軽度から中等度のドライアイに対する電気鍼療法を読んで

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こんにちは!

陣内です。

今回も論文をご紹介していきたいと思います。

いつもながら私は研究者でも教育者でもないので生温かく見守っていただければ幸いです。

ブログの更新情報などはInstagramXの私のアカウントでしていますのでフォローしてもらえるとめちゃくちゃ喜びます(笑)


BMJ Open誌(2023年)に掲載された論文「Electroacupuncture for mild to moderate dry eye: a randomised controlled trial」
をもとに、鍼灸師として私見を交えながら紹介していきたいと思います。

ただ妄信的にみるのではなく参考程度にみていただければ幸いです。


目次

軽度〜中等度のドライアイに「電気鍼」は有効?

―BMJ Open誌に掲載されたランダム化比較試験から―

最近、「目の乾き」や「かすみ目」を訴える患者さんが増えていますよね。
パソコンやスマホの使用時間が長くなり、涙の質が落ちたり、まばたきの回数が減ったりすることでドライアイを引き起こすケースが多く見られます。

そんな中で、鍼灸によるドライアイ改善が注目されています。
今回紹介する論文は、電気鍼(electroacupuncture)が軽度〜中等度のドライアイにどれくらい効果があるのかを科学的に検証したものです。

ドライアイや眼精疲労は主訴で来られるのではなく肩こりなどの随伴症状で来られることが多い印象です。


研究の概要

この研究は、中国・北京中医薬大学附属病院で行われたランダム化比較試験(RCT)です。
対象は、軽度〜中等度のドライアイ患者128名(男女ほぼ同数、平均年齢45歳前後)。

参加者は2つのグループに分けられました。

  1. 電気鍼治療群(EA群)
    → 鍼通電治療を週3回、計8週間実施
  2. 対照群(目薬点眼群)
    → 市販の人工涙液を点眼(1日3回)

このように、「電気鍼」と「一般的な治療」である目薬とを比較し、どちらがドライアイに効果的かを調べたわけです。


使用された主な経穴

鍼灸師として気になるのは、どんなツボを使ったのかですよね。
論文によると、以下のような目の周囲と全身のツボが選ばれました。

  • 攅竹(さんちく)
  • 魚腰(ぎょよう)
  • 太陽(たいよう)
  • 四白(しはく)
  • 睛明(せいめい)
  • 合谷(ごうこく)
  • 足三里(あしさんり)
  • 三陰交(さんいんこう)

これらは、眼周囲の血流促進自律神経の調整に関与する経穴としてよく知られています。
特に「攅竹」「四白」「睛明」は、古くから“目の気血をめぐらせるツボとして使用されてきました。


鍼通電の方法

鍼はステンレス製の使い捨て鍼を使用し、刺激部位の一部に電気通電(2Hz)を行いました。
1回の施術時間は約25分。
患者は週3回通院し、合計8週間(24回)の治療を受けました。

電気刺激の設定は「心地よく感じる程度」とし、過度な刺激は避けています。
このあたりは、実際の臨床でも「心地よい響き」を重視する考え方と一致していますね。


評価項目(どんな効果を調べたのか)

研究では、次のような客観的・主観的な評価を行いました。

  1. 涙液分泌量(Schirmer試験)
  2. 角膜・結膜の染色スコア(損傷の程度)
  3. 涙液膜破壊時間(BUT)
  4. ドライアイ自覚症状スコア(OSDI)

これらを治療前・治療後・フォローアップ時に比較しました。


結果:電気鍼が涙の量と自覚症状を改善!

結果は非常に興味深いものでした。

  • EA群では涙液分泌量が有意に増加
  • 角膜の乾燥スコアも改善
  • OSDIスコア(自覚症状)も有意に改善

さらに驚くべきことに、治療終了後4週間のフォローアップでも効果が持続していたのです。
一方、人工涙液群では治療中は一時的に改善が見られたものの、フォローアップ時には元に戻る傾向がありました。

つまり、電気鍼は単なる一時的な潤いではなく、涙の分泌機能そのものを回復させている可能性があるというわけです。


なぜ電気鍼でドライアイが改善するのか?

この研究では明確なメカニズムまでは示されていませんが、既存の知見から次のような可能性が考えられます。

  1. 眼周囲の血流促進
    → 鍼刺激により局所の血流が改善し、涙腺や結膜への栄養供給が高まる。
  2. 自律神経のバランス調整
    → 涙の分泌は副交感神経が関与しており、電気鍼が自律神経機能を整えることで分泌を促進する。
  3. 炎症の軽減
    → 鍼刺激が抗炎症性サイトカインを誘導し、ドライアイに伴う微小炎症を抑制する。

これらの作用が組み合わさることで、涙の質・量の両面で改善がみられたと考えられます。


副作用と安全性

EA群では、一部の患者に軽度の皮下出血や刺激感が見られたものの、
重篤な副作用は一切なし
全体的に「安全で忍容性の高い治療」であると報告されています。


臨床へのヒント

この研究は、私たち鍼灸師にとって次のようなヒントを与えてくれます。

  • ドライアイの患者は、目の疲れ・肩こり・自律神経の乱れを併発していることが多い。
  • 眼周囲だけでなく、全身の気血バランスを整える経穴(合谷・足三里・三陰交など)を組み合わせることが重要。
  • 電気刺激は2Hz程度の低頻度が有効。
  • 継続的な治療(週3回×8週間)で効果が安定。

まとめ

このBMJ Openの研究は、
「軽度〜中等度のドライアイに対して電気鍼が有効で、安全性も高い」
という科学的な根拠を示した貴重な臨床試験です。

ドライアイは現代人にとって身近なトラブルですが、
薬や点眼だけでは根本的な改善が難しいケースも多くあります。

鍼灸は、「涙を作り出す力」や「自律神経の働き」を整えるアプローチができる点で、
まさに自然治癒力を引き出す治療法として大きな可能性を秘めています。


今後、ドライアイに悩む方へのケアに「電気鍼」を自信をもって提案できる時代が来ています。
ぜひ臨床の中で、目の健康をサポートする新しい一手として取り入れてみてください。


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