HVMCデルタを実際に使って考える|HV・MC・MCCの設定と波形を掘ってみた

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こんにちは!陣内です。

今回の記事も基礎研究を踏まえて考察していますが、研究結果をそのまま臨床に当てはめるのではなく私自身の臨床経験や解釈、仮説も含まれています。鵜呑みにせず、ご自身でも調べ、検証しながら臨床に落とし込んでいただければと思います。

今回は日本メディックスのHVMCデルタについて書いていきます。

当院で今回お借りしている治療器で、HV(ハイボルテージ)、MCR(マイクロカレント)、MCC(全身調整微弱療法)が搭載されています。また、ULTRASON RE-3000と接続することで、超音波とのCombinationも可能です。

DELTAのMC(普段はMCRや微弱電流と記載しますがデルタはMC表記なので今後MCにしま)には「+・-・±」という極性の設定があります。設定できること自体は知っていても、実際にはどのような波形が出力されているのでしょうか。取説に記載されている設定項目だけでは波形の詳細までは分かりません。

そこで今回はDELTAのMCを実際にオシロスコープで確認してみました。

単純な製品紹介ではなく、取扱説明書に記載されている仕様と実際に観察した波形を中心にDELTAがどのような電気刺激を行う機械なのか考えてみたいと思います。

目次

HVMCデルタの基本仕様

まずはDELTAの主な出力仕様を見てみます。

取扱説明書にはMC/MCCとHVについて次のように記載されています。

項目MC/MCCHV
出力電圧3.6 Vp(4000Ω負荷)480 Vp(1000Ω負荷)
出力電流1 mAp以下40 mArms以下(500Ω負荷)
出力波形矩形波(Duty 50%)ツインピーク波形
周波数0.3〜900 pps0.3〜300 pps
出力端子MC:2CHHV:2CH、HVプローブ:1CH

同じDELTAに搭載されている電気刺激でも、MC/MCCとHVでは出力仕様が大きく異なります。特に電圧を見るとMC/MCCは3.6 Vp、HVは480 Vpとなっていますが、それぞれ測定時の負荷条件も異なるため単純に数値だけを比較して刺激の強さを判断することはできません。

また、Vpはピーク電圧、mApはピーク電流、mArmsは実効値を表します。異なる指標で記載されている点にも注意が必要です。

今回はまず実際に波形を確認したMCから見ていきます。

MCの設定と実際の出力波形

DELTAのMCは10〜900 μAまで電流値を設定できます。周波数は0.3〜900 ppsの31段階、Wave Slopeは0.2・1.0・1.5秒、極性は+・-・±から選択できます。

初期設定は100 μA、30 pps、Wave Slope 1.0秒、極性+です。

微弱電流というと、どうしても「何μA流すのか」という部分に目が向きますが、DELTAでは電流値以外にも複数の設定項目があります。周波数や極性を変更できるということは、同じ電流値であっても出力条件が異なる可能性があります。

特に気になったのが極性の設定でした。

取説には+・-・±と記載されていますが、実際の波形を見なければ、それぞれの設定で何が変わるのか分かりません。そこでDELTAのMC出力をオシロスコープで確認してみました。

+・-・±をオシロスコープで確認してみた

ここからは取扱説明書の記載ではなく私がDELTAの実機で確認した内容です。

今回確認した条件では、±設定で正方向と負方向の両方に振れる波形が観察されました。一方、+にすると±で存在していた二相のうち一方だけが残り、-では反対側が残る形になっていました。

今回の測定では、±では二相性、+/-では二相のうち一方だけを出力する単相性の波形として観察されたことになります。

ここでいう単相性・二相性は、観察されたパルスの極性を区別するための表現です。この測定結果だけで電荷平衡や直流成分の有無まで判断できるわけではありません。

取説の+・-・±という表示だけでは分かりにくかった部分ですが、実際に波形を確認すると極性設定による違いが見えてきます。

MC/MCCのDuty 50%とWave Slope

DELTAの取扱説明書では、MC/MCCの出力波形について「矩形波(デューティ50%)」と記載されています。

ただし、このDuty 50%が実際の出力波形のどの時間構造を指しているのか、詳細な説明までは確認できません。そのため「1 Hzなら0.5秒通電して0.5秒休止する」といった形でこちらから具体的な時間構造を決めつけるのは避けたいと思います。

