電気治療のHzって何?―周波数を基礎から理解する

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こんにちは!陣内です。

電気治療器を使用するとき、必ずといってよいほど目にするのが「Hz(ヘルツ)」という単位です。

1Hz、10Hz、50Hz、100Hzなど電気治療ではさまざまな周波数が使われています。

普段から電気治療を行っている方であれば周波数を変えることで刺激感や筋肉の動き方が変わることを経験していると思います。

例えば低い周波数では筋肉がピクッ、ピクッと動き、周波数を高くすると持続的に収縮することがあります。

では、なぜ周波数によって筋肉の反応が変わるのでしょうか。

また、100Hzは10Hzより電気が強いのでしょうか。

今回は電気治療の基本となるHzについて周波数とパルス間隔の関係から筋収縮、筋疲労、鎮痛との関係まで基礎研究を交えて解説していきます。

なお、今回はTENS、NMES、鍼通電などで使用される低周波パルス刺激を中心に扱います。中周波の搬送周波数や干渉波については別の記事で解説します。また周波数で必ず語られている内因性オピオイドについてもあえて触れていません。これらは別の記事に書いていきます。

今回も基礎研究を踏まえて考察していますが研究結果をそのまま臨床に当てはめるのではなく私自身の臨床経験や解釈、仮説も含めて整理しています。内容を鵜呑みにせず、ご自身でも調べ、検証しながら臨床に活かしていただければと思います。

目次

Hz(ヘルツ)とは何か?

Hzは周波数を表す単位です。

周波数とはある現象が1秒間に何回繰り返されるかを示したものです。

例えば1秒間に10回繰り返される現象の周波数は10Hzになります。

電気治療で使用される周期的なパルス刺激では基本的に1秒間に発生するパルスの数を表しています。

1Hzであれば1秒間に1回、10Hzであれば10回、100Hzであれば100回のパルスが発生します。

周波数が高いほど一定時間内に発生するパルスの数が増えるということです。

ここで理解しておきたいのは周波数が高くなると電気の大きさが増えるのではなく一定時間内に発生するパルスの回数が増えるということです。

この違いが電気治療の周波数を理解する第一歩になります。

周波数が変わるとパルスの間隔はどうなる?

周波数を理解するうえでもう一つ重要なのがパルスの間隔です。

例えば1Hzでは1秒間に1回のパルスが発生します。

そのためあるパルスの開始から次のパルスの開始までの時間は1秒間です。

一方、100Hzでは1秒間に100回のパルスが発生するため、次のパルスまでの時間は非常に短くなります。

この関係は次の式で表されます。

周期(秒)=1÷周波数(Hz)

周波数周期
1Hz1000ms
2Hz500ms
10Hz100ms
20Hz50ms
50Hz20ms
100Hz10ms

例えば10Hzでは100msごと100Hzでは10msごとにパルスが発生します。

ただし、ここでいう周期はパルスの開始から次のパルスの開始までの時間です。

パルスとパルスの間に電流が流れていない時間とは厳密には異なります。

パルス幅との違い

電気治療器にはHzとは別にパルス幅という設定があります。

パルス幅は1回のパルスがどのくらいの時間続くかを示しています。

例えば100Hzの単相矩形パルスでパルス幅を200μs(0.2ms)に設定した場合を考えてみましょう。

100Hzの周期は10msです。

そのうち0.2msだけパルスが発生するため、残りの9.8msは電流が流れない時間になります。

一方、同じ100Hzでもパルス幅を500μs(0.5ms)にすると、パルスが続く時間は長くなります。

つまり、同じ100Hzでもパルス幅が異なれば、電気刺激の時間的な特徴は変わります。

なお二相性パルスでは各相の幅とパルス全体の幅を区別する必要があります。機器によって表示方法が異なることもあるため設定値が何を示しているかを確認することが大切です。

Hzが高いほど電気は強くなるのか?

