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それでは内容に入っていきましょう‼
はじめに

スポーツ現場で頻繁に遭遇するシンスプリント(脛骨過労性骨膜炎、医学的には内側脛骨ストレス症候群:MTSS)は、アスリートの活動を大きく制限する厄介な疾患です。
ランナーやサッカー選手など、繰り返しの衝撃負荷を受けるアスリートの4%から35%に発症すると報告されており[2]、その治療法の確立は臨床現場で重要な課題となっています。
近年、このシンスプリントに対する新たな治療アプローチとして、ドライニードリング(DN)や鍼通電療法(電気鍼)が注目を集めています。
この記事では、2025年に発表された最新の無作為化比較試験を中心に、複数の研究エビデンスを統合しながら、シンスプリントに対する鍼灸治療の効果と可能性について考察していきたいと思います。
シンスプリントの病態理解

発症メカニズムと解剖学的背景
シンスプリントの病態を理解するうえで、まず押さえておくべきは脛骨後内側縁に付着する筋群の解剖学的関係性です。従来、後脛骨筋がシンスプリントの主要な原因筋とされてきましたが、詳細な解剖研究により、実際にはヒラメ筋と長趾屈筋が脛骨後内側縁に直接付着していることが明らかになっています[28]。
特にヒラメ筋は、ランニング時に体重の8倍もの負荷を吸収する重要な筋肉であり[23]、その筋線維がシャーピー線維を介して脛骨骨膜に強力に付着しています。この牽引力が過度になると骨膜炎を引き起こし、シンスプリント特有の痛みが生じると考えられています。
興味深いことに、解剖学的研究では男性の約33%、女性の72.5%でヒラメ筋が脛骨遠位1/3まで付着していることが示されており[23]、これが女性アスリートにシンスプリントの発症率が高い理由の一つと考えられています。
筋膜性トリガーポイントの役割
シンスプリントの痛みには、筋膜性トリガーポイント(MTrPs)が深く関与していると考えられています。トリガーポイントとは、筋肉内に形成される過敏な緊張した索状硬結であり、局所的な痛みだけでなく関連痛を引き起こす特徴があります。
ヒラメ筋のトリガーポイントは、特に足関節の背屈制限と関連があることが報告されており[25-27]、シンスプリント患者における機能制限の一因となっている可能性があります。したがって、これらのトリガーポイントへの介入は、痛みの軽減だけでなく機能改善にもつながると期待されます。
ドライニードリングの基礎と効果機序

ドライニードリングとは
ドライニードリング(DN)は、薬液を注入せずに細い鍼を筋膜性トリガーポイントに刺入する治療技術です。鍼灸(伝統的な東洋医学)とは異なり、西洋医学的な解剖学と神経生理学に基づいたアプローチであり、1940年代から発展してきた比較的新しい治療法といえます[18]。
トリガーポイントに鍼を刺入すると、局所的な筋収縮反応(Local Twitch Response: LTR)が生じます。この反応は、過緊張状態にあった筋線維が「リセット」されることを示唆しており、治療効果の重要な指標とされています[13]。
痛み軽減の生理学的メカニズム
ドライニードリングによる鎮痛効果には、複数の生理学的メカニズムが関与していると考えられています:
- 局所循環の改善: 鍼刺入による微小な組織損傷が、血流増加を促し、発痛物質の除去と酸素・栄養素の供給を促進します[17]
- 内因性オピオイドの放出: 鍼刺激により、エンケファリンやエンドルフィンなどの内因性鎮痛物質が放出されることが示されています[17]
- 下行性疼痛抑制系の活性化: 中枢神経系における痛み制御機構が活性化され、痛覚閾値が上昇する可能性があります[18,19]
- サブスタンスPの減少: 鍼刺激により、痛みの伝達に関与する神経ペプチドであるサブスタンスPの局所濃度が減少することが報告されています[20]
- ゲートコントロール理論: 機械的受容器の刺激により、痛覚入力が脊髄レベルでブロックされる「ゲート」が閉じると考えられています[16]
シンスプリントへのドライニードリング:最新エビデンス

2025年無作為化比較試験の知見
Singh らによる2025年の研究は、シンスプリント患者50名(大学レベルのアスリート)を対象に、ヒラメ筋のトリガーポイントへのドライニードリングの短期効果を評価した無作為化比較試験です。
研究プロトコル:
- 介入群(25名):ヒラメ筋へのドライニードリング + ストレッチング
- 対照群(25名):ストレッチングなしの通常活動のみ
- 治療頻度:週3回(隔日)、計1週間
- 使用鍼:0.25mm × 40mm ステンレス鍼、2本使用
- 刺入深度:約40mm(ヒラメ筋内のトリガーポイント)
