こんにちは!
陣内です。
今回も論文をご紹介していきたいと思います。
いつもながら私は研究者でも教育者でもないので生温かく見守っていただければ幸いです。
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今回は「Effectiveness of electroacupuncture and acupuncture in alleviating cold hypersensitivity in the hands and feet」(Kwon et al., 2024)をかみ砕いてご紹介していきたいと思います。
冷え性は多いですから興味深いと思います。
元の論文リンクはこちら

はじめに

「冷え性」は、特に女性に多く見られる症状で、日常生活の質(QOL)を大きく下げてしまいます。今回紹介するのは、韓国の大学病院で行われた**「電気鍼(Electroacupuncture, EA)」と「普通鍼(Acupuncture, AC)」の効果を比較した臨床試験**です。対象は「手足の冷えが強い女性」72名。研究チームは、これらの治療がどれほど冷えを改善し、生活の質を高めるかを詳細に調べました。
研究の概要

研究は3つのグループに分けて行われました。
- 電気鍼グループ(EA)
- 普通鍼グループ(AC)
- 無治療の対照グループ(Control)
治療期間中、電気鍼と普通鍼を受けたグループには、手や足の冷感の自覚症状(VASスコア)、皮膚温度、**生活の質(WHOQOL-BREF)**の変化を記録しました。
治療前(T0)、治療直後(T1)、そしてフォローアップ(T2)で測定が行われ、経時的な変化を比較。統計的には「反復測定ANOVA」を使い、群間と時間の交互作用を確認しました。
結果:電気鍼の持続効果が際立つ

結果として、電気鍼グループと普通鍼グループのどちらも、対照群より有意に冷えの症状が改善しました。
とくに注目すべきは、電気鍼グループでは効果が治療後も持続していた点です。
- 電気鍼グループ(EA)
- 手足の冷感スコア(VAS)が有意に低下。
- 足部の温度が上昇傾向を示し、フォローアップ時にも改善が続いた。
- WHOQOL-BREF(生活の質)でも複数の領域で改善。
- 自律神経の安定化が示唆された。
- 普通鍼グループ(AC)
- 治療直後には改善がみられたが、フォローアップではやや効果が減少。
- 対照群(無治療)
- わずかに改善を示したが、これは「自然経過や心理的要因」による可能性が高いと研究者は述べています。
どんなツボを使ったのか?
論文では、具体的な経穴の位置が記されています。代表的なものを挙げると――
- 合谷(LI4):手の温度調整や自律神経への作用を狙う。
- 太衝(LR3):肝気の巡りを促し、全身の気血循環を改善。
- 足三里(ST36):胃腸の働きを助け、末梢循環を整える。
- 三陰交(SP6):女性の冷えや月経不順に頻用される要穴。
- 復溜(KI7):腎陽を補い、水分代謝と体温調節に関与。
これらのツボを左右に取穴し、EA群では特定のツボ間に微弱な電気刺激を加えました。刺激は1〜2Hzの低周波で、心地よい程度の強さに調整されています。
研究者の考察

この研究で注目されるのは、電気鍼が「自律神経系のバランスを整える」可能性を示した点です。冷え性の多くは、交感神経が優位になりすぎて末梢の血流が悪くなることで生じます。
電気刺激によって副交感神経が活性化され、血管拡張や末梢血流の改善につながると考えられます。
また、従来の鍼だけでも効果はありましたが、電気刺激を組み合わせることで、より安定した・持続的な効果が得られることが確認されました。
臨床現場へのヒント
今回の結果は、臨床で冷え性に悩む患者さんを診る鍼灸師にとって、大きな示唆を与えます。
- 電気鍼は「冷え性治療の選択肢」として有効
単なる温めではなく、「自律神経の調整」を目的に使える。 - 効果の持続性を高めたい場合は電気鍼が有利
特に手足の冷感が強い患者では、EAを検討する価値がある。 - 経穴の組み合わせに理論的裏づけを
気血の流れを整えるツボと、下肢の温度を上げるツボをバランスよく選ぶとよい。 - 客観的な評価を取り入れる
温度計やVASスケールを用いて効果を数値化すれば、患者への説明にも信頼性が増す。
今後の課題

著者らは、「対象者が女性のみであったこと」「短期的な観察期間」である点を限界として挙げています。
また、電気刺激のパラメータ(周波数・強度)を最適化する研究も今後の課題です。
それでも、この研究は非薬物療法としての鍼灸の有効性を科学的に裏づけた貴重な成果といえます。
まとめ
- 手足の冷え(Cold Hypersensitivity in Hands and Feet)は生活の質を大きく下げる。
- 電気鍼・普通鍼ともに改善効果があり、特に電気鍼は効果が長続き。
- その作用は自律神経のバランス調整と血流改善による可能性が高い。
- 鍼灸臨床で冷え性に対応する際の有力な根拠として活用できる。
おわりに
冷え性の治療は、患者の体質や生活習慣によって千差万別です。今回の研究のように科学的なデータが蓄積されていくことで、鍼灸の可能性はさらに広がっていくでしょう。
電気鍼という少し「現代的な鍼治療」は、伝統と科学の橋渡しになる存在かもしれません。


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