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こんにちは!陣内です。
超音波と電気刺激を同時に使用するコンビネーション療法。
物理療法機器にはこの機能を備えたものがありますが実際の臨床ではどのような目的で使用しているでしょうか。
超音波には温熱作用や機械的作用があり電気刺激には神経興奮や筋収縮を誘発する作用があります。
異なる物理刺激を同時に使用できることは特徴ですがそれだけではコンビネーション療法を選択する理由として十分ではありません。
重要なのは二つの刺激を組み合わせることで何を起こしたいのかという点です。
私自身コンビネーション療法では電気刺激による筋収縮を積極的に利用しています。
一つは筋ポンピングを起こしながら連続波の超音波を照射する方法です。
もう一つは筋を伸張位に保持した状態でハイボルテージ電流(HVPC)による強縮を起こし刺激終了後にさらにストレッチを加える方法です。
後者ではHVPCを130 Hz、20 μs、60秒間の連続通電という条件で使用しています。途中に休止時間は設けていません。
これらは、超音波と電気刺激を単純に同時使用するのではなく筋収縮によって組織の状態を変化させることを狙った方法です。
今回は基礎研究を中心に、超音波と電気刺激の相互作用、筋ポンピングと超音波の物理学、強縮後のストレッチに関わる神経生理学を整理します。
そのうえで私が臨床でどのようにコンビネーション療法を選択しているのかを考えていきます。
今回も基礎研究を踏まえて考察していますが研究結果をそのまま臨床に当てはめるのではなく私自身の臨床経験や解釈、仮説も含めて整理しています。内容を鵜呑みにせず、ご自身でも調べ、検証しながら臨床に活かしていただければと思います。
コンビネーション療法とは何か?

コンビネーション療法は一般に超音波療法と電気刺激療法を組み合わせて使用する方法です。
代表的な方式では超音波ヘッドを電気刺激の一方の電極として利用しもう一方の電極を身体の別の部位に設置します。
この状態で超音波を照射すると機械的振動が組織へ伝わると同時に電極間には電気刺激による電場が形成されます。
通常の超音波療法と異なるのは超音波ヘッドが電極としての役割も担うことです。
パッド電極による電気刺激では電極を固定した状態で使用することが一般的です。
一方、コンビネーション療法ではヘッドを移動させることで超音波の照射位置と電気刺激の電極位置を同時に変えることができます。
これは臨床上の大きな特徴です。
ただし、超音波と電気刺激のエネルギー分布が同じになるわけではありません。
超音波は組織の音響インピーダンスや吸収、反射などの影響を受けます。
電気刺激は電極配置や組織の導電率、接触面積などによって電場分布が変化します。
したがって、同じヘッドから刺激していても両者が同じ組織に同じように作用しているとは考えません。
超音波と電気刺激の違い
| 項目 | 超音波 | 電気刺激 |
|---|---|---|
| エネルギー | 機械的振動 | 電気エネルギー |
| 主な物理的作用 | 音響圧による組織の変形 | 電場による神経膜への作用 |
| 主な生理学的反応 | 温度変化、機械的刺激 | 感覚入力、神経興奮、筋収縮 |
| 代表的な設定 | 周波数、強度、Duty Cycle、照射時間 | 刺激頻度、パルス幅、強度、電極配置 |
| 臨床上の特徴 | 照射位置と音響条件の調整 | 興奮する神経や筋収縮の調整 |
ここで注意したいのが周波数です。
超音波の1 MHzや3 MHzは音響振動の周波数を表しています。
一方、HVPCの130 Hzは刺激パルスが繰り返される頻度です。
同じHzという単位を使用していても異なる物理現象を表しています。
超音波は電気刺激による神経興奮を変えるのか?

