが身体にどう加わり、何を変えるのかまで考える必要があります。

今回はそのあたりを少し掘り下げてみます。

今回は一つのエネルギーに対して掘り下げるのではなく総論的なものになります。

目次

物理療法は物理的な刺激に対する身体の反応を利用する

物理療法は、電気、熱、音波、光などの物理的な手段を治療に利用するものです。

この記事ではまず電気・音波・熱を入口に考えます。電気刺激では電流を利用します。超音波では、人の耳には聞こえない高い周波数の音波によって組織にエネルギーを伝えます。ホットパックなどでは、身体の外から熱を伝えます。

身体に加える刺激身体で起こる反応の例
電気刺激神経の興奮やそれに伴う筋収縮
音波による機械的な刺激組織への機械的な作用やエネルギーの吸収に伴う温度上昇
外から加える熱熱の移動に伴う組織温度の変化

これは基本を理解するための整理です。一つの刺激が一つの反応だけを起こすという意味ではありません。

例えば、超音波では音波を加えますがそのエネルギーの一部が組織に吸収されることで熱も生じます。

「音波を使うこと」と「温度が上がること」は両立します。温熱という言葉も外から熱を伝える方法と別のエネルギーを利用して組織内で熱を生じさせる方法を含みます。

身体に何を加えたかとその結果として何が起きたかは分けて見る必要があるのです。

電気という種類だけではどんな刺激かは分からない

例えば、膝に痛みがある患者さんに電気治療をするとします。歩くときの痛みを和らげたいのか太ももに力を入れる練習を補助したいのかで狙う反応は変わります。

痛みの軽減を目的とする方法の一つがTENS(経皮的電気神経刺激)です。一方、NMES(神経筋電気刺激)は主に運動神経を刺激して筋収縮を起こし筋機能の改善などを目指して使われます。

どちらも電気を利用しますが電気だから同じことをしているわけではありません。

周波数、刺激の強さ、一回の刺激の長さ、波形、電極の位置などを組み合わせることで身体に加わる刺激が変わります。

よく目にする「50Hz」「100Hz」といった数字もそれだけでは治療の内容を説明できません。例えば、パルスの繰り返しを表す50Hzであれば1秒間に50回繰り返すという意味です。何回繰り返すかが分かっても、一回の刺激がどの程度の強さでどのくらい続くかまでは分かりません。

同じ周波数でも刺激を感じる程度と、筋肉がはっきり収縮する程度では、起きている反応が違います。さらに、筋収縮が起きたとしても、狙った筋肉がどの程度の力を出しているかは別に確認する必要があります。

微弱電流のように通常は明確な筋収縮を目的としない電気刺激もあります。鍼通電では、皮膚の上にパッドを貼る場合とは電極の位置や刺激が加わる場所が異なります。電気というエネルギーの種類は共通していても、そこから治療の目的や作用を一つに決めることはできません。

超音波を加えることと組織が温まること

超音波について勉強すると、「連続波は温熱、パルスは非温熱」という説明に出会うことがあります。

大まかな整理としては分かりやすいのですが、音波が断続的に出ていることと、組織の温度が上がらないことは、同じではありません。

Galloらはヒトの筋温を測定し次の条件を比較しています。

条件周波数・強度・時間
パルス超音波3MHz・1.0W/cm²・Duty 50%・10分
連続超音波3MHz・0.5W/cm²・Duty 100%・10分

Dutyは、超音波が出ている時間の割合です。この例では、パルスは半分の時間だけ出力し、連続は出力し続けます。ただ、出力している間の強度はパルスの方が高く、時間平均の強度は、どちらも0.5W/cm²になります。

この条件では、両方で平均約2.8℃の筋温上昇が報告され、温度上昇に有意な差は認められませんでした。パルスという刺激の出し方だけでは、温まるかどうかを判断できないことが分かります。

一方、時間平均の強度が同じだからといって、すべての反応まで同じとは言えません。連続とパルスでは、出力している間の強度や、刺激が途切れる時間が異なります。この研究で比較したのは筋温であり、痛みや組織の修復まで同じだったことを示しているわけではありません。

超音波では、温度上昇だけでは説明できない機械的な作用も研究されています。「温まったか」と「音波によってどんな作用が起きたか」は、完全に同じ問いではないのです。

初めは「パルスか連続か」という区分から覚えてもよいと思います。その先では、強度、周波数、時間、対象の組織まで含めて、身体に加わる刺激を考える必要があります。

設定した刺激と組織が受けた刺激には違いがある

物理エネルギーの種類と設定が分かれば身体で起きることまで分かるのでしょうか。

実際には、身体にどう伝わったかという問題が残ります。

例えば外から熱を加える場合、熱源の温度だけでなく、間に挟むタオル、接触の状態、加温する時間によって、熱の伝わり方が変わります。患者さんが「温かい」と感じたことは大切な情報ですがそれだけで深部の筋肉まで狙いどおりに温まったとは判断できません。

超音波を加える場合も強度の数字に加えて、当てる範囲や時間、対象の組織などを考えます。

ヒトの筋温を測定した研究でも温度の上がり方は周波数や強度によって異なっています。

電気刺激では、電極の位置などによって、刺激を強く感じるのに狙った筋肉の収縮が十分に得られない場合もあります。設定を記録することに加えて、治療中の反応を確認する理由がここにあります。

人工膝関節全置換術後の患者さんを対象とした研究では、電気刺激で生じた筋収縮の力を測定し、その大きさと、その後の筋力回復との関連を調べています。より大きな力が生じていた人ほど、筋力回復が良好だったという関連が報告されています。