電気治療でよくある誤解の一つが周波数と電気の強さを混同することです。

100Hzは10Hzの10倍の周波数ですが電流の大きさが10倍になるわけではありません。

周波数と電流振幅は別々の物理量です。

設定単位意味
周波数Hzパルスが繰り返される頻度
電流振幅mA電流の大きさ
パルス幅μs・ms1回のパルスの時間的な幅
刺激時間秒・分電気刺激を行う時間

例えば電流振幅が10mAの刺激であれば10Hzでも100Hzでも設定された電流振幅は10mAです。

ただし、これは定電流方式で設定値どおりに出力できている場合の説明です。定電圧方式では電極と生体のインピーダンスなどによって実際の電流が変化します。

また、同じ振幅とパルス幅で周波数を高くすると1秒間に発生するパルスの数が増えます。

その結果、単位時間当たりに移動する電荷の絶対量や刺激によって供給されるエネルギーが増える場合があります。

例えば、10mAの単相矩形パルスを200μsの幅で流した場合1パルス当たりの電荷量は次のようになります。

電荷量=電流×時間

10mA×200μs=2μC

この条件で10Hzなら1秒間に10パルス、100Hzなら100パルスが発生します。

したがって、単相パルスの電荷量を単純に積算すると、10Hzでは20μC/秒、100Hzでは200μC/秒になります。

これは電流振幅が10倍になったという意味ではありません。

1回のパルスの大きさは同じでもパルスの数が増えたことによる違いです。

なお、電荷平衡型の二相性パルスでは正負の電荷が相殺されるため正味電荷と各相で移動する電荷量を区別する必要があります。

このように、周波数は電流の強さとは別の設定ですが刺激全体の物理的な量にも関係しています。

周波数によって筋肉の収縮が変わるのはなぜ?

ここからはHzが生体反応にどのような影響を与えるのかを考えていきます。

周波数の違いを理解するうえで最も分かりやすいのが筋肉の収縮です。

運動神経に電気刺激を加えると条件によって運動神経の軸索に活動電位が発生します。

その興奮が神経筋接合部を介して筋線維に伝わると筋線維にも活動電位が発生します。

そして筋小胞体からカルシウムイオンが放出されアクチンとミオシンの相互作用によって筋張力が発生します。

ここで重要なのは筋肉の収縮は電気刺激が終わった瞬間に消えるわけではないということです。

筋肉が収縮しその後弛緩するまでには一定の時間が必要です。

この時間的な特徴が周波数による筋収縮の違いを生み出します。

単収縮・加重・強縮

1回の刺激によって生じる筋肉の収縮を単収縮と呼びます。

低い周波数で刺激すると筋肉が十分に弛緩してから次の刺激が加わるため個々の収縮が分離しやすくなります。

しかし、周波数を高くすると前の収縮が終わる前に次の刺激が加わります。

その結果、筋張力が重なって大きくなります。

これを収縮の加重と呼びます。

さらに周波数を高くすると筋張力の変動が小さくなり持続的な収縮に近づきます。

これが強縮です。

収縮の種類筋肉の反応
単収縮1回の刺激に対する収縮と弛緩
加重前の収縮が終わる前に次の刺激が加わり筋張力が重なる
不完全強縮筋張力の変動が残った持続的な収縮(10~15Hz)
完全強縮個々の収縮が融合し比較的滑らかな筋張力が続く(15Hz以上)

ただし、何Hzで強縮が生じるかは筋肉の種類や収縮特性によって異なります。

また、周波数を上げることで筋張力が増加するのは主に個々の運動単位の収縮が時間的に加重するためです。

刺激強度を上げて新たな運動単位を動員することとは区別して考える必要があります。

100Hzなら筋肉は1秒間に100回収縮する?

ここも初級者が混同しやすい部分です。

100Hzとは、1秒間に100回のパルスが発生するという意味です。

それぞれのパルスによって神経が興奮する可能性はありますが、必ずすべてのパルスに対して活動電位が発生するとは限りません。

さらに筋肉の機械的な収縮は活動電位よりも長い時間をかけて起こります。

そのため、100Hzで刺激したからといって、筋肉が1秒間に100回の独立した収縮と弛緩を繰り返すわけではありません。

むしろ、条件によっては個々の収縮が融合し持続的な筋張力として観察されます。

パルスの回数、神経の活動電位、筋肉の収縮は、それぞれ別の現象です。

この違いを理解することが周波数と筋収縮の関係を考えるうえで重要になります。

NMESは周波数が高いほど筋力は強くなるのか?

