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― 上位交差性症候群に対するアプローチ ―
胸鎖乳突筋(sternocleidomastoideus, SCM)は、現代臨床において頻繁に観察される筋緊張亢進部位であり、上位交差性症候群(Upper Crossed Syndrome, UCS)における重要な関連筋の一つです。この記事では、「胸鎖乳突筋への摘み押手の刺鍼」手技を中心に、その適応・操作・臨床的意義を整理します。
1. 胸鎖乳突筋の解剖学的背景と機能的意義
胸鎖乳突筋は、胸骨頭・鎖骨頭を起始とし、乳様突起・上項線外側部へ停止します。単独収縮で頸部の側屈および反対側回旋、両側収縮では頸部屈曲を担い、呼吸補助筋としても機能します。
日常臨床では、次のような病態で緊張・短縮を認めます。
- デスクワーク・スマートフォン使用による頭部前方位
- 僧帽筋・肩甲挙筋の過緊張
- 胸筋群の短縮による肩内旋傾向
- 呼吸の補助過多・交感神経優位状態
この結果、上位交差性症候群の典型パターン(頸伸展筋群・胸筋群の短縮と、頸屈筋群・肩甲下制筋群の抑制)を形成しやすくなります。胸鎖乳突筋はその交点に位置し、筋緊張と姿勢の両側面から治療対象として重要です。
2. 摘み押手(つまみおして)による操作原理
「摘み押手」とは、筋腹を指頭で把持し、軽度の圧を加えながら鍼を進める操作法であり、頸部・顔面部の浅層筋において安全かつ確実に鍼先をコントロールできる技術です。
操作手順
- 体位:側臥位で頸部を伸展。
- 触診:胸鎖乳突筋を鎖骨頭付近から乳様突起方向へ走査し、索状硬結・圧痛部を確認。
- 摘み操作:母指と示指で筋腹を軽くつまみ上げ、後頸部・深部組織を避ける。
- 刺鍼:筋線維方向に対しやや斜めに、5〜10mm程度を目安に刺入。深追いせず、局所反応を確認。
- 雀啄 or 置鍼:症例により選択。自発痛や関連痛が再現される場合、軽度雀啄で解除反応を誘発。
- 抜鍼・軽擦:抜鍼後、軽度の摩擦・伸展操作を行い、血流促進を図る。
この手技では、摘み操作により筋の位置を安定させ、頸動脈・内頸静脈などの重要構造から鍼を安全に離隔できる点が大きな利点です。
3. 臨床応用と評価ポイント
(1) 上位交差性症候群への応用
UCSでは、胸鎖乳突筋の過緊張が頸部伸展筋群の代償性活動を助長し、頸後面の疼痛や肩上挙制限を引き起こします。胸鎖乳突筋への刺鍼によって:
- 頸部前面の過緊張緩和
- 胸郭上部の可動性改善
- 呼吸補助筋活動の正常化
- 視線・頭位の安定化
といった全身的な運動連鎖の改善が期待できます。
(2) トリガーポイント治療の観点
胸鎖乳突筋のトリガーポイントは、
- 前頭部・眼窩周囲の痛み
- 耳周囲の圧迫感
- 頭重感・浮遊感(めまい様症状)
などを誘発することが知られています。刺鍼による局所反応(局所単収縮)確認は、治療効果判定の指標となります。
4. 安全管理と禁忌事項
頸部は血管・神経構造が密集する部位であるため、特に以下の点に留意が必要です。
- 刺入方向:後方・深部へ進めない(頸動脈・頸静脈・迷走神経を避ける)。
- 圧迫止血:抜鍼後は軽度圧迫を必ず実施。皮下出血予防。
- 患者体調:低血圧・出血傾向・抗凝固薬使用者は注意。
- 疼痛反応:刺鍼時に鋭痛・放散痛が強い場合は即時抜鍼。
- 手技訓練:実技未経験者は熟練指導者の下で実施。
安全確保を前提に、摘み押手の「触診精度」と「圧制御」が臨床精度を左右します。
5. 併用すべき補助療法
胸鎖乳突筋刺鍼後は、以下のアプローチを組み合わせることで、治療効果をより安定させることが可能です。
- 前頸部・肩甲帯の筋膜リリース(特に大胸筋・斜角筋群)
- 呼吸運動指導:横隔膜呼吸の促進
- 姿勢修正:耳垂−肩峰−大転子の一直線意識
- 運動療法:頸屈筋群(深頸屈筋)の再教育
- 自宅セルフケア:温罨法・頸部ストレッチ
このように、刺鍼単独ではなく「動作と構造の再教育」をセットで考えることが、上位交差性症候群の再発防止につながります。
6. まとめと臨床的示唆
「胸鎖乳突筋への摘み押手刺鍼」は、頸前面の過緊張・頭頸部関連痛・姿勢異常の是正に有用な手技です。安全性と効果を両立させるためには:
- 筋の走行・深度の正確な把握
- 摘み押手による安全な鍼先コントロール
- 姿勢・動作との関連性を意識した全体治療
が求められます。
本手技は、上位交差性症候群に限らず、慢性頭痛・顎関節症・頸肩部違和感など幅広い症例に応用可能です。臨床の現場で、ぜひ慎重かつ柔軟に取り入れてみてください。



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