頭皮鍼と脳刺激の最新エビデンス:神経画像研究から見えてきた可能性

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頭皮鍼は、頭部の特定の領域に鍼を刺入することで、脳の対応する部位に働きかけ、さまざまな神経疾患に対する治療効果が期待されている手法です。

これまでの臨床実践では、主に伝統的な経験や解剖学的な位置関係に基づいて治療点が選ばれてきました。

しかし、近年の脳科学の進歩、特に神経画像技術の発展により、より科学的な根拠に基づいた治療点の選定が可能になってきています。

今回ご紹介するのは、2025年5月に発表された最新の研究論文です。

この研究では、大規模な神経画像研究のメタ解析を通じて、10種類の主要な神経疾患に対する頭皮鍼の刺激部位を特定し、科学的根拠に基づいた新しい治療プロトコルの開発を目指しています。

目次

研究の背景と意義

従来の課題

世界保健機関(WHO)や中国の標準では、頭皮鍼の基本的なガイドラインが確立されていますが、これらは主に解剖学的な位置づけや刺激ラインの適応症に焦点を当てているものでした。最も重要な点として、疾患ごとに特化した具体的な治療点やプロトコルが明確に示されていなかったことが、臨床応用における課題となっていました。

神経画像技術の活用

現代の神経画像技術、すなわちMRI、PET、SPECT、脳波計(EEG)、脳磁図(MEG)などは、脳の構造的・機能的な変化を詳細に観察することを可能にしています。これらの技術によって得られた知見を頭皮鍼の治療点選定に活用することで、より効果的で科学的根拠に基づいた治療が実現できる可能性があると考えられます。

また、非侵襲的脳刺激法、つまり反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)や経頭蓋直流電気刺激(tDCS)といった手法も、特定の脳領域の神経活動を調整することで治療効果を発揮することが知られています。これらの刺激法と頭皮鍼は、いずれも正確な刺激部位の特定が重要であるという共通点を持っています。

研究方法の詳細

Neurosynth Composeプラットフォームの活用

この研究では、「Neurosynth Compose」という最先端のプラットフォームを使用しています。このシステムは、膨大な数の脳画像研究論文のデータベースを持ち、高度なメタ解析ツールを提供しているものです。

研究チームは、2024年10月15日までに発表された論文を対象に、以下の10種類の神経疾患について系統的なメタ解析を実施しました。

対象となった神経疾患

  • 主観的認知機能低下(SCD)
  • 軽度認知障害(MCI)
  • アルツハイマー病(AD)
  • パーキンソン病(PD)
  • 多系統萎縮症(MSA)
  • 脳卒中後失語症(PSA)
  • 原発性進行性失語症(PPA)
  • ディスレクシア(読字障害)
  • 慢性疼痛
  • 意識障害(DoC)

論文の選定基準

研究に含められる論文には厳格な基準が設けられていました。

採用基準

  • 対象疾患と診断された参加者を含む研究であること
  • 患者群と健常者群、または治療群と対照群の比較が行われていること
  • MRI、PET、SPECTなどの神経画像技術が使用されていること
  • 3次元のタラリッヒ座標またはMNI座標が報告されていること

除外基準

  • 健常者のみを対象とした研究
  • 対象疾患が主要な焦点でない研究
  • 標準空間座標が提供されていない研究
  • 動物実験のみの研究
  • メタ解析、レビュー論文、症例報告

これらの基準に基づいて、各疾患について数十から数百の研究論文が分析対象として選ばれました。例えば、軽度認知障害については563件の論文から418件が採用され、9,664個の脳座標データが分析されています。

刺激部位の特定プロセス

分析では、偽発見率(FDR)補正を用いた統計的手法により、各疾患に関連する脳領域を特定しました。さらに重要なポイントとして、頭皮鍼は主に脳表面の皮質を刺激する手法であることから、頭皮から2.5cm以内の大脳皮質領域に焦点を当てて解析が行われました。

特定された脳領域については、国際標準の頭皮鍼刺激ラインや経穴(ツボ)、さらには脳波計測で用いられる10-20法の電極配置システムを用いて、実際の頭皮上の位置へと投影されました。これにより、臨床現場で実用的に使用できる形での情報提供が可能となっています。

