鍼通電の変形性膝関節症の論文レビューから考える

こんにちは。

陣内です。

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陣内です。

今回も論文をご紹介していきたいと思います。

いつもながら私は研究者でも教育者でもないので生温かく見守っていただければ幸いです。

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今回は、Advances in Electroacupuncture for Treatment of Knee Osteoarthritis: Mechanisms, Efficacy, and Future Directions(Wu X ら/2025年)をベースに、臨床現場で役立つように少し紐解いてみたいと思います。

変形性膝関節症(KOA=Knee Osteoarthritis)を対象に、電気併用鍼(EA=Electroacupuncture)が持つメカニズム・エビデンス・臨床応用のヒントを整理しましょう。

英語論文なので翻訳もおかしかったり研究者ではないので間違っているところもあると思います。(自分で確かめてね!)

実際のリンクはこちら

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目次

1.変形性膝関節症(KOA)とは何か/なぜEAが注目されるのか

まず、変形性膝関節症(KOA)を改めて整理します。症状としては「慢性的な膝痛」「関節のこわばり」「動きにくさ」「階段・立ち上がりがつらい」などが挙げられ、関節軟骨のすり減り、骨棘、滑膜(関節包内膜)の炎症、関節液の変化など、構造と機能の両方にダメージが出る疾患です。


年齢・体重(BMI)・運動量などの影響が大きく、高齢化・肥満化社会においてますます注目されてきています。
治療としては薬物(NSAIDsなど)・運動療法・体重管理・物理療法などが基本ですが、非薬物・侵襲少ない選択肢として「鍼・電気鍼」が補助的に活用できる可能性が高と思っています。


このレビュー論文は、EA がどのような多面的作用をもつか、臨床的にどれほど有効かを整理しており、鍼灸師として「なぜこういうアプローチが意味を持つのか」「どう現場で使えるか」を理解するうえでとても有益です。


2.EA の作用機序 ― 多層的なメカニズム

この論文によれば、EA が膝関節症に対して働くメカニズムは「炎症・軟骨代謝」「神経・鎮痛」「血流・組織修復・神経筋制御」という三つの大きな柱に分けられます。これらを鍼灸師の視点で整理してみましょう。

(1) 炎症・軟骨代謝を介する作用

  • EA によって、炎症性サイトカイン(例:TNF-α、IL-1β、IL-6)が低下するという基礎・動物実験の報告があります。 (PubMed)
  • 軟骨分解酵素(たとえばMMPs=マトリックスメタロプロテアーゼ)やアポトーシス(細胞死)が抑制され、コラーゲンや軟骨マトリックス(TIMP-1など)といった修復/保護因子が促される可能性が提示されています。 (PubMed)
  • シグナル伝達系の視点でも、NF-κB、MAPK(JNK/p38)・Wnt/β-カテニン・TGF-β/Smadなどが関与しており、これらを調整することで軟骨退行/修復のバランスに働きかけるという構図が示されています。 (PubMed)
  • また、滑膜(関節内膜)における自然免疫応答(たとえばToll-like receptor (TLR) 経路)が、OA 発症や進行において鍵になるという研究があり、EA がこの TLR 経路を抑制したというウサギモデルの研究も報告されています。 (rcastoragev2.blob.core.windows.net)
    このように、EA は「ただ痛みを取る」だけでなく、構造変化・炎症反応・修復機構にアプローチできる可能性があるということです。

(2) 神経・鎮痛メカニズム

  • EA によって、末梢・中枢の鎮痛系が活性化されるという報告があります。具体的には、μ/δオピオイド受容体、セロトニン (5-HT) 受容体、カンナビノイド受容体(CB1/CB2)などが関与する可能性があります。 (PubMed)
  • また、下行性疼痛抑制路(脳から脊髄へ下る痛みの入力を抑制する回路)や神経伝達物質(β-エンドルフィン、エンケファリン、ノルアドレナリンなど)の放出を促すことで、痛みの受容・伝達・処理が変化するという動きも報告されています。 (PubMed)
  • これらを踏まえると、EA の鍼灸師による実践では、痛みの「感じやすさ」「動かしたときの痛み」「安静時痛」を段階別に観察・評価しつつ、電気刺激による神経系への影響をイメージすることが重要です。