筋収縮の加重を考えると周波数を高くするほど大きな筋力が得られるように思えます。

実際に一定の条件では周波数を上げることで筋張力が増加します。

しかし、筋張力の増加には限界があります。

また、大きな筋力を発生させることと、その筋力を繰り返し維持できることは別の問題です。

この関係を調べたヒトの研究を紹介します。

20Hz・50Hz・100Hzで筋力と疲労を比較した研究

Dreibatiら(2010)は健康成人26名を対象に大腿四頭筋への電気刺激が筋力と筋疲労に与える影響を調べました。

使用した周波数は20Hz、50Hz、100Hzです。

電気刺激は5秒間の収縮と15秒間の休息を繰り返し合計60回の筋収縮を行いました。

1回のセッションは20分間です。

筋力は最大随意収縮(MVC)を基準とした割合で評価されました。

100Hzでは刺激開始時にMVCの71%に相当する筋力が得られました。

しかし、60回の収縮を繰り返した後には筋力が大きく低下していました。

周波数60回目の筋力
20Hz38%MVC
50Hz33%MVC
100Hz27%MVC

※Dreibatiら(2010)の報告値。MVCは最大随意収縮を意味します。

この研究では、刺激開始時に高い周波数ほど大きな筋力が得られる傾向が認められました。

しかし、収縮を繰り返すと高い周波数ほど筋力低下が大きくなり、終了時には20Hzが38%MVC、50Hzが33%MVC、100Hzが27%MVCとなりました。

100Hzでは開始時に71%MVCという大きな筋力が得られていたにもかかわらず、終了時には27%MVCまで低下しています。

この結果から、高い周波数によって強い筋収縮を得られても、その筋力を繰り返し維持できるとは限らないことが分かります。

ただし、これは大腿四頭筋に対して60回の収縮を行った研究です。

すべての筋肉や刺激条件で20Hzが最も優れているという意味ではありません。

同じ筋トルクでも周波数によって疲労が違う?

さらに興味深いのがGregoryら(2007)の研究です。

この研究ではヒト10名を対象に電気刺激の周波数とパルス幅を変化させ、筋トルクと疲労への影響を検討しました。

研究では、刺激列全体の電荷量をそろえながら周波数やパルス幅の異なる条件を比較しています。

その結果、総電荷量が同じ刺激列では同程度の筋トルクが得られた一方、高い周波数の条件では筋疲労が大きくなりました。

この研究が重要なのは単に高い周波数で筋力が大きくなったという比較ではない点です。

同程度の筋トルクが得られていても刺激条件によって疲労の程度が異なったのです。

つまり、筋収縮を目的とする電気刺激ではどれだけ大きな筋力を発生させるかだけでなくその筋力をどの程度維持できるかも考える必要があります。

筋力を発生させることが目的なのか反復的な筋収縮を行うことが目的なのかによって周波数を選択する考え方も変わります。

周波数によって痛みへの作用も変わるのか?

ここまでは筋収縮を中心に説明してきました。

しかし、電気治療では筋収縮だけでなく疼痛の軽減を目的とすることもあります。

その代表的な方法がTENS(経皮的電気神経刺激)です。

TENSでは電気刺激によって末梢神経に入力を与え痛みの伝達や調節に関わる神経系へ作用することを目的とします。

ここでも周波数は重要な刺激条件の一つです。

ただし、筋収縮と鎮痛では評価している生体反応が異なります。

筋収縮では筋張力や疲労などを測定できますが鎮痛では痛みの強さや痛覚閾値などを評価します。

そのため、筋収縮で有利な周波数が、そのまま鎮痛にも適しているとは限りません。

4Hzと110Hzを比較したヒト研究

Chestertonら(2003)は健康成人240名を対象に、TENSの周波数、刺激強度、電極位置が圧痛閾値に与える影響を調べました。

周波数は4Hzと110Hz、パルス幅は200μsです。

刺激強度には、強いが快適な刺激と、耐えられる範囲で最大の刺激を設定しました。

また、刺激部位についても分節性の部位、分節外の部位、それらを組み合わせた条件を比較しています。

その結果、高周波・高強度で分節性の部位、または複数の部位を組み合わせて刺激した条件では、比較的速やかな圧痛閾値の上昇が認められました。

特に高周波・高強度の分節性刺激では、刺激終了後20分間にわたって効果が持続しました。

一方、その他の刺激条件では偽刺激群と同程度の反応にとどまったと報告されています。

ここで重要なのは、110Hzという周波数だけが結果を決めたわけではないことです。

刺激強度や電極位置との組み合わせによって、圧痛閾値への影響が異なっていました。

また、この研究は健康成人の実験的な圧痛閾値を評価したものであり、慢性疼痛患者の症状改善を直接示したものではありません。

4Hzと100Hzで痛覚過敏への作用は異なる?