主要な研究結果

認知機能障害に関する疾患

主観的認知機能低下(SCD)

主観的認知機能低下とは、本人が認知機能の低下を自覚しているものの、標準的な検査では明確な障害が検出されない状態を指します。この段階での早期介入が、アルツハイマー病への進行を遅らせる可能性があると考えられています。

研究では、54件の論文から78の解析と836の脳座標データが抽出され、6つの刺激部位が特定されました。

特定された刺激部位の詳細:

  • SCD-1: 右側の下前頭回・中前頭回(前頭前野、背外側前頭前野を含む)
    • 位置: GB14とTE23の中点を通る線に沿って上方向へ水平刺入
  • SCD-2: 右側の中・上前頭回(前頭前野、背外側前頭前野を含む)
    • 位置: GB14とTE23の中点を通る線に沿って下方向へ水平刺入
  • SCD-3: 右側の下頭頂小葉
    • 位置: BL8の0.5cm後方からGB9に向かって水平刺入
  • SCD-4: 左側の下頭頂小葉・角回
    • 位置: BL8からGB8への線の上半分
  • SCD-5: 左側の中・下側頭回
    • 位置: GB10からGB9へ
  • SCD-6: 右側の上頭頂小葉
    • 位置: BL8で後下方向へ水平刺入

特に注目すべき部位として、前頭前野(SCD-1、SCD-2)は実行機能や意思決定に、下頭頂小葉と角回(SCD-3、SCD-4)は視空間処理や注意機能に重要な役割を果たしていると考えられています。

軽度認知障害(MCI)

軽度認知障害は、主観的認知機能低下とアルツハイマー病の中間段階にあたり、軽度ではあるものの測定可能な認知機能の障害が認められる状態です。

この疾患については、418件の研究から700の解析と9,664個という膨大な数の脳座標データが分析され、9つの刺激部位が特定されました。

特定された刺激部位の詳細:

  • MCI-1: 右側の中後頭回・角回・頭頂葉・上側頭回
    • 位置: BL8から右GB9へ後下方向に刺入
  • MCI-2: 右側の中側頭回
    • 位置: 右GB7で前下方向へ横刺
  • MCI-3: 右側の中・上前頭回(前頭前野、背外側前頭前野を含む)
    • 位置: 右GB4からGB5への線の1cm前上方
  • MCI-4: 左側の上・中前頭回(背外側前頭前野)
    • 位置: 左GB16からGB17へ
  • MCI-5: 左側の前中心回・下前頭回
    • 位置: 左GB4からGB5へ
  • MCI-6: 左側の角回・縁上回・上頭頂小葉
    • 位置: 左BL8からGB9へ
  • MCI-7: 左側の中側頭回
    • 位置: 左GB7で前下方向へ横刺
  • MCI-8: 左側の中側頭回
    • 位置: 左SJ20で下方向へ横刺
  • MCI-9: 左側の下・中後頭回・下側頭回
    • 位置: GB10の1cm上方で下方向へ横刺

特に重要な部位として、背外側前頭前野(MCI-3、MCI-4)は記憶や実行機能、意思決定などの高次認知機能に深く関与しています。また、角回や頭頂葉(MCI-1、MCI-6)は、視空間認知や記憶の統合に重要な役割を果たしていると考えられます。

アルツハイマー病(AD)

アルツハイマー病については、362件の研究から572の解析と7,345個の脳座標データが分析され、4つの主要な刺激部位が特定されました。

特定された刺激部位の詳細:

  • AD-1: 右側の角回・縁上回
    • 位置: 右BL8からGB9へ
  • AD-2: 左側の角回・縁上回
    • 位置: 左BL8からGB9へ
  • AD-3: 左側の中・下側頭回
    • 位置: 左GB10で前方向へ横刺
  • AD-4: 左側の下側頭回・後頭側頭回
    • 位置: 左SJ20からGB10へ

特に両側の角回と縁上回(AD-1、AD-2)は、記憶の統合や空間認知に重要な役割を果たしています。また、側頭葉の領域(AD-3、AD-4)は、記憶処理や言語機能に関連しており、アルツハイマー病における特徴的な障害部位と一致しています。