- 置鍼時間:局所収縮反応誘発後15分間
- 評価項目:疼痛(NPRS)、足関節背屈可動域
主要な結果:
介入群では、数値的疼痛評価スケール(NPRS)が治療前の7点から治療後の2点へと劇的に改善しました(p < 0.001)。一方、対照群では7点から7点へとむしろわずかな悪化傾向が見られました(p = 0.009)。この結果は、ドライニードリングがシンスプリント関連痛に対して、わずか1週間という短期間で顕著な効果を示すことを示唆しています。
しかしながら、足関節背屈可動域については、介入群で統計的に有意な改善は認められませんでした(p = 0.138)。これは、1週間という短い介入期間や、治療直後の測定タイミングが、組織の修復過程における炎症反応の影響を受けた可能性が考えられます。
他の支持的研究
サッカー選手を対象とした研究[22,29]: Dogra and Singh(2024)は、シンスプリントを有する大学レベルのサッカー選手22名を対象に、ヒラメ筋へのドライニードリング単回治療の効果を検討しました。その結果、介入群では圧痛閾値(PPT)とMTSSスコアが対照群と比較して有意に改善したことが報告されています。
2002年の先駆的研究[5,6]: Matt Callison らによる40名のアスリートを対象とした研究では、鍼治療単独群、スポーツ医学的治療単独群、両者併用群の3群を比較しました。その結果、鍼治療群と併用群が、スポーツ医学的治療単独群と比較して、痛みの軽減と抗炎症薬の使用減少において優れた効果を示しました[8]。
この研究では、脛骨の前縁または内側縁に沿って、10~15本の鍼を筋肉と骨の間に斜めに皮下刺入する技術が用いられています。興味深いことに、鍼治療を受けた群の80%で抗炎症薬の服用量が減少したのに対し、スポーツ医学的治療のみの群では減少が見られませんでした[5]。
骨間膜鍼治療[2]: 軍の医療施設で実施された症例シリーズでは、骨間膜への深部鍼刺入により、シンスプリント関連痛が介入直後から4週間にわたって臨床的に有意に減少したことが報告されています。この技術は、脛骨粗面の1寸遠位・1寸外側から骨間膜面まで75mm鍼を挿入し、さらに2寸遠位に同様に刺入して5分間不規則に刺激を加える方法です。
鍼通電療法(電気鍼)の追加的効果

鍼通電療法の原理
鍼通電療法(electroacupuncture)は、刺入した鍼に微弱な電気刺激を加える技術です。伝統的な鍼治療に電気刺激を組み合わせることで、刺激の強度と持続性を高め、より深部の組織へのアプローチが可能になります。
この技術は1950年代に中国で開発され、当初は手術時の鎮痛を目的として用いられました。現在では、慢性疼痛、筋筋膜性疼痛症候群、スポーツ傷害など、幅広い症状に応用されています。
ドライニードリングとの比較
2023年の比較研究[14,16]: Moro らは、僧帽筋の筋筋膜性疼痛症候群患者90名を対象に、以下の3群を比較しました:
- 第1群:トリガーポイントへのドライニードリング(電気刺激なし)
- 第2群:トリガーポイントへの鍼通電(2Hz、3-4mA)
- 第3群:運動点への鍼通電(2Hz、3-4mA)
その結果、すべての群で痛みの有意な改善が認められましたが、運動点への鍼通電(第3群)が疼痛軽減において最も優れた効果を示しました。この研究は、電気刺激の追加と標的部位の選択が治療効果に影響を与える可能性を示唆しています。
上部僧帽筋への応用研究[15]: イランで実施された研究では、上部僧帽筋の活性トリガーポイントを有する30名の患者を、ドライニードリング群と鍼通電群に分けて比較しました。両群とも痛みの強度、機能障害、筋厚の改善が認められましたが、群間での統計的有意差は示されませんでした。
これらの知見から、鍼通電療法は特に頑固な慢性疼痛や深部組織の問題に対して、ドライニードリング単独よりも強力な効果を発揮する可能性があると考えられます[12,13]。
電気刺激の生理学的効果
鍼通電療法による追加的効果には、以下のメカニズムが関与していると考えられます:
- 神経伝達物質の放出促進: 低周波刺激(2Hz)はエンケファリンの放出を、高周波刺激(100Hz)はダイノルフィンの放出を促進することが知られています[16,19]
- 血流改善の増強: 電気刺激により、鍼刺入単独よりも強力な血管拡張効果が得られ、深部組織への血流供給が改善されます[3,11]
- 筋収縮による緊張解放: 電気パルスによる筋収縮は、トリガーポイントや筋硬結の解放を促進する可能性があります[12]
- 骨・組織修復の促進: 電気刺激が組織修復過程を加速する可能性が示唆されています[11,17]
シンスプリントへの鍼通電療法の適用可能性