GopalkrishnanとSluka(2000)は、炎症モデルラットを用いてTENSの周波数と痛覚過敏の関係を調べました。

後肢に炎症を誘発したラットに対して、4Hzまたは100HzのTENSを20分間行っています。

刺激強度は感覚レベルと運動レベル、パルス幅は100μsと250μsを比較しました。

その結果、100HzのTENSでは熱刺激と機械刺激に対する一次痛覚過敏が軽減しました。

一方、4Hzでは同様の効果が認められませんでした。

ただし、この結果から4Hzには鎮痛作用がないと結論づけることはできません。

この研究は炎症モデルラットの一次痛覚過敏を対象としたものであり、ヒトの臨床疼痛や他の痛覚評価にそのまま当てはめることはできないためです。

これらの研究を整理すると、次のようになります。

研究対象周波数主な評価
Chestertonら(2003)健康成人240名4・110Hz圧痛閾値
Gopalkrishnanら(2000)炎症モデルラット4・100Hz熱・機械刺激による痛覚過敏

どちらも周波数が鎮痛反応に関係することを示していますが、対象も評価方法も異なります。

電気治療の周波数を考える際には、何Hzで刺激したかだけでなく、どのような生体反応を評価した研究なのかを確認する必要があります。

同じ100Hzでも同じ電気刺激とは限らない

ここまでの内容からHzは電気治療の重要な設定であることが分かります。

しかし、周波数だけで電気刺激の特徴を説明することはできません。

例えば、同じ100Hzでもパルス幅が100μsの場合と300μsの場合では神経に与える刺激の時間的な特徴が異なります。

また、刺激強度が低ければ感覚神経の興奮による刺激感が中心となり強度を上げることで運動神経も興奮し、筋収縮が生じる場合があります。

パルス幅と刺激強度の関係

神経を興奮させるために必要な刺激強度はパルス幅によって変化します。

一般に、パルス幅が短い場合には神経を興奮させるために高い刺激強度が必要となり、パルス幅が長くなると必要な刺激強度が低下する傾向があります。

これは強さ–時間曲線(strength–duration curve)として知られる関係です。

つまり、100Hzという周波数が同じであっても、パルス幅と刺激強度が異なれば、興奮する神経や実際の反応が変わる可能性があります。

ただし、パルス幅を長くすれば必ず治療効果が高くなるわけではありません。

刺激に伴う不快感やどの神経が興奮するかといった問題も関係するためです。

パルス幅は別の記事でまたご紹介していきます。

電極位置によっても反応は変わる

電気刺激による神経の興奮は、電極の位置や電流が流れる経路にも影響されます。

同じ周波数、同じパルス幅、同じ刺激強度であっても、電極位置が変われば刺激される神経や筋肉が異なることがあります。

特にNMESでは、運動神経の走行や運動点との位置関係が筋収縮の得られ方に影響します。

TENSでは、刺激部位によって痛覚調節への作用が変わる可能性があります。

また、鍼通電では刺鍼部位や鍼電極の配置によって、刺激される組織や神経の条件が変わります。

そのため、同じ100Hzであっても、TENS、NMES、鍼通電で同じ反応が得られるわけではありません。

周波数は電気刺激を構成する条件の一つであり、それだけで生体反応が決まるものではないのです。

臨床でHzをどう考えるか?

ここまで、周波数の物理的な意味から筋収縮、筋疲労、鎮痛との関係まで説明してきました。

では、実際の臨床ではHzをどのように考えればよいのでしょうか。

私が重要だと考えているのは、周波数を決める前に、どのような反応を得たいのかを明確にすることです。

例えば、筋収縮を目的とする場合には、必要な筋張力を得られるか、収縮を繰り返しても疲労が大きくなりすぎないかを考える必要があります。

周波数を上げることで大きな筋張力が得られる場合がありますが、筋疲労が増加することも研究で示されています。

一方、疼痛の軽減を目的とする場合には、周波数だけでなく刺激強度や電極位置も重要になります。

感覚レベルの刺激を行うのか、筋収縮を伴う刺激を行うのかによっても、生体への入力は異なります。

特に鍼通電では、同じ周波数でも刺鍼部位や刺激強度によって、患者さんが感じる刺激や筋収縮の程度が変わります。

そのため、設定画面に表示されたHzだけで判断するのではなく、実際にどのような反応が生じているかを確認することが大切です。

Hzを考えるときに確認したいこと

確認する項目臨床で考えること
目的筋収縮、感覚入力、疼痛軽減など
周波数刺激の繰り返し頻度
刺激強度感覚レベルか運動レベルか
パルス幅神経の興奮しやすさへの影響
刺激部位どの神経や筋肉に入力するか
実際の反応筋張力、疲労、刺激感、疼痛の変化

例えば、筋収縮を目的として50Hzを設定したとしても、十分な筋収縮が得られなければ、その数字だけでは目的を達成したことにはなりません。

逆に、低い周波数でも目的に合った筋収縮が得られ、疲労を抑えながら刺激できる場合もあります。

ただし、低い周波数が常に優れているわけでもありません。

重要なのは、目的と実際の生体反応を踏まえて設定を考えることです。

臨床でHzをどう考えるか?