認知機能障害疾患に共通する知見

興味深い点として、SCD、MCI、アルツハイマー病の3つの疾患において、角回をはじめとする頭頂葉の領域が共通して関与していることが明らかになりました。これは、空間的注意、多感覚統合、記憶といった機能におけるこれらの領域の中心的な役割を示唆しているものと考えられます。

また、下側頭回を含む側頭葉領域の関与は、認知機能低下の進行に伴う記憶や言語機能の障害の連続性を反映していると解釈できます。

運動障害に関する疾患

パーキンソン病(PD)

パーキンソン病は、振戦、固縮、動作緩慢などの運動症状を主徴とする進行性の神経変性疾患です。543件の研究から930の解析と14,388個の脳座標データが分析され、6つの刺激部位が特定されました。

特定された刺激部位の詳細:

  • PD-1: 右側の前中心回・後中心回
    • 位置: 右GB18からGB6への線の上2/3
  • PD-2: 右側の前中心回・中前頭回
    • 位置: 右GB17からGB6への線の上2/3
  • PD-3: 右側の下前頭回・中前頭回・前中心回
    • 位置: 右GB17からGB5へ
  • PD-4: 右側の中前頭回(前頭前野、背外側前頭前野を含む)
    • 位置: 右GB4で前下方向へ45度斜刺、1-2cm
  • PD-5: 左側の前中心回・後中心回・中前頭回・下前頭回
    • 位置: 左GV21からGB5への線の下2/3
  • PD-6: 左側の角回・下頭頂小葉
    • 位置: 左GB18で後方向へ刺入、1-2cm

前中心回と後中心回(PD-1、PD-2、PD-5)は一次運動野や一次体性感覚野に相当し、運動制御に直接的に関与しています。また、背外側前頭前野(PD-4)は運動計画や実行機能に、角回(PD-6)は運動症状と認知機能の両方に関連している可能性があります。

多系統萎縮症(MSA)

多系統萎縮症は、パーキンソン症状、小脳症状、自律神経障害などが組み合わさって現れる稀少な神経変性疾患です。28件の研究から59の解析と769個の座標データが分析され、7つの刺激部位が特定されました。

特定された刺激部位の詳細:

  • MSA-1: 左側の中前頭回(前頭前野、背外側前頭前野を含む)・下前頭回
    • 位置: 左GB14とTE23の中点で後方向へ横刺
  • MSA-2: 左側の中・上前頭回(前頭前野、背外側前頭前野を含む)
    • 位置: 左GB16の2cm外側で内側方向へ横刺
  • MSA-3: 右側の上前頭回(前頭前野、背外側前頭前野を含む)
    • 位置: 右GB16で内側方向へ横刺
  • MSA-4: 左側の下前頭回
    • 位置: 左GB5で前下方向へ横刺
  • MSA-5: 左側の中側頭回
    • 位置: 左GB9で後方向へ横刺
  • MSA-6: 左側の下・上頭頂回
    • 位置: 左BL8で後外側方向へ横刺
  • MSA-7: 右側の角回・上頭頂小葉
    • 位置: 右BL8で後外側方向へ横刺

前頭葉の背外側前頭前野(MSA-1、MSA-2、MSA-3)は、実行機能や運動制御において重要な役割を果たしています。また、頭頂葉の領域(MSA-6、MSA-7)は感覚運動統合に関与しており、MSAの運動症状や平衡機能障害に関連していると考えられます。

言語および言語関連障害

脳卒中後失語症(PSA)

脳卒中後失語症は、脳卒中によって言語機能が障害された状態です。83件の研究から128の解析と2,808個の座標データが分析され、3つの主要な刺激部位が特定されました。

特定された刺激部位の詳細:

  • PSA-1: 左側の中側頭回
    • 位置: 左GB7で前下方向へ横刺
  • PSA-2: 左側の中・上側頭回
    • 位置: 左GB9からSJ20へ
  • PSA-3: 左側の下・中前頭回(前頭前野、背外側前頭前野を含む)
    • 位置: 左GB4からGB6への線の0.5cm前方

これらの領域は、言語理解(側頭回)や言語産出(前頭回)において中心的な役割を果たしています。特にPSA-3の領域は、ブローカ野を含む言語産出の中枢部位であり、運動性失語症の治療において重要な標的となる可能性があります。