コンビネーション療法を考えるうえで興味深いのが、超音波による神経興奮性の変化です。
電気刺激によって末梢神経を興奮させると、活動電位が発生します。
運動神経が興奮すれば筋収縮が生じ、感覚神経が興奮すれば感覚入力が生じます。
では、このとき超音波を加えることで神経の反応は変わるのでしょうか。
超音波による神経伝導の変化
2005年に報告された研究では、摘出したカエルの坐骨神経に電気刺激を加えながら、3.5 MHzの連続超音波を照射しています。
超音波出力を変化させ、複合活動電位と神経伝導速度を評価しました。
その結果、神経伝導速度や複合活動電位に変化が認められました。
重要なのは、超音波の条件によって神経応答が異なったことです。
超音波を加えれば必ず神経興奮が増強されるという単純な関係ではありません。
この結果は、コンビネーション療法の作用を考えるうえで重要です。
超音波は単に組織を温めるだけでなく、電気刺激に対する神経の応答を変える可能性があります。
ただし、摘出神経での実験であり、実際の臨床で使用する超音波ヘッド電極方式を直接検証したものではありません。
超音波は神経応答を増強も抑制もする
2025年には、ラット坐骨神経に対する超音波照射と電気刺激の関係を調べた研究が報告されています。
この研究では、超音波の照射条件によって、電気刺激で誘発される筋電図応答が増強する場合と抑制される場合が認められました。
つまり、超音波が神経活動に与える影響は、照射条件に依存しています。
これは臨床的に重要な視点です。
例えば、電気刺激による筋収縮を目的としてコンビネーション療法を使用する場合、超音波を加えることで筋収縮が強くなると期待するかもしれません。
しかし、神経応答の変化は刺激条件によって異なります。
さらに、筋電図応答の増加が、そのまま筋力や治療効果の増加を意味するわけではありません。
私が臨床で重視するのは、超音波によって神経興奮が増強されることを期待するよりも、電気刺激によって目的とする筋収縮を実際に起こせているかという点です。
機械刺激感受性イオンチャネルという視点
超音波による神経応答の変化を考える際には、機械刺激感受性イオンチャネルも重要です。
例えばPIEZO2は末梢感覚神経の機械刺激受容に関与するイオンチャネルとして知られています。
マウスの末梢神経を用いた研究では、集束超音波によって活動電位が誘発され、その反応の一部にPIEZO2が関与することが報告されています。
この研究は、超音波が温熱作用だけでなく神経膜に対する機械的な作用を通じて神経活動に影響する可能性を示しています。
ただし、集束超音波による神経調節、一般的な治療用超音波では刺激条件が異なります。
ここで押さえておきたいのは、超音波による神経応答の変化には、温度だけでは説明できない機械的な作用も考えられるということです。
筋ポンピングを起こしながら連続超音波を照射する

私がコンビネーション療法で行っている方法の一つが、電気刺激によって筋収縮と弛緩を繰り返しながら、Duty 100%の連続超音波を照射する方法です。
ここで狙っているのは筋収縮によって超音波照射中の組織の状態を変化させることです。
筋が収縮すると筋腹の形状や厚みが変化し周囲組織との位置関係も変わります。
そのため、静止した筋に照射する場合とは超音波が伝播する組織の状態が異なります。
私はこの筋の動きを利用しながら骨に対して超音波が垂直に近い角度で入射しないようにヘッドの角度を調整しています。
その背景にあるのが超音波の反射と吸収、局所的な温度上昇です。
骨近傍では何が起こるのか?
超音波が異なる組織の境界に到達すると一部は反射し、一部は透過します。
この反射に関係するのが音響インピーダンスです。
音響インピーダンスは次の式で表されます。
Z=ρc
Z:音響インピーダンス
ρ:組織の密度
c:組織内の音速
軟部組織と骨では音響インピーダンスが異なるため、境界面で反射が生じます。
垂直入射する平面波では、強度反射率は次の式で表されます。
R={(Z₂-Z₁)/(Z₂+Z₁)}²
ただし、実際の人体では骨表面に曲率があり、筋や腱などの組織も均一ではありません。
また、斜め入射では反射方向や屈折、モード変換なども変化します。
したがって、骨に対して斜めに照射することだけで安全性が確保されるわけではありません。
重要なのは、骨との位置関係を考えながら、周波数、強度、照射時間、ヘッド移動を管理することです。
1 MHzと3 MHzでは温度分布が異なる
Ohwatashiら(2015)は、豚の肋骨と組織模擬材料を用いて超音波ヘッドと骨との距離による温度分布の違いを検討しました。
超音波条件は1 MHzまたは3 MHz、2.0 W/cm²の連続波で、照射時間は5分間でした。
研究では、周波数と骨までの距離によって温度上昇の分布が異なることが示されました。
1 MHzでは骨近傍の温度上昇が大きくなる条件があり3 MHzではヘッド近傍の温度上昇が大きくなる傾向が認められました。
この結果は、同じ連続波でも周波数と骨までの距離によって加熱される場所が異なることを示しています。
臨床では、皮膚表面の温熱感覚だけで深部の温度変化を判断することはできません。
そのため、骨との位置関係や照射条件を考える必要があります。
筋ポンピングをどう利用するか?