さらにDELTAにはWave Slopeという設定があります。選択できるのは0.2秒、1.0秒、1.5秒の3段階です。

Slopeという名称からは波形の立ち上がりや出力の変化を連想しますが、具体的に波形のどの部分をどのように変化させているのかは公開情報から確認できません。

おそらくピーク電流までゆっくり立ち上がるのではないのかなと思います。

微弱電流は「何μA流したか」だけで説明できるのか

DELTAのMCを調べていて気になったのは、同じ電流値でも設定できる条件がかなり多いことです。

例えばDELTAでは、100 μA・30 pps・+という設定も、100 μA・900 pps・±という設定も可能です。どちらも電流値は100 μAですが、周波数と極性が異なります。

さらに電極配置や刺激時間も考慮すると、単純に「100 μAの微弱電流を流した」という説明だけでは、実際に行った刺激条件の一部しか分かりません。

この問題は以前書いたIM-2000と3DMENSの比較記事ともつながります。

あちらでは搬送周波数や出力方式、波形、皮膚インピーダンスなどを中心に考えましたが、DELTAの場合は同じ機器の中でも電流値以外に複数の条件を変更できます。

なお、IM-2000や3DMENSの記事で扱ったkHz帯の搬送周波数と、DELTAのMCで設定するppsは、同じ意味の周波数として比較できるものではありません。どの時間構造を表す数値なのかを確認する必要があります。

0.3〜900 ppsにはどのような意味があるのか

DELTAのMCでは0.3〜900 ppsまで設定できます。これだけ広い範囲を選べると、周波数を変えることで生体側にどのような違いが生じるのか気になります。

微弱電流刺激については、創傷治癒を対象とした臨床研究があります。

Avendaño-Coyらが2022年に報告したランダム化比較試験のメタ解析では、標準的な創傷管理に微弱電流刺激を追加することで、創面積の減少や治癒期間の短縮が報告されています。ただし、評価項目によってエビデンスの確実性には差があり、すべてのアウトカムで明確な改善が確認されたわけではありません。

また、この研究はDELTAそのものを検証したものではありません。

微弱電流刺激を扱った研究では、電流強度、周波数、波形、極性、電極配置、刺激時間などが研究ごとに異なります。そのため、微弱電流に関する臨床研究が存在することと、DELTAに搭載されている31段階の周波数それぞれについて臨床的な有効性が確認されていることは別です。

例えば「腱なら○pps」「筋なら○pps」といった形で、DELTAの各周波数を組織や治療目的ごとに振り分けられるほど、研究が整理されているわけではありません。

個人的には、この部分はまだ分からないことが多いと感じています。

以前から微弱電流について調べていますが、電流値や周波数だけでなく、実際の出力波形や電極配置まで含めて考える必要がありそうです。論文を読むときにも「microcurrent」「MENS」という名称だけではなく、どのような刺激条件が使われているのかを確認したいところです。

MCCはさらに分からないことが多い

DELTAには通常のMCとは別に、MCC(全身調整微弱療法)があります。

局所に電極を配置して使用するMCに対して、MCCでは四肢に複数の電極を配置します。電極配置が変われば、体内の電流分布についても考える必要がありますが、具体的な通電経路を公開情報だけから判断することはできません。

MCCにはDual、PNS、SNSといった通電モードもあります。ただし、それぞれのモードで8つの電極間をどのように通電しているのか、詳細な経路までは確認できません。

このあたりについては以前の記事で詳しく考察しています。MCCそのものの仕組みや電流経路に興味がある方は、そちらも読んでいただければと思います。

→[MCCについて詳しくはこちら]

今回はDELTAのMCとHVを中心に見ていきたいので、MCCについてはここまでにします。

DELTAのHVはどのような刺激なのか

DELTAのもう一つの大きな機能がHVです。

取扱説明書では、出力電圧は最大480 Vp(1000Ω負荷)、出力電流は40 mArms以下(500Ω負荷)、波形はツインピーク波形、周波数は0.3〜300 ppsとなっています。

極性は単相性・二相性、周波数モードは連続・スウィープから選択できます。また、NMESも搭載されており、漸増0.1〜9.9秒、持続0〜99秒、漸減0.1〜9.9秒、休止0〜99秒まで設定できます。

普段はまとめてハイボルテージと呼んでいますが、DELTAのHVだけを見てもかなり多くの設定項目があります。

480 Vなら深部まで届くのか

HVで目につく数字といえば、やはり480 Vpです。

高い電圧を見ると「電圧が高いから深部まで届く」と説明したくなります。しかし、電気刺激による体内の電流分布は電圧だけで決まるわけではありません。

電極の大きさや配置、組織の電気的特性、波形なども関係します。また、取説に記載されている480 Vpは1000Ωの負荷条件における出力仕様であり、実際の人体内部の特定部位に480 Vが加わることを意味するものではありません。