原発性進行性失語症(PPA)

原発性進行性失語症は、認知症の一種で、進行性の言語障害を主徴とするものです。53件の研究から78の解析と1,373個の座標データが分析され、6つの刺激部位が特定されました。

特定された刺激部位の詳細:

  • PPA-1: 右側の下前頭回
    • 位置: 右GB7の3cm上方で下方向へ刺入、1-2cm
  • PPA-2: 左側の前中心回・中前頭回
    • 位置: 左GB4からGB5への線の0.5cm後方
  • PPA-3: 左側の角回・下頭頂小葉
    • 位置: 左BL8からGB9への線の中央1/3
  • PPA-4: 左側の下前頭回
    • 位置: 左GB5からGB6への線の1cm前方
  • PPA-5: 左側の側頭回
    • 位置: 左GB8からGB10へ
  • PPA-6: 左側の側頭回
    • 位置: 左GB7で前下方向へ横刺

下前頭回(PPA-1、PPA-4)は言語産出に、側頭回(PPA-5、PPA-6)は言語理解や意味処理に、角回(PPA-3)は読字や言語の統合処理に重要な役割を果たしていると考えられます。

ディスレクシア(読字障害)

ディスレクシアは、発達性読字障害とも呼ばれ、知的能力は正常であるにもかかわらず、読字に特異的な困難を示す状態です。135件の研究から241の解析と3,942個の座標データが分析され、3つの刺激部位が特定されました。

特定された刺激部位の詳細:

  • Dys-1: 左側の下・中前頭回(前頭前野、背外側前頭前野を含む)
    • 位置: 左GB4からGB6へ
  • Dys-2: 左側の上・中側頭回・島皮質
    • 位置: 左GB9からSJ20へ
  • Dys-3: 左側の下後頭回・下側頭回
    • 位置: GB10の1cm上方で前下方向へ横刺

これらの3つの領域は、「読字神経ネットワーク」の中核を成す部分です。下・中前頭回(Dys-1)は音声産出と言語出力に、上側頭回(Dys-2)は音声知覚と言語理解に、下後頭回(Dys-3)は文字の解読と視覚情報処理に関与しています。これらの領域への刺激により、読字の流暢性が改善される可能性があると考えられます。

その他の重要な神経疾患

慢性疼痛

慢性疼痛については、251件の研究から455の解析と6,859個の座標データが分析され、7つの刺激部位が特定されました。

特定された刺激部位の詳細:

  • CP-1: 右側の上前頭回
    • 位置: GV29の1cm上方で下方向へ横刺
  • CP-2: 右側の上前頭回(前頭前野、背外側前頭前野を含む)
    • 位置: 右ST8からGB14への線の下1/3
  • CP-3: 右側の縁上回
    • 位置: 右GB8の2cm上方からGB6への線の上1/3
  • CP-4: 右側のローランド弁蓋回
    • 位置: 右GB8の2cm上方からGB6への線の下2/3
  • CP-5: 左側の下頭頂小葉
    • 位置: 左BL8からGB8への線の上1/3
  • CP-6: 左側の前中心回・後中心回(一次運動野・一次体性感覚野)
    • 位置: 左GB18の0.5cm下方からGB5への線の上1/3
  • CP-7: 左側の縁上回・後中心回・上側頭回
    • 位置: 左GB5からGB8への線の後半分

従来の標準では、疼痛の部位によって異なる刺激ラインが推奨されていましたが、本研究では一次運動野・一次体性感覚野(CP-6)や背外側前頭前野(CP-2)といった、より焦点を絞った部位が特定されました。特に一次運動野への刺激は、慢性疼痛の治療において非侵襲的脳刺激研究でも頻繁に用いられている標的であり、本研究の結果はこれらの知見と一致しています。

意識障害(DoC)

意識障害については、25件の研究から34の解析と498個の座標データが分析され、7つの刺激部位が特定されました。

特定された刺激部位の詳細:

  • DoC-1: 右側の中前頭回(前頭前野、背外側前頭前野を含む)
    • 位置: 右GB14で下方向へ水平刺入
  • DoC-2: 右側の縁上回
    • 位置: 右BL8からGB8への線の上1/3
  • DoC-3: 右側の上側頭回・ローランド弁蓋回
    • 位置: 右SJ20の1cm前方からGB6に向かって水平刺入
  • DoC-4: 右側の下前頭回
    • 位置: 右GB4で後下方向へ45度斜刺
  • DoC-5: 左側の上前頭回(前頭前野、背外側前頭前野を含む)
    • 位置: 左GB17からGB16へ
  • DoC-6: 左側の上・中前頭回(前頭前野、背外側前頭前野を含む)
    • 位置: 左BL6からGB16へ
  • DoC-7: 左側の中後頭回・角回・上頭頂小葉
    • 位置: 左BL8からGB10への線の上1/3

背外側前頭前野(DoC-1、DoC-5、DoC-6)は、意識や覚醒に関与する前頭頭頂ネットワークの重要な構成要素です。また、上側頭回(DoC-3)は聴覚処理と言語理解に、縁上回(DoC-2)は感覚統合と空間認識に、中後頭回(DoC-7)は視覚処理に関連しています。これらの部位への刺激が、外部刺激への反応性や知覚意識の改善につながる可能性が示唆されています。

頭皮鍼の作用機序に関する考察

神経経路の可能性

頭皮鍼が脳機能に影響を与える機序について、最近の研究では「三叉神経-髄膜-脳脊髄液-接触ニューロン-脳」という神経経路の関与が提唱されています。

片頭痛のラットモデルを用いた実験では、頭皮への鍼刺激が、顔面と硬膜からの入力が広作動域ニューロンで収束することを介して鎮痛効果を発揮することが示されています。また、前シナプス性の後根反射、後シナプス性の神経原性反応、収束性の神経経路などが、頭蓋内構造への影響に関与している可能性も指摘されています。

脳機能結合の増強

ヒトを対象とした研究では、特定の頭皮鍼刺激ライン(MS5、MS6、MS7など)への刺激が、認知、感覚統合、運動協調に関連する脳領域の機能的結合を増強することが示されています。

興味深い点として、頭皮への電気鍼刺激は、経頭蓋交流電気刺激(tACS)と類似した作用を持つと考えられています。tACSは、刺激部位を超えて神経振動や脳の結合性を調整できることが知られており、頭皮鍼も同様のメカニズムで広範な脳機能の調整を行っている可能性があります。

臨床応用への示唆

既存の治療プロトコルとの比較

研究チームは、特定された刺激部位を、中国の国家標準「鍼灸操作規範」や教科書に記載されている従来の治療プロトコル、さらには焦順発氏の頭皮鍼や金瑞氏の三針頭皮鍼システムといった広く認知されている手法と比較しています。

重要な発見として、本研究で特定された多くの部位は、これらの既存の手法と重複していることが確認されました。これは、伝統的な臨床経験に基づく治療点選定が、ある程度科学的な妥当性を持っていることを示唆しているものと考えられます。

同時に、本研究では従来の方法では特定されていなかった新しい刺激部位も複数同定されています。例えば、記憶処理に関連する下側頭回や、視空間注意に関わる角回などです。これらの新しい部位は、既存の治療プロトコルを補完し、より効果的な治療オプションを提供する可能性があると期待されています。

非侵襲的脳刺激研究との一致

特定された刺激部位の多くは、rTMSやtDCSといった非侵襲的脳刺激法を用いた既存の研究結果とも一致しています。

例えば、アルツハイマー病や軽度認知障害の研究では、背外側前頭前野、側頭葉、頭頂葉への刺激が、記憶、実行機能、感情調整の改善に効果的であることが報告されています。メタ解析の結果、非侵襲的脳刺激と認知トレーニングの組み合わせが、全般的な認知機能を効果的に改善することが示されています。

パーキンソン病においても、一次運動野や背外側前頭前野への高頻度rTMSが、運動症状やうつ症状の改善に効果を示すことが報告されています。これらの知見は、本研究で特定された刺激部位の臨床的妥当性を支持するものと考えられます。

実践的な治療ガイダンス

研究では、各刺激部位について、具体的な鍼の刺入位置、刺入方向、深さに関する推奨事項が提示されています。これらは、2名の経験豊富な鍼灸師による共同作業によって決定されたものです。