私が筋ポンピングを利用する理由は筋収縮によって組織の形状や位置関係を変化させられることです。
筋が収縮と弛緩を繰り返すことで超音波照射中の組織の状態が時間的に変化します。
私はこの変化を利用しながらヘッドの移動と照射角度を調整しています。
ただし、筋ポンピング自体に熱傷予防効果があると考えているわけではありません。
局所的な加熱を避けるためには、適切な照射強度と時間、ヘッド移動、接触状態の管理が必要です。
臨床では、まず電気刺激によって目的とする筋に収縮と弛緩が生じているかを確認します。
そのうえで超音波の照射範囲と骨との位置関係を考えながらヘッドを移動させます。
局所的な熱感や疼痛が生じる場合には照射条件を見直します。
私にとってこの方法は、筋収縮による組織の動きを積極的に利用するコンビネーション療法です。
Duty 100%と超音波強度は別の設定
ここで、Duty Cycleについても整理しておきます。
Duty Cycleは、一定周期のうち超音波が出力されている時間の割合です。
Duty 100%は連続波を意味します。
一方、超音波強度はW/cm²で表されます。
連続波では時間平均強度とパルス中の平均強度は一致しますが、パルス波では両者が異なります。
例えば、パルス中の強度が同じ場合、Duty 50%では時間平均強度は連続波の半分になります。
ただし、機器が表示している強度の定義によって解釈は変わります。
したがって、Duty 100%は最大出力を意味するわけではありません。
連続波を使用する場合にはDuty Cycleだけでなく強度と照射時間を含めて設定する必要があります。
伸張位でHVPCによる強縮を起こす

もう一つ、私がコンビネーション療法で行っているのが筋を伸張位に保持した状態でHVPCによる強縮を起こし、刺激終了後にさらにストレッチを加える方法です。
この方法では、筋を伸張した状態で能動的な張力を発生させます。
私はこの張力変化と感覚入力を利用し刺激終了後の追加伸張につなげることを狙っています。
私が使用しているHVPCの設定
| 項目 | 設定 |
|---|---|
| 電気刺激 | HVPC(ハイボルテージ電流) |
| 刺激頻度 | 130 Hz |
| パルス幅 | 20 μs |
| 刺激時間 | 60秒 |
| 通電方式 | 連続通電・休止なし |
| 筋の状態 | 伸張位で保持 |
| 刺激中の目的 | 強縮による筋腱張力の発生 |
| 刺激終了後 | 追加ストレッチ |
この設定で重要なのは、刺激頻度とパルス幅を分けて考えることです。
130 Hzは、1秒間に130回の刺激パルスが繰り返されることを意味します。
一方、20 μsは非常に短いパルス幅です。
HVPCでは短時間の高電圧パルスが使用され、一般的な装置では双峰性の単相パルスが用いられます。
ただし、機器によってパルス幅の表示方法や波形の定義が異なるため、20 μsがどの部分の時間幅を示すのかは使用機器の仕様に従って解釈する必要があります。
130 Hzによる強縮をどう考えるか?
筋への電気刺激では刺激頻度によって筋収縮の状態が変化します。
刺激頻度が低い場合には単収縮が分離して観察されることがあります。
刺激頻度が高くなると、次の刺激が前の収縮の弛緩前に加わるため、張力が時間的に加重されます。
さらに刺激頻度が高くなると、単収縮が融合し、強縮が生じます。
130 Hzは高い刺激頻度であり、運動神経が十分に動員されれば、持続的な筋収縮を起こす条件になります。
ただし、強縮の程度は刺激頻度だけで決まるわけではありません。
パルス幅、刺激強度、電極配置、筋の状態なども関係します。
また、筋によって強縮が生じる刺激頻度は異なります。
そのため、130 Hzという数値そのものよりも、目的とする筋に実際にどのような収縮が生じているかを確認することが重要です。
20 μsという短いパルス幅
電気刺激による神経興奮を考える際には、刺激強度とパルス幅の関係が重要です。
神経を興奮させるために必要な刺激強度は、パルス幅によって変化します。
一般に、パルス幅が短いほど、神経を興奮させるために高い刺激強度が必要になります。
これは強度–時間曲線として知られる関係です。
HVPCは短いパルス幅と高い電圧を特徴とする刺激方式であり、短時間のパルスによって神経興奮を誘発します。
ここで重要なのは、電圧が高いことと、組織に流れる総電荷量が大きいことは同じではないという点です。
一つのパルスで移動する電荷量は、電流波形を時間積分することで求められます。
Q=∫i(t)dt
したがって、同じピーク電圧であっても、パルス幅や波形、組織インピーダンスによって電荷量は変化します。
また、20 μsという設定値だけから、実際に神経へ加わる電荷量を決定することはできません。
私が臨床で確認するのは、設定値そのものよりも、目的とする筋に十分な収縮が得られているかという点です。
60秒間の連続強縮をどう考えるか?