特定の術後患者さんを対象とした分析なので、これをすべての電気治療に当てはめることはできません。それでも、筋力の改善を狙う場合に、電流の設定値だけでなく、実際に得られた筋収縮も見るという考え方は参考になります。

同じ「10分」でも、どこに、どのような刺激を加え、どんな反応が起きたかは同じとは限りません。施術時間だけをそろえて、同じ治療を再現したことにはならないのです。

刺激の強さと反応をみる時間

身体に刺激を加えるときは「どのくらい強くするか」に目が向きます。ただ、何を目的とするかによって、確かめるべき反応は変わります。

筋収縮を目的とした電気刺激ならどの程度の収縮が得られたかを見ます。痛みの軽減が目的なら、痛みがどう変わったかを確認します。温熱療法なら患者さんの感覚や皮膚の状態を確認しながら狙っていた痛みやこわばりの変化も評価します。強く感じること自体を共通の効果判定にはできません。

さらに、身体の反応はいつ確認するかによっても違って見えます。

先ほどの術後患者さんの研究では電気刺激の直後に筋疲労も認められています。

数週間後の筋力回復を目指して使う刺激でもその直後には発揮できる力が低下する場合があるのです。

このため、施術直後の変化と、繰り返し使用したあとの変化は分けて評価します。直後に筋力が上がらなかったことだけでその後の効果まで否定はできません。反対に直後に変化がなかったことを将来は効果が出るという根拠にすることもできません。

どんな刺激を、どの程度加えるか。そして、何を、いつ確認するか。この二つを合わせて考えないと、刺激の量と結果の関係を捉えにくくなります。

身体に作用したことと症状が改善したこと

電気刺激で筋肉が収縮した、音波を加えて筋温が上がった。こうした反応を確かめることは治療の内容を理解するうえで必要です。ただ、反応が起きたことと、患者さんの困りごとが改善したことは同じではありません。

私は次のように分けて考えると説明が整理しやすいと思います。

分けて考えたいこと例
加えた刺激電気、超音波、熱と、その強さ・時間・位置
身体で確認できた反応筋収縮、組織温度の上昇など
患者さんにとっての結果痛み、筋力、動作、生活上の困りごとの変化

例えば、「血流を良くする」という説明にも、この区別が必要です。血流が変化するかという話とその変化によって痛みや腫れが改善するかという話は別です。温熱療法のあとに痛みが軽減したとしてもその結果だけで「血流が良くなったから」とは判断できません。

腫れについても、「循環が良くなる」という言葉だけでは組織にたまった水分がどう変化したのかまでは分かりません。血流と組織から水分が回収される過程を同じ意味で扱わない方がよいと思います。

一つの作用が研究されているからといって、痛み、筋力、腫れ、組織の修復のすべてに有効だとは言えません。それぞれについて何が確認されているかを見る必要があります。

痛みが減ったという結果から、どこまで説明できるのか

物理療法のあとに痛みが減ることは患者さんにとって意味のある変化です。

動きやすくなれば、必要な運動に取り組むきっかけにもなります。(ここ大事!)

ただその場で痛みが減ったことから損傷した組織の強度まで回復したとは判断できません。肉離れ後の痛みが軽減しても、全力のダッシュに耐えられるかは、筋力や動作、段階的に負荷をかけたときの反応なども確認します。

また、施術前後の変化だけでは、改善した仕組みまで特定できません。治療中に休んだことや、測定する動作に慣れたことなど、ほかの条件も考える必要があります。複数の治療を組み合わせていれば、それぞれの効果を切り分けるのはさらに難しくなります。

「痛みが減った」という観察と、「組織の修復が進んだ」「血流が増えた」という説明は分けておく。臨床で見られた変化を大切にしながら、その理由については分かっている範囲で考察したいと思います。

研究を読むときも同様です。細胞の反応、動物の腫れ、患者さんの痛みでは、調べていることが違います。細胞の研究は作用を考える手がかりになりますが、それだけで人のケガが早く治るとは言えません。「治癒を促進する」という説明を見かけたときは、何を測定して、何が改善したのかまで確認する必要があります。

まとめ:物理エネルギーを何のために使うのか

物理療法は電気・超音波・熱といった物理エネルギーの種類だけで使い方が決まるわけではありません。同じ種類でも、どこに、どの程度の強さで、どのくらいの時間加えるかによって、身体の反応は変わります。

臨床では、患者さんが何に困っているかを確認します。歩くと痛いのか、筋肉に力を入れにくいのか、関節を動かしにくいのか。受傷からの経過や損傷の状態、刺激を加えてよいかを確認したうえで、その日の目的を決めます。

その目的に合う刺激の種類と条件を選び、治療中の反応と治療後の変化を見ます。歩行時の痛みが目的なら同じ条件で歩いてもらい、筋収縮を補助する目的なら狙った筋肉の収縮を確認します。必要に応じて、翌日以降の状態や数週間の経過も追います。

痛みが和らいで動きやすくなったなら、その機会を筋力や動作の練習につなげます。日常生活や競技に必要な負荷にも、状態を確認しながら段階的に戻していきます。患者さんが次に何をできるようになってほしいのかまで考えると、刺激を加える目的が具体的になります。

私自身、物理療法を調べるほど、「電気だから」「温めるから」という説明だけでは足りないと感じます。身体に何を加え、どんな反応が起き、その反応が患者さんの困っていることにどう役立ったのか。そこまで確かめることで、設定の数字も治療の目的と結びついていくと思います。

参考資料・文献

※研究結果は、それぞれの対象・刺激条件・評価項目の範囲で紹介しています。この記事の表や全体の整理は、これらの資料を踏まえた私自身の考察です。

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