ここまで周波数の基本的な意味と、筋収縮や筋疲労、鎮痛への影響について説明してきました。

では、実際の臨床では何Hzを選択すればよいのでしょうか。

電気治療では、目的とする生体反応によって使用される周波数が異なります。

例えば、筋肉を単収縮させたい場合と、持続的に収縮させたい場合では、適した周波数は同じではありません。

また、疼痛の軽減を目的とする場合には、筋収縮とは異なる視点から周波数を考える必要があります。

まずは、研究や臨床で使用されている代表的な周波数を整理してみましょう。

目的周波数の目安主な考え方
単収縮を確認する1〜5Hz程度個々の収縮と弛緩を観察しやすい
持続的な筋収縮(NMES)30〜50Hz程度比較的滑らかな筋収縮を得やすい
筋疲労を考慮したNMES20〜35Hz程度も検討筋張力と疲労のバランスを確認する
低頻度TENS2〜10Hz程度筋収縮を伴う刺激条件も用いられる
高頻度TENS50〜100Hz程度強く快適な感覚刺激がよく用いられる
低頻度鍼通電2Hz前後鎮痛機序に関する基礎研究で使用される
高頻度鍼通電100Hz前後低頻度とは異なる神経応答が研究されている

※この表は研究や臨床で用いられる代表的な設定を整理したものであり、すべての患者や疾患に対する最適値を示すものではありません。

筋収縮を目的とする場合

筋収縮を目的とする神経筋電気刺激(NMES)では、30〜50Hz程度が一つの目安になります。

周波数が低い場合には個々の筋収縮が分離しやすくなりますが、周波数を高くすると筋張力が加重し、持続的な筋収縮を得やすくなります。

GlavianoとSaliba(2016)は、大腿四頭筋の筋力強化を目的としたNMESに関する研究を整理し、30〜50Hz程度の周波数と400〜600μs程度のパルス幅を、筋力発揮と刺激時の不快感、筋疲労などを考えるうえで参考となる設定として紹介しています。