今回の方法では、筋を伸張位に保持した状態で60秒間連続通電します。途中に休止時間は設けていません。
130 Hzという高い刺激頻度では、運動神経が十分に動員されれば、単収縮が融合した強縮を生じさせることができます。
ここで私が意識しているのは、筋腱複合体に能動的な張力を発生させ、その状態を一定時間維持することです。
ただし、60秒間連続して通電するため、筋疲労によって発生張力が時間とともに低下する可能性があります。
したがって、60秒間の連続通電であっても、筋腱複合体に加わる張力が60秒間一定とは考えていません。
また、ゴルジ腱器官からのIb求心性入力は筋張力の影響を受けるため通電中の入力も一定とは限りません。
私がこの方法で重視しているのは、強縮そのものではなく、刺激終了後の変化です。
通電を終了して筋収縮が解除された後に追加伸張を行い関節可動域、伸張時の抵抗感、疼痛の変化を確認します。
この反応にはIb経路を含む脊髄反射の調節だけでなく、伸張耐性や感覚入力、筋腱複合体の機械的な反応などが関与する可能性があります。
したがって、130 Hz・20 μs・60秒という設定は、Ib抑制を確実に引き起こすための条件ではなく伸張位で持続的な筋収縮を起こし、その終了後の反応を利用するための私の臨床設定として位置づけています。
強縮後に筋が伸びやすくなるのはIb抑制なのか?

私が伸張位での強縮を利用する際に意識しているのがゴルジ腱器官を介したIb求心性入力です。
ゴルジ腱器官は筋腱複合体の張力を検出する感覚受容器です。
筋が収縮して張力が発生すると、Ib求心性線維を介して脊髄へ情報が伝わります。
古典的には、このIb入力が抑制性介在ニューロンを介して同名筋のα運動ニューロンを抑制する経路が知られています。
この反応は自己抑制と呼ばれます。
そのため、PNFストレッチでは筋収縮後に自己抑制が生じて筋が伸びやすくなると説明されることがありました。
しかし、Ib入力は常に抑制性に働くわけではありません。
Ib経路の作用は運動課題や荷重状態によって変化し、条件によっては促通性の反応も生じます。
つまり、筋張力が増加したからといって、必ず同名筋の運動ニューロンが抑制されるわけではありません。
また、強縮中には筋の能動的張力が増加しています。
そのため、強縮中の筋が弛緩していると考えることは適切ではありません。
私が利用しているのは、強縮中の弛緩ではなく、刺激終了後の追加伸張です。
では、この刺激終了後の変化は何によって説明できるのでしょうか。
PNFストレッチと自己抑制
Mitchellら(2009)は、PNFストレッチ中の筋電図活動を測定し、自己抑制や相反抑制の関与を検討しました。
研究では、contract-relaxとcontract-relax agonist-contractを比較しています。
従来の説明では、筋収縮後に自己抑制が生じれば、筋電図活動が低下すると予想されます。
しかし、この研究では収縮後に予想される筋電図活動の低下は確認されませんでした。
この結果は、PNFストレッチによる可動域改善を自己抑制だけで説明することの難しさを示しています。
ただし、筋電図はIb介在ニューロンの活動を直接測定しているわけではありません。
したがって、Ib経路の関与を完全に否定するものではありませんが、可動域改善をIb抑制の結果と断定することもできません。
電気刺激による強縮と随意収縮の違い
ここで重要なのが電気刺激による筋収縮と随意収縮の違いです。
随意収縮では、中枢神経系からの運動指令によって運動単位が動員されます。
一方、電気刺激では刺激電極の近くに存在する神経軸索が興奮し筋収縮が誘発されます。
そのため、運動単位の動員順序や空間的な分布、発火の同期性などが随意収縮と異なる場合があります。
また、電気刺激では運動神経だけでなく、感覚神経も刺激されます。
つまり、同じ程度の筋張力が発生したとしても、随意収縮と電気刺激による収縮では、求心性入力の構成が異なる可能性があります。
この違いを考えると、随意収縮を利用したPNFストレッチの研究結果をそのままHVPCによる強縮へ当てはめることはできません。
ただし、筋腱複合体に張力を発生させ、その後に追加伸張を行うという考え方には共通点があります。
筋が柔らかくなるのか?伸張に耐えられるようになるのか?

