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こんにちは!
陣内です。
今回も論文をご紹介していきたいと思います。
いつもながら私は研究者でも教育者でもないので生温かく見守っていただければ幸いです。
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今回は「Acupuncture for chronic low back pain: A randomized controlled trial」(PMCID: PMC12379998)
をもとに書いていこうと思います。
臨床上腰痛はよく診ますよね!
患者さんのために必要な知識だと思いますのでよろしくお願いいたします。
慢性腰痛に対する鍼治療の科学的根拠

―新のランダム化比較試験から見えてきたこと―
腰痛は、鍼灸院で最も多い訴えのひとつではないでしょうか。
特に「慢性腰痛(3ヶ月以上続く腰痛)」は、痛みだけでなく、睡眠障害や気分の落ち込み、日常動作の制限など、生活の質を大きく下げてしまう問題です。
今回紹介する論文は、そんな慢性腰痛に対して鍼が本当に効果があるのかを検証した最新のランダム化比較試験(RCT)です。
発表されたのは2024年、欧米の主要な医学雑誌(PMC掲載)で、信頼性の高い研究といえます。
研究の概要

この研究は、アメリカと中国の共同チームによって実施されました。
対象は、3ヶ月以上腰痛が続く成人270名。
画像診断で特に大きな構造的異常(椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄など)がない、いわゆる非特異的腰痛の方々です。
参加者は次の3つのグループに無作為に分けられました。
- 真の鍼治療群(Acupuncture group)
- 偽鍼(シャム鍼)群(Sham group)
- 通常治療群(Control group)
(ストレッチ指導や鎮痛薬の使用など)
治療は週2回、8週間(計16回)行われました。
評価は治療前後、および治療後3ヶ月・6ヶ月のフォローアップで行われています。
使われたツボと施術方法

鍼灸師として最も気になる部分ですよね。
この研究で用いられた主な経穴は以下の通りです。
- 腎兪(じんゆ)
- 大腸兪(だいちょうゆ)
- 腰眼(ようがん)
- 委中(いちゅう)
- 足三里(あしさんり)
- 志室(ししつ)
いずれも、腰背部の血流を促進し、下肢の筋緊張を緩める古典的な経穴です。
刺激は中程度の得気を伴う程度とし、15〜20分間置鍼しました。
偽鍼群では、皮膚を貫かない特殊な鍼を用い、同じ場所に当てるだけの刺激を与えました。
つまり、プラセボ効果をしっかり排除した設計です。
🔍評価項目(どんな効果を見たのか)

研究では次のような指標で効果を判定しました。
- 痛みの強さ(VAS:Visual Analogue Scale)
- 機能障害の程度(ODI:Oswestry Disability Index)
- QOL(生活の質)
- 鎮痛薬の使用量
これらを治療前後、3ヶ月後、6ヶ月後に測定しました。
結果:鍼治療は明確な効果を示した!

結果は次のようなものでした。
- 真の鍼群では痛みスコア(VAS)が平均で47%減少
- 偽鍼群では25%の減少
- 通常治療群では15%の減少
統計的にも、真の鍼群の改善は他の2群に比べて有意に高い結果となりました。
また、機能障害(ODIスコア)も顕著に改善。
さらに、3ヶ月後・6ヶ月後のフォローアップでも効果が持続していたのです。
つまり、鍼の効果は一時的な痛みの緩和にとどまらず、慢性的な腰痛改善にも長期的に有効であることが確認されました。
鍼が効くメカニズムとは?

この研究では、生理学的なメカニズムも一部検討されています。
以下のような要因が関与していると考えられます。
- 内因性オピオイドの分泌
鍼刺激によってエンドルフィンやエンケファリンなど、体内の鎮痛物質が放出される。 - 痛み伝達経路の抑制
鍼刺激が脊髄レベルでの疼痛伝達をブロックする(ゲートコントロール理論)。 - 局所血流の改善と筋緊張の緩和
腰背部の血流が改善し、筋膜や靱帯の柔軟性が回復。 - 心理的効果(リラクゼーション)
鍼による心身の安定が、痛みの知覚を軽減。
こうした多層的な作用が、慢性的な腰痛の改善につながっていると推測されています。
安全性について
安全性も重要なポイントです。
この研究では、軽微な皮下出血や一時的なだるさが一部で報告されましたが、重篤な副作用はゼロ。
鍼治療の安全性が改めて確認されました。
ただここでの安全性は鍼治療の完全な安全性を担保されたのではなく鍼灸師として常に安全性を考えるのは重要だと思います。
臨床へのヒント

鍼灸師として、この研究から得られる実践的なヒントは多くあります。
- 腰痛は「局所治療+全身調整」がポイント。
腰だけでなく、足三里や志室などの“気血を補うツボ”を併用することで、効果が安定する。 - 得気の質を重視。
強すぎず、患者が「心地よい響き」と感じる程度が理想。 - 継続治療の重要性。
8週間(16回)という一定期間の継続で、痛みが慢性化した身体に変化を起こせる。 - フォローアップを意識した施術計画。
痛みが軽減した後も、メンテナンスとして月1〜2回の治療を提案することで、再発を防げる。
まとめ
この研究の結果は明確に鍼の効果を上げています。
「鍼治療は慢性腰痛に対して有効であり、効果は長期的に持続する」
さらに、プラセボ(偽鍼)や薬物治療よりも改善率が高かったことは、
鍼が単なる「気分的な効果」ではなく、身体の神経・血流・筋機能に実際の変化をもたらしていることを裏づけています。
おわりに
慢性腰痛の患者さんの多くは、「病院では異常がない」と言われつつも、
「ずっと痛い」「薬を飲んでも変わらない」と悩んでいます。
この研究は、そんな方々に対して鍼灸師が胸を張って伝えられる結果を表してくれています。
そして私たち鍼灸師は、その“手の技術”で患者さんの自然治癒力を引き出す支えとなれる資格です。
研究の結果を踏まえながら、安心・信頼のある施術を届けていきたいですね。


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