(3) 血流・生物力学・神経筋機構

  • EA によって、関節周囲の血流改善、軟部組織(筋・腱・靱帯)の緊張緩和、可動域(ROM:Range of Motion)の改善が観察されているという報告があります。 (Dove Medical Press)
  • また、筋力・動的安定性など、神経筋制御系(関節を支える筋・神経・感覚器)の働きを改善することで、「膝にかかる負荷・軟骨にかかるストレス」が軽減される可能性も論じられています。 (PMC)
  • そのため、鍼灸師としては「膝だけ刺す・調整する」だけでなく、下肢筋(大腿四頭筋・ハムストリング・腓腹筋など)・骨盤・脚部アライメントや動作(立ち上がり・歩行・階段)を含めた視野を持つことで、EA の効果を最大化できる可能性があります。

3.臨床的有効性・適用のヒント

次に、「実際にどれくらい効果が期待できるのか」「鍼灸師としてどう使えるか」という視点で整理します。レビュー論文の内容と、関連するメタ解析・臨床研究も併せて紹介します。

(1) 臨床エビデンスのサマリー

  • このレビュー論文では、EA が痛み軽減・機能改善・可動域改善という面で有望だとされています。 (PMC)
  • ただし、研究の多くが「短期フォロー(数週間〜数か月)」「研究規模が小さい」「刺激パラメータがバラバラ」など、限界も明記されています。 (PubMed)
  • 例えば、最新のメタ解析(Electroacupuncture superiority in knee osteoarthritis: a meta‑analysis of four acupuncture techniques/Chen Y ら/2025年)によると、EA の有効率は約91.5%とされ、標準鍼(手鍼)など他の鍼治療を上回る傾向が見られたという報告があります。 (Frontiers)
  • ただし、このメタ解析でも「年齢が高い」「BMIが高い」患者では効果が少し低く出る傾向があるとされており、個別の患者背景を加味する必要があるとされています。 (オープンアクセスジャーナルディレクトリ)

(2) 鍼灸師としての実践ヒント

鍼灸師の立場から、臨床で活かせるヒントを整理します。

・適用対象の選定

– 患者さんの課題が「膝の痛み・動かしにくさ・階段・立ち上がりがつらい」など典型的な症状である場合、EA の対象として適切です。
– また、筋力低下・筋緊張・歩行動作の乱れなどが併存しているとより効果が出やすい可能性があります。
– 逆に「高度変形・骨性の棘変化が著しい」「外科的適用が近い」「長時間の変化・慢性期すぎて可逆性が乏しい」などでは、EA 単独では限界があるかもしれません。レビューでも「早期~中期段階での適用が望ましい」とする動物研究(滑膜炎・初期変性モデル)があります。 (rcastoragev2.blob.core.windows.net)
– 患者背景(年齢・BMI・筋力・関節変形度)をカウンセリング段階で確認し、「期待値を整える」ことが重要です。

・治療計画・パラメータ設定

– 鍼+電気刺激の組み合わせが肝となります。レビュー論文では「どの経穴を使い、どんな電気設定にするか」が様々とされており、現場で検討すべきです。
– 最近のパラメータ研究(Research on electroacupuncture parameters for knee osteoarthritis based on data mining/Cai F ら/2022年)では、臨床でよく用いられる設定として以下が示されています:針サイズ0.30 mm×40 mm、波形は連続波、低周波(主に2 Hz)、1回30分、施術頻度1回/日。経穴では「ST34(梁丘)」「ST35(犢鼻)」「EX-LE4(内膝眼)」「SP10(血海)」「GB34(陽陵泉)」「SP9(陰陵泉)」などが使われることが多い。 (BioMed Central)
– 鍼灸師としては、①刺入深度・得気感/②電流強度・周波数・波形/③施術時間・回数・頻度/④使用経穴(局所+関連筋・神経支配)を明確にして計画を立てることが望まれます。
– さらに、「他の治療(運動療法・筋力トレーニング・体重管理)との併用」が効果を高める可能性が指摘されています。EA を単独で行うのではなく、総合的なプログラムの一部として位置付けると良いでしょう。