そのため、DELTAの最大480 Vpという仕様から「何cmの深さまで刺激できる」と判断することはできません。

HVの深達性について考えるのであれば、電圧の数値だけではなく、電極配置や組織内の電流分布なども考慮する必要があります。

HVの研究ではどのような条件が使われているのか

HVPCやHVPSについては、浮腫や創傷治癒を対象とした研究があります。

急性損傷後の浮腫についてSnyderらが行ったシステマティックレビューでは、陰極、120 pps、視覚的な筋収縮が生じる閾値の90%に相当する刺激強度など、一定のHVPS条件で浮腫形成を抑制する可能性がまとめられています。ただし、このレビューで根拠となっているのは動物を対象とした基礎研究です。

以前書いた浮腫に対する物理療法の記事でも触れましたが、浮腫形成を抑えることと、すでに間質に存在する液体を移動させることは同じではありません。

HVによって浮腫が減少したという研究結果を見る場合にも、何を測定しているのか、どの時間帯に刺激を加えたのかを確認する必要があります。

一方、創傷治癒については人を対象とした研究もあります。

GirgisとDuarteによる2018年のシステマティックレビュー・メタ解析では、Stage II〜IVの褥瘡を対象として、HVMPCを標準的な創傷管理に追加することで、創面積の減少率に有利な結果が報告されています。

ただし、これらの研究で使用されたHV系刺激とDELTAの出力条件が完全に一致するわけではありません。

例えば同じHVPCであっても、周波数、極性、刺激強度、電極配置、刺激時間などが異なれば介入条件は変わります。DELTAの臨床設定に研究結果を参考にする場合も、ハイボルテージという名称だけではなく、実際にどのような条件が使用されていたのかを確認する必要があります。

この点はMCと共通しています。

超音波とのCombinationについて

DELTAはULTRASON RE-3000と接続することで、MC+超音波、HV+超音波のCombinationが可能です。

ただ、Combinationまで詳しく考え始めると、今度は超音波側の設定も関係してきます。超音波の周波数、Duty、強度、照射時間に加えて、電気刺激側の波形や周波数、極性なども考える必要があります。

以前、超音波のDutyについて記事を書きましたが、Dutyだけで温熱作用と非温熱作用を単純に分類できないのと同じように、Combinationについても「二つの物理療法を同時に使うから効果が高い」と簡単に考えることはできません。

同時に使用できるという機器の機能と、単独使用に対する臨床的な優位性は別の問題です。

Combinationについては、超音波側の条件も含めて改めて調べてみたいと思います。

まとめ

今回はHVMCデルタの取扱説明書を読み直し、MCについては実際にオシロスコープで出力波形を確認してみました。

DELTAのMCでは、電流値だけでなく周波数、極性、Wave Slopeなどを設定できます。取説上の出力波形は矩形波(Duty 50%)ですが、その具体的な時間構造やWave Slopeの詳細については、公開情報だけでは分からない部分もあります。

今回のオシロ測定では、±設定で二相性、+/-設定で片側の相を出力する単相性の波形が観察されました。普段何気なく使っている極性設定ですが、実際に波形を見ると、同じMCでも設定によって出力が変わることが分かります。

HVについても、最大480 Vpという数字だけでなく、ツインピーク波形、極性、周波数、NMESの時間設定など、さまざまな条件があります。

こうして見ると、「微弱電流を流した」「ハイボルテージを使った」という説明だけでは、実際にどのような電気刺激を行ったのか十分には分かりません。

何μAだったのか、何ppsだったのか、どんな波形だったのか、電極をどこに配置したのか、どのくらいの時間刺激したのか。論文を読むときにも、臨床で機器を使用するときにも、このあたりを確認する必要があると感じています。

普段から使用しているDELTAですが、取説を読み直して実際に波形を確認してみると、まだ分からないところもかなりありました。

分からない部分を推測で埋めるのではなく、取説に書かれている仕様、実測で確認できたこと、研究で報告されていることを分けながら、今後も調べていきたいと思います。

参考文献・資料

  1. 株式会社日本メディックス.HVMCデルタ 取扱説明書 第8版.
  2. 株式会社日本メディックス.HVMCデルタ 製品情報
  3. Avendaño-Coy J, et al. Electrical microcurrent stimulation therapy for wound healing: A meta-analysis of randomized clinical trials. Journal of Tissue Viability. 2022;31(2):268–277.
  4. Snyder AR, et al. The influence of high-voltage electrical stimulation on edema formation after acute injury: A systematic review. Journal of Sport Rehabilitation. 2010;19(4):436–451.
  5. Girgis B, Duarte JA. High Voltage Monophasic Pulsed Current (HVMPC) for stage II–IV pressure ulcer healing: A systematic review and meta-analysis. Journal of Tissue Viability. 2018;27(4):274–284.
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