現時点では、シンスプリントに対する鍼通電療法の効果を直接検討した研究は限られています。しかしながら、以下の理由から、ヒラメ筋への鍼通電療法は理論的に有効である可能性があると考えられます:
1. 深部筋への効果的アプローチ
ヒラメ筋は下腿深部に位置する厚みのある筋肉であり、表層からの手技療法では十分な刺激が届きにくい可能性があります。鍼通電療法は、深部筋組織に直接的かつ持続的な刺激を与えることができるため、ヒラメ筋のトリガーポイントや過緊張部位へのアプローチとして理論的な優位性があります。
2. 慢性化したシンスプリントへの応用
急性期のシンスプリントに対してはドライニードリング単独でも十分な効果が期待できますが、3ヶ月以上持続する慢性的なシンスプリントに対しては、より強力な介入が必要となる可能性があります。鍼通電療法は、慢性疼痛に対してドライニードリング単独よりも優れた効果を示す傾向があることが報告されており[12,14]、慢性化したシンスプリント患者への応用が期待されます。
3. 骨膜への血流改善
シンスプリントの本態は脛骨骨膜炎であると考えられています。電気刺激による血流改善効果は、骨膜の炎症軽減と修復促進に寄与する可能性があります。特に、骨シンチグラフィーで広範な骨膜反応が認められるような重症例では、より積極的な血流改善アプローチが有効かもしれません。
4. 可動域改善への期待
前述のSinghらの研究では、ドライニードリング単独では足関節可動域の改善が認められませんでした。しかし、鍼通電療法による筋収縮と弛緩のサイクルは、筋の柔軟性改善に寄与する可能性があります[3,12]。治療期間を延長し、鍼通電を組み合わせることで、可動域改善が得られる可能性も考えられます。
内、BMI高値、既往歴など)に対する予防的な鍼治療の効果を検討することも意義があるかもしれません。
まとめ
現時点でのエビデンスを総合すると、ヒラメ筋のトリガーポイントへのドライニードリングは、シンスプリント関連痛の短期的軽減に有効である可能性が示されています。特に、従来の保存療法に抵抗性を示す症例や、早期の競技復帰を希望するアスリートにとって、有用な治療選択肢となりうると考えられます。
鍼通電療法については、シンスプリントへの直接的なエビデンスは限られていますが、他の筋筋膜性疼痛症候群での効果や理論的根拠から、特に慢性化した症例や重症例への応用が期待されます。ドライニードリング単独で十分な効果が得られない場合の次のステップとして、臨床的に検討する価値があると思われます。
ただし、鍼灸治療は単独で用いるのではなく、適切な負荷管理、ストレッチング、筋力強化、フォーム修正、必要に応じた足底挿板の使用など、包括的な治療プログラムの一部として位置づけることが重要です。
また、治療効果には個人差があることを認識し、定期的な評価に基づいて治療計画を柔軟に調整していく姿勢が求められます。
シンスプリントは、適切な介入により改善可能な疾患です。鍼灸治療という新たな治療選択肢を、エビデンスに基づいて適切に活用することで、より多くのアスリートが早期に痛みから解放され、パフォーマンスを最大化できることを期待したいと思います。
参考文献
[2] Successful Treatment of Medial Tibial Stress Syndrome with Interosseous Membrane Acupuncture: A Case Series. PMC. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8064924/
[3] Acupuncture for Shin Splints. Morningside Acupuncture NYC. 2025年9月9日. https://www.morningsideacupuncturenyc.com/blog/acupuncture-for-shin-splints
[4] Shin Splints-How acupuncture helps the two different types. Steve Phillips Acupuncture Clinic. 2021年8月30日. https://acupuncturehealingarts.com/shin-splints-acupuncture-helps-the-two-types/
[5] Acupuncture for Tibial Stress Syndrome (Shin Splints). Sports Medicine Acupuncture. 2019年8月2日. https://www.sportsmedicineacupuncture.com/acupuncture-for-tibial-stress-syndrome-shin-splints/