・説明・同意・フォローアップ

– 患者さんには、次のように説明すると安心してもらいやすいです:
 「膝の痛みや動かしにくさに対して、鍼+電気刺激を用いて“神経・筋・血流・炎症”の働きを整えていくアプローチです」
 「医薬品や運動療法に加えて取り入れることで、痛み軽減・動きやすさ改善の可能性があります」
 「ただし、現時点では長期的な大規模データが十分ではなく、個人差があります」
– フォローアップ時には「痛みスケール(VASなど)」「膝の可動域」「筋力(大腿四頭筋など)」「日常動作(立ち上がり・歩行・階段)」「患者さんの主観評価(動きやすさ・生活の質)」を定期的にチェックし、治療計画を調整していきましょう。
– また、記録を残すことで自分の治療効果を振り返り、さらなる改善や発見につなげることもおすすめです。


4.鍼灸師として気をつけたい“限界・注意点”

鍼灸師として、EA を使ううえで知っておくべき“限界”や“注意すべき点”もあります。論文でも明記されていますので、臨床での活用時には必ず考慮したいところです。

  • 多くの臨床研究で「プラセボ(偽鍼/偽刺激)との差」が小さい、または効果サイズが中程度という報告があります。つまり、鍼+電気刺激が“有効である”とはされるものの、そのうちの“どれくらいが鍼・電気鍼そのものの効果か”“どれくらいが治療者・患者・環境・期待の効果か”という点では慎重さが必要です。 (PMC)
  • 治療プロトコル(どの経穴をどの頻度・何回刺すか、電気刺激の設定はどうか)にばらつきが非常に大きいため、「これが最善のルーチンだ」という確立された標準がまだ確立されていません。 (PubMed)
  • 長期的な持続効果(たとえば1年・2年先まで痛み・機能改善が持続するか)に関するデータが少ないため、「改善初期に良くても維持できるか」を患者さんとともに見ていく必要があります。 (PMC)
  • 患者背景によって効果が変わる可能性があります。特に高齢・高BMI・重度変形などでは効果がやや低く出る傾向があります。メタ解析でも年齢・BMIが有効率を下げ、痛みスコアを高める傾向が報告されています。 (オープンアクセスジャーナルディレクトリ)
  • 電気刺激器を用いるため、患者さんの既往(例:ペースメーカー・金属インプラント・出血傾向・皮膚障害など)/刺入部位/電流強度/波形など、安全管理には十分な配慮が必要です。

これらの点を踏まえ、「EA は万能の治療法ではなく、“有効な補助的治療”」として位置づけることが、鍼灸師としての誠実な対応につながると思います。


6.まとめ

少し長くなりましたがまとめてみましょう。

  • 膝関節症という「臨床でよく出会う疾患」に対して、EA(鍼+電気鍼)は“痛み・動きにくさ・機能低下”に対して有望な補助手段であるというエビデンスが整理されています。
  • メカニズム的には、炎症制御・構造代謝(軟骨)・神経・筋・血流・動作という多面的な観点から作用することが示されており、鍼灸師が「鍼+手技+電気刺激+運動的補助」という複合的アプローチをとる価値が十分にあります。
  • 臨床で活用する際には、患者選定・治療パラメータ設計・補助療法併用・フォローアップ・記録という流れを「設計」することが大切です。
  • ただし、現状では「どの設定が最も良いか」「どの患者に特に効くか」「長期持続するか」という点にまだ不明な部分があります。鍼灸師としては「過大な期待」は避けつつ、丁寧に説明・実践・記録を行う姿勢が望ましいです。
  • また、EA を単独で万能とするのではなく、「運動療法・筋力訓練・体重管理・生活動作改善」などと組み合わせてこそ、効果を最大化できるという視点を持つと良いでしょう。
  • 最後に、鍼灸師として「治療効果を検証し続けること」「記録を取ること」「自らの臨床経験を深めること」が、今後の鍼灸分野の発展にもつながります。

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