刺激終了後に追加伸張が可能になった場合その変化を筋のスティフネス低下だけで説明することはできません。
ここで重要になるのが伸張耐性です。
伸張耐性とはストレッチによる張力や不快感をどの程度まで許容できるかという特性です。
例えば、ストレッチ後に関節可動域が増加したとしても筋腱複合体の受動的なスティフネスが変化していない場合があります。
その場合、筋そのものの機械的特性が変わったのではなく、より大きな伸張負荷を許容できるようになった可能性があります。
Magnussonらの研究
Magnussonら(1996)は3週間のストレッチ介入によってハムストリングスの関節可動域が増加した一方、受動的なスティフネスには有意な変化が認められなかったことを報告しています。
この研究は関節可動域の改善と筋の機械的な柔軟性を区別する必要があることを示しています。
NMES後のストレッチに関する研究
SaitoとMizuno(2026)は、NMESを神経幹または筋腹に加えた後、静的ストレッチを実施し関節可動域と受動トルクの変化を検討しました。
NMESは10 Hzで10秒ON・10秒OFFの刺激を60回行い、その後5分間の静的ストレッチを実施しています。
最大足関節背屈角度の増加は、神経幹刺激条件で3±2°、筋腹刺激条件で2±3°、安静条件で2±2°でした。
ROMの改善量には有意な群間差が認められませんでした。
一方、伸張耐性には刺激条件による変化が報告されています。
この研究は、NMESとストレッチを組み合わせる際に、Ib抑制だけでなく伸張耐性に注目する必要があることを示しています。
ただし、この研究はNMES終了後にストレッチを行っており、伸張位で130 HzのHVPCによる強縮を起こす方法とは異なります。
それでも電気刺激による筋収縮とストレッチを組み合わせる際の重要な手掛かりになります。
超音波とNMESの併用は筋組織にも影響するのか?

コンビネーション療法を考えるうえでは神経興奮や筋収縮だけでなく筋組織そのものへの作用も検討する必要があります。
SuwankanitとShimizu(2024)は、ラットの固定性大腿四頭筋拘縮モデルを用いて、超音波とNMESの効果を比較しました。
超音波は3 MHz、1 W/cm²の連続波、NMESは50 Hzを使用しています。
研究では、関節可動域、筋線維の萎縮、線維化関連指標などが評価されました。
超音波単独、NMES単独、併用の各条件で改善が報告され併用群では炎症や線維化に関連する一部のmRNA発現に変化が認められました。
ここで重要なのは、超音波とNMESが筋組織に異なる作用を持ち組み合わせることで組織反応が変化する可能性があるという点です。
ただし、この研究では超音波を照射した後にNMESを実施しています。
つまり、同時刺激ではなく逐次併用です。
また、ラットの固定性拘縮モデルでありヒトの筋短縮やスポーツ障害とは条件が異なります。
それでも、超音波と電気刺激を組み合わせる意義を神経興奮だけでなく筋組織の変化から考えるうえで重要な研究です。
コンビネーション療法は単独治療より優れているのか?

基礎研究では興味深い反応が報告されていますが臨床研究では併用による追加効果が認められない場合もあります。
例えば、Sangtongら(2019)は膝OA患者148名を対象に、超音波単独と超音波+TENSを比較しました。
両群で疼痛の改善が認められましたが、TENSを追加することによる明確な追加効果は確認されませんでした。
また、van der Heijdenら(1999)は肩の軟部組織障害患者180名を対象に、超音波と干渉波の追加効果を検討しました。
その結果、運動療法に超音波や干渉波を追加することによる明確な優位性は認められませんでした。
これらの結果から、超音波と電気刺激を組み合わせれば必ず治療効果が高まるという考え方は適切ではありません。
ただし、これらの研究は私が行っている筋ポンピングや伸張位での強縮を利用した方法を直接検証したものではありません。
ここで重要なのは、何を目的に二つの刺激を組み合わせるのかという点です。
疼痛の調節を目的としてTENSを追加する場合と、筋収縮による組織の動きを利用する場合では、コンビネーション療法を選択する理由が異なります。
そのため、併用療法全体の有効性を一括して判断するのではなく、目的と刺激条件を分けて考える必要があります。
私は単独治療とコンビネーション療法をどう使い分けるのか?