頭皮鍼の実施にあたっては、中国国家標準やWorld Federation of Acupuncture-Moxibustion Societies(WFAS)の技術基準に基づいた標準化されたプロトコルが推奨されています。これには、術前準備、鍼の選択(直径0.25mmまたは0.30mm、長さ40mmまたは50mmの使い捨て鍼)、刺入角度(頭皮に対して15-30度)、刺入深さ(帽状腱膜の皮下層に1-3cm)、刺激方法(1分間に200回転の捻鋼を2-3分間)などが含まれます。

研究の限界と今後の展望

本研究の限界点

研究チームは、いくつかの重要な限界点を認識しています。

第一に、本研究はNeurosynth Composeプラットフォームを用いたメタ解析に基づいているため、特定された刺激部位は文献データから導き出されたものです。今後、より質の高い研究が蓄積されるにつれて、これらの部位は進化していく可能性があります。

第二に、特定された部位のいくつかは既存の脳刺激や鍼灸研究と一致していますが、他の部位はまだ理論的な段階にとどまっており、臨床的な検証が必要です。

第三に、頭皮への投影では深部脳構造を考慮していません。研究チームは、頭皮鍼が直接的に深部脳構造に到達することは困難であると考えていますが、今後、深部構造と表面領域との機能的結合や白質線維束の解析を統合することで、この課題を克服できる可能性があります。

最後に、本研究では刺激部位の選定と鍼の刺入方向について提案していますが、刺激強度、頻度、持続時間といった具体的な治療パラメータについては、今後の研究課題として残されています。

今後の研究の方向性

個別化された治療プロトコルの開発

本研究で提示された刺激部位は、各疾患に共通する一般的な指針です。しかし、実際の臨床現場では、患者一人ひとりの脳の状態や症状の程度が異なります。今後は、個々の患者の神経画像データに基づいて、最適な刺激部位を決定する個別化医療の実現が期待されます。

臨床試験による効果の検証

新たに特定された刺激部位については、その有効性を確認するための前向き臨床試験が必要です。特に、従来の治療プロトコルとの比較研究や、非侵襲的脳刺激法との併用効果の検討などが重要になると考えられます。

深部脳構造との連絡の解明

頭皮鍼が直接到達しにくい海馬などの深部構造についても、表面領域との機能的・解剖学的結合を利用した間接的な刺激の可能性が示唆されています。このアプローチのさらなる研究により、治療効果の向上が期待されます。

作用機序の解明

頭皮鍼の正確な作用機序は、まだ完全には解明されていません。今後、神経生理学的測定や高度な神経画像技術を用いた研究により、どのようにして頭皮への刺激が脳機能の変化をもたらすのか、より詳細なメカニズムが明らかになることが期待されます。

おわりに

本研究は、神経画像研究の膨大なデータを系統的に解析することで、10種類の主要な神経疾患に対する頭皮鍼の科学的根拠に基づいた刺激部位を特定しました。この成果は、伝統医学と現代脳科学の橋渡しとなる重要な一歩であると考えられます。

特定された刺激部位の多くは、既存の臨床実践や非侵襲的脳刺激研究の知見と一致しており、これらの部位の臨床的妥当性を支持しています。同時に、新たに同定された部位は、既存の治療プロトコルを拡張し、より効果的な治療オプションを提供する可能性を秘めています。

もちろん、これらの知見を実際の臨床現場で活用するためには、さらなる臨床試験による検証が不可欠です。しかし、本研究が確立した神経画像に基づく系統的なアプローチは、頭皮鍼および脳刺激法の発展、そしてこれらの疾患に対する脳画像研究の進展に、貴重な洞察を提供するものと期待されます。

今後、この分野の研究がさらに進展し、より多くの患者さんに科学的根拠に基づいた効果的な治療が提供されることを願っています。


参考文献

Wu Y, Kong Q, Li Y, Feng Y, Zhang B, Liu Y, Yu S, Liu J, Cao J, Cui F, Kong J. Potential scalp acupuncture and brain stimulation targets for common neurological disorders: evidence from neuroimaging studies. Chin Med. 2025 May 7;20(1):58. doi: 10.1186/s13020-025-01106-0.

キーワード: 頭皮鍼、神経調整、神経画像、神経疾患、脳刺激、メタ解析、非侵襲的脳刺激、rTMS、tDCS

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