ただし、30Hzで十分な筋張力が得られる場合もあれば、50Hz程度が必要になる場合もあります。

また、刺激強度が不十分であれば、適切な周波数を選んでも目的とする筋収縮が得られないことがあります。

そのため、NMESでは周波数だけを設定するのではなく、実際に得られる筋収縮の程度を確認することが重要です。

特に筋力強化を目的とする場合には、周波数の数字そのものよりも、十分な筋張力を発生させられているかが重要な評価項目になります。

筋疲労を抑えたい場合

筋収縮を繰り返す場合には、筋疲労も考慮する必要があります。

前述したDreibatiら(2010)の研究では、100Hzは刺激開始時に大きな筋力が得られた一方、収縮を繰り返すことで筋力が大きく低下しました。

このような結果を考えると、必要以上に周波数を高くしないことは、筋疲労を考慮するうえで一つの選択肢になります。

例えば、20〜35Hz程度の比較的低い周波数で十分な筋収縮が得られるのであれば、その設定を検討する余地があります。

ただし、周波数を下げれば必ず筋疲労が少なくなるというわけではありません。

周波数が低すぎると、目的とする筋張力を得られない場合もあります。

また、筋疲労には刺激強度やパルス幅、収縮時間、休息時間なども関係します。

例えば、同じ50Hzでも、5秒間収縮させて15秒間休息する場合と、5秒間収縮させて5秒間休息する場合では、疲労の程度が異なる可能性があります。

つまり、筋疲労を考える際には、周波数だけでなく、刺激と休息をどのように組み合わせるかも重要です。

臨床では、必要な筋張力を確保しながら、反復による筋力低下が大きくなりすぎない条件を考える必要があります。

TENSで鎮痛を目的とする場合

TENS(経皮的電気神経刺激)では、刺激パルスの繰り返し頻度によって、低頻度TENSと高頻度TENSという分類が使われます。

低頻度TENSでは2〜10Hz程度、高頻度TENSでは50〜100Hz程度が代表的な設定です。

ここでいう低頻度・高頻度は、刺激パルスの繰り返し頻度を比較した表現であり、電流の周波数帯としての低周波・高周波とは区別する必要があります。

高頻度TENSでは、強いものの快適に感じられる感覚刺激を用いる方法が広く研究されています。

一方、低頻度TENSでは、筋収縮を伴う程度まで刺激強度を上げる方法も使用されています。

ただし、高頻度TENSだから感覚刺激だけ、低頻度TENSだから必ず筋収縮を起こすという決まりではありません。

また、低頻度TENSと高頻度TENSのどちらが優れているかは、周波数だけで判断できません。

Chestertonら(2003)は健康成人を対象に4Hzと110HzのTENSを比較し、刺激強度や電極位置によって圧痛閾値への影響が異なることを報告しています。

この結果からも、周波数だけでなく、どの程度の刺激強度で、どの部位に刺激を加えるかが重要であると考えられます。

また、研究で使用された周波数が、すべての疼痛疾患に対して最適であると証明されているわけではありません。

そのため、TENSで鎮痛を目的とする場合には、周波数を選択したうえで、刺激強度や電極位置、患者さんの疼痛の変化を確認する必要があります。

鍼通電では何Hzを選ぶのか?

鍼通電では、2Hz前後の低頻度刺激と100Hz前後の高頻度刺激が、鎮痛機序に関する基礎研究でよく比較されています。

特にHanらの研究では、2Hzと100Hzの鍼通電によって、内因性オピオイド系への作用が異なる可能性が報告されています。

低頻度刺激ではエンケファリンやβエンドルフィン、高頻度刺激ではダイノルフィンなどの関与が研究されています。

ただし、これらは主に基礎研究から得られた知見です。

2Hzでは必ずエンケファリンが放出され、100Hzでは必ずダイノルフィンが放出されるという単純な関係ではありません。

また、神経ペプチドの関与が異なることと、臨床で得られる鎮痛効果に優劣があることは別の問題です。

鍼通電では、周波数だけでなく刺鍼部位や刺激強度、刺激する神経や筋肉の条件によっても反応が変わります。

例えば、2Hzの鍼通電で明確な筋収縮が生じる場合もあれば、100Hzでも刺激強度によっては筋収縮がほとんど認められない場合があります。

そのため、鍼通電においても、2Hzと100Hzのどちらが優れているかを一律に決めることは難しいと考えられます。

臨床では、どのような反応を目的とするのかを明確にしたうえで、周波数と刺激強度、刺鍼部位を組み合わせて考える必要があります。

周波数は設定の出発点

ここまで代表的な周波数を紹介しましたが、最も重要なのは数字を暗記することではありません。

例えば、筋収縮を目的として50Hzを設定しても、十分な筋収縮が得られなければ、その設定だけで目的を達成したとはいえません。

一方、30Hzで十分な筋収縮が得られ、疲労も少なく反復できるのであれば、その条件が適している可能性があります。

鎮痛を目的とする場合も同様です。

100Hzを設定したから鎮痛効果が得られるのではなく、実際の刺激強度や刺激部位、疼痛の変化まで確認する必要があります。

特に電気治療では、同じ周波数でもパルス幅や刺激強度、電極位置によって生体反応が変わります。

周波数の目安を知ることは大切ですが、最終的には目的と実際の生体反応を踏まえて設定を判断することが重要です。

まとめ

Hzは周波数を表す単位で、低周波パルス刺激では基本的に1秒間に発生するパルスの数を示しています。

周波数が高くなるとパルスの間隔が短くなり筋収縮の加重や強縮が生じやすくなります。

ただし、周波数を高くすれば必ず大きな筋力が得られるわけではなく、筋張力の増加には限界があります。

また、高い周波数では筋疲労が大きくなる場合があることもヒト研究で報告されています。

疼痛に対する作用についても、周波数によって反応が変わることが研究されていますが、刺激強度や電極位置などの条件も重要です。

電気治療器のHzは、治療効果そのものを表す数字ではありません。

Hzが示しているのは刺激の繰り返し頻度であり、その刺激によって何が起こるかは、周波数と他の刺激条件、生体側の反応によって決まります。

電気治療の設定を考える際には、まずHzという数字が何を意味しているのかを理解し、そのうえで目的に合った生体反応が得られているかを確認することが重要だと考えています。

参考文献

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