私は、すべての症例にコンビネーション療法を使用する必要はないと考えています。
例えば、疼痛の調節を目的として電気刺激を使用する場合筋収縮や超音波照射を組み合わせる理由がなければ電気刺激単独を選択します。
また、超音波による局所的な作用を目的とする場合、筋収縮を加える必要がなければ超音波単独を選択します。
一方、筋収縮による組織の動きや伸張位での強縮を利用したい場合には、コンビネーション療法を検討します。
私の中では、次のように整理しています。
| 臨床目的 | 選択の考え方 |
|---|---|
| 感覚入力や疼痛調節が中心 | 電気刺激単独 |
| 超音波による局所的な作用が中心 | 超音波単独 |
| 筋収縮と弛緩を繰り返したい | NMES単独または併用 |
| 筋収縮中の組織に超音波を照射したい | コンビネーション療法 |
| 伸張位で強縮し、終了後に追加伸張したい | HVPC+ストレッチを基本に、超音波を加える目的を検討 |
ここで重要なのは、コンビネーション療法を使用すること自体を目的にしないことです。
超音波を加える理由が説明できるか。
電気刺激によって何を起こしたいのか。
その結果を何によって評価するのか。
この3点が明確であれば単独治療とコンビネーション療法の選択にも理由が生まれます。
コンビネーション療法のメリットとデメリット
ここまでの研究と臨床的な考え方を整理すると、コンビネーション療法の特徴は次のようになります。
| メリット | 注意点 |
|---|---|
| 筋収縮中に超音波を照射できる | 同時使用による追加効果は目的によって異なる |
| 筋ポンピングによる組織の動きを利用できる | 筋収縮だけで局所加熱を防げるわけではない |
| 伸張位で筋腱張力を発生させられる | 強縮による疲労や組織負荷を考慮する |
| 電極位置と照射位置を同時に調整できる | 接触状態によって電流分布が変化する |
| 異なる物理刺激を一つの施術に組み込める | どちらの刺激が変化に寄与したか判断しにくい |
私が特に重視しているのは、筋収縮を利用できるという点です。
筋ポンピングでは、筋収縮によって組織の状態を変化させながら超音波を照射します。
伸張位での強縮では、筋腱複合体に張力を発生させ、刺激終了後の追加伸張につなげます。
このように、電気刺激によって筋収縮を起こすことを目的とすれば、コンビネーション療法の使い方はより具体的になります。
ただし、超音波を同時に使用することが本当に必要なのかは、施術後の評価から判断する必要があります。
まとめ
超音波コンビネーション療法は、超音波と電気刺激という異なる物理刺激を同時に使用する方法です。
基礎研究では、超音波が電気刺激に対する神経応答を変化させることや、NMESとストレッチの組み合わせによって伸張耐性が変化する可能性が報告されています。
一方、臨床研究では、超音波と電気刺激の併用が単独治療を常に上回るわけではありません。
私は、この結果をコンビネーション療法の価値がないという意味には捉えていません。
むしろ、何を目的として二つの刺激を組み合わせるのかを、臨床家自身が明確にする必要があると考えています。
私がコンビネーション療法で重視しているのは、電気刺激による筋収縮を利用することです。
筋ポンピングによって組織の状態を変えながら超音波を照射する。
筋を伸張位に保持した状態でHVPCによる強縮を起こし、刺激終了後に追加伸張を行う。
このような方法では、単独の超音波照射とは異なる刺激条件を作ることができます。
特に伸張位での強縮では、130 Hz、20 μs、60秒間の連続通電というHVPCの設定を用いています。
ただし、この設定がすべての筋や症例に適しているという意味ではありません。
重要なのは、目的とする筋収縮が得られているか、刺激終了後にどのような変化が生じているかという点です。
また、強縮後の追加伸張をIb抑制だけで説明するのではなく、脊髄反射経路の変化、伸張耐性、感覚入力、筋腱複合体の機械的反応などを含めて考える必要があります。
コンビネーション療法を選択する理由は、二つの刺激を同時に使用できるからではありません。筋収縮と超音波照射を組み合わせることで、単独治療とは異なる刺激条件を意図的に作れるからです。
そして、その刺激条件が本当に必要だったのかを、施術後の評価から判断していくことが、臨床でコンビネーション療法を使いこなすうえで重要だと考えています。
参考文献
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