[6] Acupuncture for Tibial Stress Syndrome (Shin Splints). Pacific College. 2025年8月20日. https://www.pacificcollege.edu/news/blog/2014/11/14/acupuncture-for-tibial-stress-syndrome-shin-splints
[7] How Acupuncture Can Help Treat Shin Splints. 8 Point Wellness. 2023年9月18日. https://www.8pointwellness.com/blog/acupunctureandshinsplints
[8] Acupuncture for Shin Splints: Effective Strategies to Heal and Prevent Recurrence. ACA Acupuncture. 2025年7月10日. https://acaacupuncture.com/acupuncture-for-shin-splints-effective-strategies-to-heal-and-prevent-recurrence/
[9] Shin Splint Acupuncture Treatment. Raleigh Acupuncture. 2022年4月28日. https://raleighacupunctureinc.com/shin-splint-acupuncture-treatment/
[10] Treating shin splints with acupuncture. Hyatt Strength + Wellness. 2025年2月21日. https://hyatttraining.com/treating-shin-splints-with-acupuncture/
[11] How to Treat Shin Splints: Dry Needling, Electro-Acupuncture, and Recovery Tips. ArTeva Acupuncture. 2025年3月30日. https://www.artevaacupuncture.com/learn/treat-shin-splints-dry-needling-electro-acupuncture-and-recovery-tips
[12] Comparing Dry Needling vs Electroacupuncture. Morningside Acupuncture NYC. 2025年3月3日. https://www.morningsideacupuncturenyc.com/blog/comparing-dry-needling-and-electroacupuncture
[13] Electroacupuncture vs Dry Needling: What’s the Difference and When to Use Each? Pantheon Research, Inc. 2024年9月21日. https://pantheonresearch.com/blog/electroacupuncture-vs-dry-needling/
[14] Dry needling, trigger point electroacupuncture and motor point electroacupuncture for the treatment of myofascial pain syndrome involving the trapezius: a randomised clinical trial. PubMed. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37905789/
[15] The comparison between dry needling and electro-acupuncture of the upper trapezius on pain, ultrasonography changes, and functional disability of the upper limb in subjects with myofascial pain syndrome. Brieflands. 2023年10月1日. https://brieflands.com/articles/koomesh-154166


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